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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

審査員の加治屋百合子さんに聞く バレリーナへの道

Yuriko Kajiya
第46回ローザンヌ国際バレエコンクールで審査員を務める加治屋百合子さん Prix de Lausanne

2000年にローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞した加治屋百合子さんは現在、米・ヒューストンバレエ団でプリンシパルとして活躍する。今回、審査員として再びローザンヌの地を踏む加治屋さんに、コンクールへの思いや、若いダンサーたちへのメッセージを聞いた。

スイスインフォ: 加治屋さんは何がきっかけで、2000年にローザンヌ国際バレエコンクールに参加したのですか?

加治屋百合子さん: バレエを習い始めた幼少期より、コンクールの様子はテレビで見て知っていました。コンクールを意識するようになったのは14歳頃。同年代の子達がコンクールによって未来の扉を開き、輝いていく様子を見て、いつか世界に羽ばたくバレリーナになる道があるのだと憧れを抱くようになりました。

中国・上海舞踏学校在学中に、学校が初めてローザンヌコンクールへの参加を目指したため、学校で年間優秀者の選抜が行われました。そして中国人ではない私が選ばれ、上海舞踊学校代表としての出場権を獲得することが出来ました。

スイスインフォ 今回、ローザンヌに審査員として戻ってくることをどう感じますか?

加治屋: ローザンヌのコンクールに参加してから18年が経ちましたが、このコンクールは私に素晴らしい影響とバレエの機会を与えてくれました。今回、再びこの場所に戻りますが、審査員としての参加。人生は巡っているんだと感じています。審査員として、次世代のバレリーナを発掘するための一員に選ばれた事をとても光栄に思います。

スイスインフォ:  最近の若いダンサーの傾向や特徴に関してですが、加治屋さんがコンクールに参加した2000年と今では、テクニックなどがどのように異なりますか?

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加治屋: 今のダンサーはインターネットでいろいろな情報を手に入れることが出来るので、知識が豊富で、技術もテクニックも年々上がってきており、とても素晴らしいです。ですが、見た目の技に重きを置き、踊りの要素が欠けてきているのが少し残念です。

スイスインフォ:  プロのダンサーになるために求められる素養は?演技の幅を広げていくには、何を意識して稽古することが大切ですか?

加治屋: 学生の時は先生がいろいろと教えてくれますが、プロになると全て自己管理が必要です。バレエ団に入ると優れたダンサーが沢山いるため、まずは「自分」を見失わないようにする。そこで自分の個性を見出す事が必要となります。

スイスインフォ舞台に立つ前に、加治屋さんが特に気をつけていることや、舞台で成功するためのおまじないなどがあれば教えてください。

加治屋: メイクをする時は薄着なので、電気パッドを使って身体を冷やさないようにしています。おまじないとしては、舞台に立つ前に公演が上手くいくように自分なりの想像を広げることがルーティンになっています。

スイスインフォ:  加治屋さんご自身の経験を通して、プロを目指すダンサーへ、アドバイスをいただけませんか? 

加治屋: 常に学ぶ姿勢を忘れずにいることはとても大切です。学生の頃は、コンクールで賞を取ったり、バレエ団に入団する事を、目標またはゴールにしてみんな頑張っていると思いますが、それはまだまだスタート地点です。バレエダンサーとしての人生は始まったばかりです。バレエ団に入ると、自分より経験の豊富なダンサーばかりです。周りのダンサーの良いところを見て学び、吸収して自分のものにする必要があります。

スイスインフォ:  プロのダンサーになる道は厳しいですが、14~18歳までの踊りと、プロとの違いには、どのようなものがあるでしょうか?

加治屋: 若いダンサーは、若いダンサーにしか出せない初々しさ、新鮮さ、そして将来への可能性があります!プロになると、自己管理に加えて常に技術を磨き、日々高みを目指して努力しなくてはいけません。

加治屋百合子(かじやゆりこ)略歴

1984年生まれ。愛知県出身。
10歳で中国・上海舞踊学校に入学し、2000年、ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞。
カナダ国立バレエ学校に留学し、2001年にアメリカンバレエシアター(ABT)の研修生となり、翌年に一員として入団。2007年にはソリストへ昇格。
2014年からは米・ヒューストンバレエ団へ入団し、プリンシパルとして活躍する。

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