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UBSの将来 6つのシナリオ

UBSは徐々に、個人の資産運用に焦点を当てた経営をしていくようになるのではないかとアナリストたちは予測する

(Reuters)

スイス最大手UBS銀行は、昨年政府の公的資金注入によって救済された後、今年2月顧客の脱税をほう助したとしてアメリカから訴訟を起こされている。危機に直面するUBSの将来はどうなるのか。

スイス国民は、UBSの運命を倒産、国営化、買収、解体などと予想している。ボルディエール銀行 ( Bordier & Cie ) の金融アナリスト、ロイック・ベンドゥ氏と連邦国際金融問題局 ( SFI ) のディレクター、ジャン・ピエール・ダンティンヌ氏に6つのシナリオを分析してもらった。

倒産 

 「UBSの倒産ほとんどあり得ない」
 というのがベントゥ氏の考えだ。UBSの倒産は、自己資本で充分穴埋めできないほどの巨額の損失を計上した場合か、巨額の投資を行なっている投資家がUBSから完全に手を引くなどの損失の場合のみ起こりうる。しかしこうした損失の可能性は、2007年、2008年度に比べ現在は少ない。国立銀行 ( スイス中銀SNB/BNS ) からの融資によって巨大な不良資産を処分できる見込みが立ったからだ。

 また60億フラン ( 約5254億円 ) の強制展開社債購入という形での公的資金注入などもあり、UBSの自己資本比率は、国際的に見てかなり高くなった。ただ、ベントゥ氏が考える倒産の一番の原因は、スイスの顧客がUBSへの信頼を失って預金をすべて引き上げてしまう場合だ。イギリスのノーザン・ロック銀行 ( Northern Rock ) のようになるシナリオだが、これがまったく起こらないとは言えないが、「ほとんど考えられない」と見ている。

 一方ダンティンヌ氏は、国際的な景気の後退がUBSやほかの金融機関の自己資本の一部を不良資産に変えてしまう可能性は充分にあると予測する。だがダンティンヌ氏も、
「半年前より倒産の危険性は少なくなっている。さらに政府や国立銀行が公的資金注入を行なったということは、UBSほどの大手を倒産させるわけにはいかないというメッセージの証だ」
 と分析する。

アメリカからの撤退

 「UBSのアメリカからの撤退は、段階的であればUBSの将来に危険はない」
 とベンドゥ氏は言う。ただし銀行ライセンスが取り上げられないという条件つきだ。銀行ライセンスは、アメリカで銀行業務を行なっていく上で必須のライセンスで、最近スイス政府はUBSとアメリカ側との間に取り交わされたライセンスに関する合意を確認し合ったばかりだ。

 先週2月19日、顧客の脱税をほう助したとして5万2000人分の情報の引き渡しをアメリカ側が要求したことは、この銀行ライセンス問題と関係がないという。というのも脱税問題は民事法に関わるものだからだ。

国有化 

 UBSの国有化に関してベンドゥ氏は、
 「国有化は、少なくとも一時的なものになると思うが、1つの選択肢として可能性のあるシナリオだ。ただ、これは極端な損失や自己資本でカバーできない程の流動的資本に問題が起きたときに考えられるシナリオだが、現在の状況からはあり得ないと思う」
 と言う。

 さらに、国有化がもし行なわれるとしてもUBSの銀行業務の一部のみに適用するほうがよいというのがベンドゥ氏の考えだ。スイスの顧客を安心させるには国有化は得策だが、信頼性やプライバシー尊重が要求される個人の資産運用分野では、国家の影がバックにあるのはマイナスイメージだからだ。

 「国有化はその国の文化や伝統にも関わってくる。国有化が今絶対必要でないならば、また特にそうした兆候が現在ない場合、スイスが国有化を行なう可能性は非常に低い」
 とダンティンヌ氏も付け加える。

買収

 「UBS買収のシナリオは、国有化に比べると支持率が低くなる」
 とベンドゥ氏は言う。買収の場合、買い手はUBSの不良資産を解消していく構造も一緒に引き受けなくてはならない。もし、この義務がなければHSBC銀行などがすでに買い手として手を挙げているはずだという。

 一方、UBSとクレディ・スイス ( Credit Suisse ) の合併は可能性が低い。2つの巨大銀行が合併することはスイス経済にとってシステム的リスクがさらに高まることになるからだ。さらに、UBSの最高経営責任者 ( CEO ) に2月26日就任した、クレディ・スイスの旧CEOオスヴァルト・グルューベル氏は、
「UBSに来たのは買収が目的ではない」
 と明言している。

解体

 解体に関しては、まずビジネスバンキング部門は国有化か、州立銀行やスイス郵便(die Post/La Poste ) の銀行部門に吸収される可能性は大いにある。個人の資産運用部門も多くの買い手が手を挙げることだろう。しかし、G20や7月のアメリカでのUBS訴訟解決前に解体は考えられないとベンドゥ氏は見る。

 ダンティンヌ氏は、現状において解体は得策ではないと考える。
「市場は極端に冷え込んでいる。従ってUBSの価値は非常に低く見積もられ、悪い条件で買い取られる。国がまとめてUBSを買い取るというのであれば、国有化のほうがよいだろう。銀行の体制改革に時間を稼げるからだ」
 と分析する。

現状維持

 「基本的には個人の資産運用に力を入れ、ほかの銀行業務をかなり減らしてスリムになる形でUBSは存続し続けるというシナリオは充分考えられる」
 とベントゥ氏は言う。世界中にオフィスを持っているUBSは、銀行守秘義務で顧客を守りながらの資産運用を有利にやっていけるという利点があるからだ。

  しかし、ダンティンヌ氏の方は、問題が残っていると言う。
「アメリカとの間に起きた脱税ほう助問題は、UBSの機構の一部がはっきりせず、惨憺 ( さんたん ) たるものだということを見せつけた。UBSほどの銀行、しかも一国にとってこれほど重要な役割を持つ銀行があのようなリスクに手をつけたということ自体が信じられない」
 と問題の大きさを指摘する。問題は解決に向かっているのか?そうであってほしいとダンティンヌは付け加えた。

swissinfo、ピエール・ベッソン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳 

UBS銀行の最近のできごと

2009年2月18日、UBSはアメリカ人顧客の脱税をほう助したとしてアメリカ司法省が突きつけてきた告訴の最後通牒 ( つうちょう ) に対し、7億8000万ドル ( 約730億円 ) を支払い、200~300人分のアメリカ人顧客の情報を開示すると約束した。
2月19日、ハンス・ルドルフ・メルツ大統領はアメリカ側との合意を歓迎し、一方で「今後もスイスの銀行守秘義務は健全だ」と宣言した。
同日、アメリカ側はさらに5万2000人分の顧客情報の引き渡しを要求してきた。
2月24日、UBSのアメリカ人顧客8人の弁護士が、UBSとスイスの金融監督当局 ( Finma ) を相手取って訴訟を起こした。UBS取締役会長のペーター・クーラー氏と金融監督当局の局長ユウジェン・アルティネール氏が起訴されている。

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