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WHO 豚インフルエンザの警戒度を引き上げ

インフルエンザ治療薬「タミフル」の製造元「ロシュ ( Roche ) 」は、WHOからの要請があればどこでも24時間以内に「タミフル」を届けられるという Keystone

世界保健機構 ( WHO ) は4月27日、豚インフルエンザのパンデミック ( 世界的な大流行 ) 警戒レベルを引き上げ、全6段階のうちフェーズ4に変更した。これで豚インフルエンザが世界的に流行する危険度は大幅に上昇したと認識された。

WHOのケイジ・フクダ事務局長代理によると、この決定は専門家から成る委員会の勧告によるものだという。

ウイルスが広がらない地域はない

 フクダ氏は
「飛行機であっという間に世界のどこにでも行ける今の時代においては、ウイルスが広がらない地域はない。渡航制限や国境閉鎖の勧告は行わないが、可能であるならば危険な地域への渡航は取りやめるべき」
 と警告する。一方、調理した豚肉や豚肉の加工品を食べることに対しては、基本的に危険はないという。

 メキシコへの渡航はアメリカとイギリスの政府も警告しているほか、欧州委員会も豚インフルエンザが発生している地域への渡航を見合わせるよう呼びかけている。スイスはまだ何の警告も発していないが、WHOの警戒レベルがフェーズ4に引き上げられたため、連邦内閣でも警戒レベル引き上げの決議が行われそうだ。引き上げが決まると、渡航制限やパンデミック特別対策部設置などの可能性も考えられる。

スイス 準備は万端

 豚インフルエンザのウイルスは、豚、人、鳥がそれぞれかかるインフルエンザのウイルスが新しく組み合わさったものであり、重症急性呼吸器症候群 ( SARS ) と鳥インフルエンザに続いて現れたパンデミックの危険性をはらむ流行病だ。

 WHOの専門家によると、メキシコでは豚インフルエンザにかかっている豚はおらず、感染しているのは人間だけであることから、この流行病は正しくは「メキシコ・インフルエンザ」と呼ぶべきだという。

 連邦内務省保健局 ( BAG/OFSP ) のトマス・ツェルトナー局長はドイツ語国営ラジオのインタビューで
「この新しいインフルエンザがスイスに上陸しても、準備はこれまでになくよく整っている。SARSと鳥インフルエンザの流行で学んだことが多い」
 と語った。

 豚インフルエンザの病原体は「H1N1型」で、アメリカ保健局によるとインフルエンザ治療薬の「タミフル」と「リレンザ」が効果を表している。しかし、
「ウイルスが抵抗力をつけないように、タミフルをむやみと服用しないようにしなければならない」
 とツェルトナー氏は注意を促す。

 メキシコ政府によると、メキシコでは豚インフルエンザによる死亡数はこの数日間やや減少の傾向にある。4月27日までの死亡数は149人だが、「H1N1型」が確認された死亡者の数は報告されていない。

 アメリカでは40人以上、カナダでは6人が豚インフルエンザと確認された。また、スペインとイギリスでもメキシコから戻った旅行者3人が豚インフルエンザと認定され、スイスでもこれまで5件の疑わしいケースが発生している。

swissinfo、外電

フェーズ1. 動物から新ウイルス検出。人に感染する危険性は低い。
フェーズ2. 動物から新ウイルス検出。人に感染する危険性が高い。
フェーズ3. 動物から新ウイルス検出。人に感染するが、人から人への感染は限定的。
フェーズ4. 人から人への感染が増加するが、規模は小さい。
フェーズ5. 人から人への感染規模が拡大。
フェーズ6. 世界的に大流行する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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