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火薬庫、マリ北部のサヘル地帯 「マリの政治モデルは検証が必要」

マリの首都バマコ(Bamako)から北に約620㎞のセヴァレ(Sevare)をパトロールする仏軍兵士

(Keystone)

フランスのマリへの軍事介入は各方面から歓迎されている。だが、問題も多い。この地域をよく知るジル・ヤビさんは、偏った見方をすると危機がさらに高まる可能性があると警鐘を鳴らす。

フランス軍のマリ派遣により、この地域は新しい世界の火薬庫として注目を浴びることになった。NGO国際危機グループ(International Crisis Group)の西アフリカ・ディレクターを務めるヤビさんは、ベナン出身。この紛争をさまざまな視野からみる。

swissinfo.ch : フランスによる マリ介入はリビア内戦の延長に過ぎないという声が多く上がっています。この意見をどう思われますか。

ヤビ : リビアのカダフィ政権崩壊とマリ北部の不安定化は、確かに無関係ではない。リビア内戦で使用された武器やそこで戦った兵士の一部がマリ北部に流れ込み、マリ政府に対する反乱に一役買っているからだ。

しかし一方で、この地域ではすでに十数年前から国際テロ組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」が活動していた。つまり、マリ北部が不安定になった原因はリビアの内戦だけではないということだ。

マリへの軍事介入はまた、地域や国際政治の観点から見てもリビア介入とは異なっている。リビアの場合は、北大西洋条約機構(NATO)の委託を受けた上での介入だったが、アフリカ諸国の支持はなかった。一方、今回の介入は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の支持を得ている。

トゥアレグ族 マリの砂漠を巡る「青の民」

遊牧民族のトゥアレグ族は北アフリカ西部にあるマリ、ニジェール、ブルキナファソ、アルジェリア、リビアで暮らしている。過去50年間、自治権の強化を訴え続けてきた。彼らの苦境は、マリ北部で現在繰り広げられる紛争と密接に関わっている。 ...

swissinfo.ch :いわゆる「テロリスト」側の兵力はどの程度なのですか。

ヤビ : 介入当初、反政府側の武装水準の高さとイスラム兵の気迫に驚いたフランス部隊もあった。イスラム過激派は重装備で、かなりの数のピックアップトラックを所有していた。しかし、空爆に優れたフランスはすぐさま反撃できた。

それでも事態は複雑化しそうだ。イスラム過激派が足を踏み入れにくい奥地に撤退する可能性は大きい。マリ北部の砂漠や険しい山奥から彼らを追い出そうとすれば、大きなリスクを覚悟しなければならない。

swissinfo.ch : マリ北部でテロ活動を繰り返しているイスラム過激派の本当の目的は何なのでしょう。

ヤビ : 彼らの論理は、だいたいが日和見的だ。マリ北部の住民の多くは、武装グループでの活動を唯一の収入源としている。そのグループの指導者は、イデオロギーや聖戦といった次元と私利私欲をごちゃ混ぜにしている。また、AQMIは犯罪組織のネットワークと直接つながっているし、地方自治体や地域経済と密接につながっているグループもある。そのため彼らを孤立させるのは非常に難しい。

グローバル化し、政治と無関係になったテロリズム

マリでフランス軍を相手に戦っているイスラム教過激派は、「実は芝居がかっているだけで、本当は『テロリズムの政治経済学』を隠すついたてとして使われているにすぎない」と言うのは、ジュネーブ国際問題及び開発問題高等研究大学(IHEID)の客員教授であり、国防政策ジュネーブセンター(GSCP)の北アフリカ・近東地域プログラムのディレクターでもあるモハマッド・モハメドウ氏だ。

モーリタニアで大臣を務めた経験も持つ同氏は、グローバル化され、政治と無関係になったテロリズムという新しい形に気付いた。これには恥ずべき活動を覆い隠すため、宗教的な色合いがかけられているという。大勢の犠牲者が出たアルジェリアのガス田の人質事件で明らかになったように、「国境を超えて活動するこのような新しいグループの特徴は、いくつもの前線で同時に行動を起こすこと。こうして実際の力量を超える強さを生み出すようになった」

このような新しい状況は、麻薬、武器、燃料の大規模な取引、そして人質事件に表れているとモハメドウ氏は言う。これはサヘル地域のみならず、ニジェール・デルタやソマリア沿岸部、メキシコ北部でも見られる。

モハメドウ氏また、マリ北部の不安定化を招いたのはカダフィ政権の崩壊だと見なしている。それにほかの要素が絡まった。「戦闘慣れしたトゥアレグ族の帰還、故カダフィ大佐が2011年2月の終わりに開放した倉庫から武器が盗まれ、出回ったこと。また、武装過激集団にとってマリの内紛は、地域により簡単に入り込む絶好のチャンスとなった」

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swissinfo.ch : フランス軍の介入だけで、この新しい危機地帯に安全をもたらすことはできるのでしょうか。

ヤビ : 本当に危険なテログループは絶対に撲滅しなければならない。しかし、長期的に見れば、今回の介入でマリの経済や団結がさらにもろくなる恐れがある。住民の貧困が進めば、その分暴力もはびこる。

マリの危機は極めて複雑であり、フランスの軍事介入によって紛争の他の要因すべてがぼかされてしまいがちだ。

swissinfo.ch : この危機の解決は、トゥアレグ族がこの先どうなるかということにかかっているのでしょうか。

ヤビ : 歴史的に、マリ政府は常に北部の管理に手を焼いてきたし、その住民の要望もなかなか聞き入れてこなかった。トゥアレグ族の問題は国の独立時に発生したもので、いつか対処しなければならない問題だ。国家、あるいはこれらの地域の統治制度を建て直す際には、トゥアレグ族をはじめマリ北部の他の共同社会も必ず考慮に入れて計画を立てるべきだ。

swissinfo.ch : 今回の危機でマリ政府が担う責任は何ですか。

ヤビ : 国家の犯罪行為もマリを不安定にした重要な要素の一つだ。長い間、「民主化プロセス」イコール「国を強化すること」だと思われてきた。だが、この二つは全く質が異なるものだ。

マリの政治制度については、より深い反省が求められる。そして何よりも、どんなもめごとにも巻き込まれない効率的な軍隊並びに政治・軍事制度を再構築しなくてはならない。

swissinfo.ch : この地域の安定化に向けてアルジェリアが果たすべき役割は何でしょうか。

ヤビ : 地理的な位置から見て、アルジェリアは中心的な役割を担わなければならない。また、AGMIの指導部にもアルジェリア人が多い。マリ北部の中長期的な安定を左右するのは、アルジェリアおよびアルジェリア・マリ間の関係だ。ただし、国の思惑とは逆にフランスの介入を支持せざるを得なかったことから、この地域の中心的仲介者としてのアルジェリアの立場は悪くなったと言える。


(仏・ 独語からの翻訳・編集、里信邦子・小山千早), swissinfo.ch

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