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FIFAの収賄疑惑への対処に不信感

FIFAのジョアン・アヴェランジェ前会長(写真)とリカルド・テイシェイラ前理事が数百万ドルものわいろを受け取ったとの検察文書が先日公開された Reuters

国際サッカー連盟(FIFA)は7月17日、連盟内での収賄疑惑に対処するため、2人の法律家を調査責任者に任命した。しかし、これでわいろなどの不正行為が改善されるかどうか、疑問の声は絶えない。

FIFA倫理委員会2部門の委員長に任命されたのは、米国出身のマイケル・ガルシア弁護士とドイツ出身のヨアヒム・エッケルト判事。ガルシア氏はFIFAでは初となる独立した調査委員長として、FIFA内で長い間疑われている不正行為の調査に当たる。

 FIFAがこうした対策に乗り出した背景には、ジョアン・アヴェランジェ前会長とその婿のリカルド・テイシェイラ前理事が、1990年代後半に何百万ドルものわいろを受け取っていたことが先週、明らかになったことがある。

 2人の名前が明るみに出たのは、スイス連邦裁判所が2008年の裁判に関する検察文書の公開を命じたためだ。この検察文書では、経営破たんしたマーケティング会社ISMM-ISL社から2人にわいろが支払われていたことが示されていた。

 現在のゼップ・ブラッター会長はこの事件に関し、アヴェランジェ前会長とテイシェイラ前理事がわいろを受け取っていたことを知っていたと認めた。だが、これはスイスでは違法に当たらないため、別段対策を取らなかったという。また、ブラッター氏は先週、FIFAのウェブサイト上で次のように述べた。「当時、そのような金銭の支払いは経費として税控除ができたが、今では違法だろう。今の基準から過去を判断することはできない。そんなことをすればモラルが崩壊するというものだ」

 ブラッター氏はさらに、ドイツ語圏の日曜紙ブリック・アム・ゾンターク(Blick am Sonntag)で、2006年の世界選手権開催地の選定にもわいろが関わっていると示唆。だがその後、自分のコメントが誤解されているとも話した。

次々と出る収賄疑惑

 FIFAの金銭にまつわる疑惑はまだある。2018年と2022年の世界選手権開催地の決定や、昨夏に行われたFIFA会長選挙でブラッター氏が再選したことにも収賄疑惑がかけられているのだ。

 過去18カ月でFIFA関係者数人が活動停止処分を受けたが、その中にはFIFA会長選挙でブラッター氏の唯一のライバルだった、アジアサッカー連盟元会長のモハメド・ビン・ハマム氏も含まれる。FIFA副会長のジャック・ワーナー氏は収賄疑惑の調査が終了する前に辞任している。

 FIFAが本拠を置くスイスでは、国際機関は特別な税控除が適用でき、反汚職法の対象外になっている。だが、FIFAの相次ぐ収賄疑惑を受け、スイスの政治家は反汚職法をスポーツ機関にも適用すべきか検討し始めた。

 FIFAへの批判はスイス国外でも高まっている。ドイツやイギリスのサッカー連盟は不正行為を取り締まるようFIFAに圧力をかけており、スポンサー企業も状況の改善を望んでいる。

 汚職対策の専門家マーク・ピース氏は、ドイツ語圏の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥング(Sonntagszeitung)で「スイスでは不正行為が盛んに行われている。脱税者や規制されていないスポーツ協会などはみんな、スイスの名声を傷つける」と話し、FIFAは収賄調査の強化以外にも、利害紛争への対応や理事会の透明性を改善することが重要だと話した。

(英語からの翻訳・編集、鹿島田芙美)

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