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スイスの入国制限 陸と空の国境は今

オーバーリート(スイス)とマイニンゲン(オーストリア)の間で閉鎖された国境
オーバーリート(スイス)とマイニンゲン(オーストリア)の間で閉鎖された国境 Keystone / Gian Ehrenzeller

スイスでは新型コロナウイルス対策として大幅な入国制限が行われている。今、誰がスイスに入国でき誰ができないのか。来週スイスへのフライトを予定している人はどうすればいいのか。スイス国境の現状についてまとめた。

 先週既にイタリアからの入国制限を打ち出したスイス政府は、今週明けには同じく国境を接するオーストリア、フランス、ドイツにも制限を広げると発表した。

これにより、スイスに入国できるのはスイス国民とスイスの滞在許可証所持者、職業上の理由による渡航者(労働許可証所持者など)や、スイスを通過する旅行者に制限されることになった。スイス国民とカップル関係にある外国人も滞在許可証が無ければ入国できない。

規制は水曜になってさらに強化され、空路でも上記4カ国及びスペイン、そしてシェンゲン協定域外からの旅行者は原則入国拒否対象となった。

※この記事は、19日に英語のサイトで配信された記事です。

規制によって何が変わったか

19日の連邦税関事務局の発表によると、陸路の入国者数は1カ月前に比べおよそ7割減と著しく減少した。減少幅がひときわ大きいのはイタリアとの国境にあるティチーノ州だ。同州は他州に先駆けて国境検査や一部検問所の閉鎖に踏み切った。

かといって、検問所が閑散としているかといえばそうではない。むしろ、少なくとも規制発表直後は多くの検問所で逆の現象がみられた。ロイター通信外部リンクは17日、入国審査の影響で車が長蛇の列をなし、フランスからの越境者は普段の数倍の時間を通勤に費やしたと報じている。

スイス南西部のジュネーブ州ではフランスからの越境通勤者が看護師のおよそ6割を占める。そのため検問所では至急、混雑緩和の対策を講じ、医療、救急、警備の分野で働く人々にはラベルを配布、そのラベルを貼った車は「グリーンレーン」と呼ばれる優先レーンを使用できるよう体制を整えた。クリスティアン・ボック連邦税関事務局長によると、現在国内全ての検問所でグリーンレーンの設置が進められている。

一方、検問所を取材したジュネーブ州の日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンクによると、滞在・労働許可を持たないために入国を拒否されたケース(国境をまたぐ公共交通機関内での検問含む)を除いて越境者への影響は時間的な遅れにとどまっており、この点については概して理解も得られている。

ボック税関事務局長によると、入国制限の導入以来19日までに1万1千人が入国を拒否された。強行突破の試みが主にスイス北西部で数件あったものの、いずれも失敗に終わっている。

19日の時点では、完全に閉鎖された検問所は130カ所あまり。小規模検問所がその対象となっているが、これは入国者の流れをメインの検問所に絞ることで国境警備員の負担を軽減するためだ。

人気のないチューリヒ空港。3月14日
人気のないチューリヒ空港。3月14日 Keystone / Ennio Leanza

空路はどうなっている?

フライトのキャンセル、店舗の閉鎖、立ち入り制限などの影響で、普段は世界中の旅行者が行き交う各地の空港は不自然に静まり返っている外部リンク。スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)は、運航停止に伴い計24機をチューリヒ近郊にある旧スイス空軍基地に移した。ある労働組合からはジュネーブ空港の完全封鎖が要求されている。

ただし、19日朝の時点ではローマ、パリ、フランクフルト、マドリッドなどからまだ多くの便がチューリヒ空港に到着していた外部リンク。しかし、前夜に発表された措置により、これらの地域からの旅行者はスイス国民と滞在許可証所持者、仕事あるいはトランジット目的の旅行者以外「止むに止まれぬ事情を除き」入国できなくなっている。

上記の入国条件に該当しない旅行者はどうなるのか。

政府発表には「新たな決定に対応するための措置については空港責任者から発表される」とあるだけで具体策への言及はない。swissinfo.chが19日にチューリヒ空港警察の報道官を取材したところ、空港では「通常処理」に準じた対応を行うということだった。具体的には関係書類を審査し、入国不可となった旅行者に利用エアラインの乗り継ぎカウンターまでの同行を求める。そして、そのエアラインが請け負うべき送還にかかる費用をカバーする責任を負う。

こういった案件の発生回数ついてはこれまでのところ不明だ。

スイス旅行を予定している場合は?

結論から言うと、スイス国民か滞在許可証所持者でない場合、シェンゲン加盟26カ国(仏・独・伊・西とオーストリアを除く)以外の国からスイスに入国することはできない。これらの国からスイスに来ようとする場合は、居住国に再入国できるかどうかについても調べておくべきだ。スイス同様どの国も入国制限を行っており、検疫や入国について独自の条件を設けているからだ。

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現在のところスイス国民と滞在許可証保持者は、コロナウィルスの感染者が多い地域から帰国しても強制隔離はされていない。連邦内務省保健庁(BAG)サイト内のCovid-19情報ページ外部リンクには「今や世界のほとんどの地域で新型コロナウィルス感染のリスクがあるため、3月9日以降、感染地域という表現は用いない」とある。

一方スイス外務省は、航空便の欠航や国境封鎖が相次いでいることから外国旅行中のスイス国民に対しできるだけ速やかに帰国するよう呼びかけている。その背景には、先週初めモロッコで起きたようにデリケートな外交問題に発展しかねない(現在は解決済み)という懸念がある。外国滞在中のスイス人旅行者や帰国困難者の人数は分かっていない。外務省が運営する旅行者オンライン登録プラットフォーム「Itineris外部リンク」には、現在約1万5千人が登録されている。

なお外務省は「在外スイス人には危機勃発地域からの一斉帰還を組織するよう国に求める権利はない」と在外スイス人法外部リンクに基づく見解を繰り返している。外務省や各地のスイス大使館は危機的状況にある在外スイス人に可能な限りの支援を行うとしているが、一斉帰還は計画されていない。

(英語からの翻訳・フュレマン直美)

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