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「CSI」効果を探る 鑑識官に向いているのはどんな人?

(Keystone)

「CSI:科学捜査班」のような犯罪ドラマをきっかけに、法科学を学ぼうと志す学生が増えている。特に女子学生が多い。カリキュラムは大変な上、スイスでは就職先も少なく、勤務時間も不規則だ。では、何が魅力なのだろうか?

 首都ベルンの古い灰色の建物の奥深く、急な階段をいくつも下りたところに、ベルン大学法物理学・弾道学部の研究室がある。学部長を務めるのは、銃による負傷分野のヨーロッパ屈指の専門家、ベアート・クノイビュールさんだ。

 研究チームのメンバーは5人。若い2人が、大きな窓のそばのコンピューターの前に座っている。奥の小部屋を占領しているのは、セルロースが詰められたプラスチックの箱。最近この小部屋が使われたのは、唐辛子スプレーが生み出すエネルギーを測定するためだった。

 数学者のクノイビュールさんは、スイス軍で弾道学の研究に33年間従事した後、法科学の分野にやってきた。仕事内容は、犯罪捜査というより「犯罪現場の解読」だ。退屈な職業ではない。「私たちは、手がかりを見るとすぐに考え始める。『何が起きたのか?血はどこに飛び散ったのか?』何がどのように起こったかを再構成しようとするのだ」

法科学はどんなことに使われているのか?

一言で言うと、さまざまなことに使われている。

チューリヒ大学法遺伝学部ではこれまで、「アルコール過剰摂取」の10代の若者にアルコール耐性の遺伝子的要因があるかどうかを調べたり、スイスの自由のために戦ったユルク・イェナチュ(1596~1639)の400年前の遺骨の鑑定を行ったりした。

2012年8月、パレスチナ自治政府の故ヤセル・アラファト議長の遺体が掘り起こされ、死因が放射性ポロニウムでの毒殺かどうかの鑑定が行われた。その鑑定チームに、ローザンヌ大学病院の放射線物理学研究所の研究者も招聘された。

ベルン大学法物理学・弾道学部は、フランスで2012年9月に車中で射殺されたイギリス人一家の証拠を検証した。

また最近では、ヨーロッパで販売されている冷凍ラザニアその他の製品に含まれる肉がパッケージの表示通りの牛肉なのか、それ以外なのかを検査するのに、法科学の手法が用いられている。

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トレーニング

 昨年、ローザンヌ大学で法科学の学士課程に入学した学生数は89人。これは、世界初の科学捜査の学術機関であり、法科学の基礎教育を行うヨーロッパでは数少ない教育機関の一つだ。

 入学者数は2005〜2006年に118人と、ピークを迎えた(2005年のアメリカのテレビドラマのトップ10のうち、六つは犯罪ドラマだった)。

 法科学の仕事に興味をもつのは「人間の体がどのように機能し、どのようには機能しないかに関心がある人だ」と話すのは、ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学デュッセルドルフの社会科学・コミュニケーション・メディア学研究所の研究員であるスザンヌ・コイネケさんだ。

 コイネケさんは他の2人の研究者と共同で、「CSI」のようなテレビ番組が法科学を志す学生に影響を及ぼしたかどうかを調査した。その結果、こういったドラマに魅力を感じたのは既に医学に興味を抱いている学生で、彼らは法科学に対しては「100%正しいわけではないが、現実的な」知識をもっていることが分かった。

 調査の対象となった27人のうち、24人が女性だった。コイネケさんは、その理由はよく分からないという。

 「ただ、他の調査でも、テレビで職業が取り上げられた場合、女性の方が男性よりも関心を示すという結果が出ている」

 スイスでも、法科学に関心のある学生には女性が多い。

 2004〜2012年の間にローザンヌ大学で法科学を学んだ学部生のうち、約3分の2が女性だった。チューリヒ大学法科学研究所のミハエル・タリ所長は、同研究所に入ってくる医学生にもある傾向があることを発見した。「研修医12人のうち、男性は2人しかいない」

(swissinfo.ch)

法科学に向いている人とは

 しかし、法科学の専門家がこの職業に適した性質として挙げるさまざまな特徴は、ジェンダーとは無関係だ。

 クノイビュールさんは、弾道学者には「想像力と独創性が必要だ」と話す。

 一方、タリさんはこう指摘する。「法科学に対する情熱がなければならない。事件を解決したいという熱意が必要だ。テレビを観たり(犯罪小説を)読んだりするようなものだ。どうすれば解決できるのかに興味がなければならない。それが長続きしない人は、法科学には全く向いていない」

不規則な就業時間

 また、定時で帰れる仕事を望む人も法科学には向いていない。

 チューリヒで法科学・画像診断学部の学部長も務めるタリさんによると、この学部の典型的な一日は、朝7時に、タリさんが開発に関わった「Virtopsy(仮想死体解剖)」という非侵襲的手法(体に傷をつけない方法)で死体のスキャンをすることから始まる。続いて分析、検視を行い、法廷と警察に提出する報告書を作成する。

 扱う事件はさまざまだ。殺人事件に混じって、飲酒運転をしたドライバーの血液検査といった平凡な仕事もある。「何が来るかわからない。そこがこの仕事の面白いところだ」とタリさんは話す。

2013年3月にスイスで放映中の法科学関連ドラマ(一部)

「ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言」

「Bones―骨は語る」

「コールドケース 迷宮事件簿」

「クリミナル・インテント」

「クリミナル・マインド FBI行動分析課」

「CSI: 科学捜査班」

「CSI: マイアミ」

「CSI: ニューヨーク」

「ロー&オーダー」

「NCIS ネイビー犯罪捜査班」

「法科学捜査班 Silent Witness」

「ウェイキング・ザ・デッド 迷宮事件特捜班」

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就職先の少なさ

 スイスは経済協力開発機構(OECD)の加盟国中、最も暴力犯罪発生率が低い。そのため法科学関連の職が少なく、キャリア形成の主な足かせとなっている。

 ローザンヌ大学法科学プログラムを2008年度に卒業した人を対象に、学位取得から1年後の就職状況を調査した結果、就職していたのは36人中28人(78%)だった。また、就職した28人のうち19人(68%)が法科学の分野で働いていた。ちなみに、クノイビュールさんの研究チームには5人のメンバーおり、メンバー全員で2.5人分(フルタイム換算)の仕事を分け合っている。チューリヒの法科学プログラムに雇用されるスタッフ数はこの20年間で60人から150人へと大きく増えたが、昇進の機会は限られている。

 「学問の世界でキャリアを積みたくても、(スイスでは)求人があまりない」とタリさん。

 しかし、法科学への関心はドラマでも実世界でも依然根強い。ローザンヌ大学の法科学部には、入学希望者やメディアから情報を求める依頼が殺到しているそうだ。

 タリさんは、「CSI」のような番組が法科学に関する一般の関心を高めるのに大きく貢献したと考えている。現在スイスのテレビでは、少なくとも15本の法科学関係の犯罪ドラマが放映されている。

 「10年前に『私は法科学者です』と言ったら、ほとんどの人はぎょっとしただろう」。しかし、今は関心を示す人の方が多いという。「私たちにとっては悪くない宣伝だ」


(英語からの翻訳 西田英恵、編集 鹿島田芙美), swissinfo.ch


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