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制裁 経済制裁など、多用される制裁の効果を問う

(AFP)

制裁といえば、3回目の核実験をした北朝鮮に対し国連安全保障理事会(安保理)が3月7日、制裁決議を採択している。冷戦終結以来、安保理は外交政策の一つとして制裁を多用してきた。一方スイスは、一国の制裁として「スマート制裁」という、ターゲットを絞った方法を使う。だが、現在までこの制裁の効果も明らかではなかった。近くその研究結果が発表される。

 国際的制裁ないしは経済封鎖は、1945年の国連憲章に明記されているにもかかわらず、多用され始めたのは冷戦終結以降だ。イラク、イラン、リビア、ルアンダなどに対する制裁がその例に挙げられる。

 スイスの経済制裁などを担当する連邦経済省経済管轄局(SECO)は、制裁を以下のように定義している。「何らかの政治的効果を生み出すために使われる(しばしば経済的な)制限を相手に課す手段」

 また、同局の広報担当官マリ・アヴェットさんは「安保理や一国は、制裁を行う相手国のある特定な対象をターゲットにする。それはテロや人権侵害であったり、民主主義の基本を犯す、ないしはルール違反であったりすることに対してだ」と付け加える。

 しかし、「どの経済封鎖が目的を達成する上で一番効果があったか、ないしはどの制裁がより優れているかを判断することはできない」とアヴェットさんは言う。それにもかかわらず、ある制裁はメディアに大きく取り上げられ、あるものはそうではないといった「差」も厳然としてある。

スイスの制裁

 過去10年でスイスは20件の国際的な制裁を、ソマリア、北朝鮮、スーダンなどに対して行ってきた。

 「このうち6件は欧州連合(EU)の決定に従い、14件は国連の採決に従った。イラン、リビア、ギニアビサウに関してはEUと国連両方の決定が組み合わされたものだ」とアヴェットさん。

 今年も、スイスは独裁者など個人に対する一連の制裁を新しく更新したところだ。それは、オサマ・ビンラディン、アルカイダ・タリバン、ジンバブエ、シリア、北朝鮮などに関するものだった。

 しかし、いくつかの制裁は人道的に負の効果を引き起こし、無差別に経済的ダメージを与えるといった反省も近年行われている。スイスはこうした反省を行う数カ国の一つとして、制裁のターゲットを絞り、より効果的な方法を探り続けている。

 こうした中、1998年から1999年にかけスイスは、「インターラーケン・プロセス(Interlaken Process)」と呼ばれる、一つの対象に的を絞った制裁についての専門家会議を開催した。ドイツとスウェーデンも同じような会議を行い、制裁を旅行や空輸、軍事品の輸出禁止などに的を絞ったり、さらに制裁のモニタリング実施などについて検討している。

 インターラーケン・プロセスの結果は2001年にマニュアルの形で出版されている。

米国によるキューバ経済制裁

国連による制裁以外にも、一国による制裁や経済封鎖もある。一番よく知られているのは、米国によるキューバに対する経済制裁だ。これは1962年以来行われている。

キューバによれば、カストロ政権下のキューバが国内のアメリカ資本企業を国有化したためにその報復としてアメリカが一方的に経済封鎖を始めたという。これはキューバにとって主要な経済問題となり、1080億ドル(約1020億円)の損害をもたらした。

キューバは、米国が冷戦以来行っている経済封鎖には、続行する法的な正当性も道徳的正当性もないとしている。しかしワシントンは、この対キューバ政策は民主的・経済的な改革と人権を推進する上で重要だと主張している。

バラク・オバマ米大統領は、昨年対キューバ政策を変える準備があると述べた。だが、その条件として基本的な人権擁護と政治犯の釈放をキューバ側に求めている。

さらに、オバマ米大統領は米国人のキューバ訪問やキューバ系以外の米国人が、キューバ人に対し一定額まで送金すること等を許可した。

しかし、50年以上続く経済封鎖は維持されている。

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スマート制裁

 ジュネーブの高等研究所で国際政治学を教えるトマス・ビールシュテッカー教授は、スイスが行う「スマート制裁(Smart sactions)」は、多くの国からの支持が増え、マルチ外交のキーポイントになりつつあると話す。

 スマート制裁とは、個人資産の凍結や軍事品の輸出禁止といった制裁にのみ対象を絞ることで実効性を高め、同時に一般市民に対する負の影響を最小限に抑えることを目的とする。

 ビールシュテッカー教授は長年、国連やスイス政府、ドイツ、スウェーデンと一緒に「的を絞った制裁」について議論を進め、2012年に論文を発表している。その中で、スマート制裁はテロや武装した内紛を封じ込め、和平プロセスを推進できる。また人権を擁護し、大型破壊兵器の拡散を食い止めることもできると述べている。

 

 しかし、一方でビールシュテッカー教授は、このスマート制裁の経済的・人道的な意味での本当の効果はよく分からないと書いている。連邦経済省経済管轄局でさえ、制裁の効果を測るツールがないと嘆いている。

国連の対象を絞った制裁の効果

 効果の不確かさに挑戦するため、ビールシュテッカー教授が始めたプロジェクトの一つに2009年から始まった、「対象を絞った国連の制裁効果」に関する研究がある。スイス、スウェーデン、イギリスの各政府から資金援助を受けたものだ。

 これは世界中の政策決定者や学者、約40人から成る15のチームが、「対象を絞った国連の制裁」の21件を研究したものだ。21件とは、1991年以降のアルカイダ・タリバン、アンゴラ、コートジボワール、北朝鮮、コンゴ共和国、旧ユーゴスラビア、ハイチ、イラン、リベリアなどへの制裁だ。

 その結果、学生や政策決定者に対するデーターベース、「対象を絞った制裁」を今後行うための実用ガイドがすでに出来上がった。現在は最終的な研究レポートを作成中で、さらに、アップルの機能を使った多言語でのガイドも5月末に用意される。

 ビールシュテッカー教授はこう言う。「ある程度の数の専門家によるパネル会議でトレーニングを行うことも企画されている。今後の最大の挑戦は、情報を絶えず更新していくことだ。なぜなら制裁とは絶えず変化していくものだからだ」


(英語からの翻訳・編集 里信邦子), swissinfo.ch


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