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OSCEの選挙監視


スイスの直接民主制、他国に根付くか 選挙監視団の現場から







欧州安保協力機構(OSCE)は20年以上もの間、コソボを含む30カ国以上で選挙を監視している (Keystone)

欧州安保協力機構(OSCE)は20年以上もの間、コソボを含む30カ国以上で選挙を監視している

(Keystone)

マルグレット・キーナー・ネレン氏(62)は、紛争国などで選挙が公正に行われているかチェックする短期の国際選挙監視団員と、スイス連邦議会議員の二つの顔を持つ。ネレン氏は、国民やマイノリティの基本的な権利を保障するには、憲法に根拠を明示することが不可欠だと指摘する。他方で、スイス流の直接民主制が他の国で通用するかは疑問だという。

 「スイスの直接民主制は、近代的な社会や小規模国でこそ最大の効果を発揮するだろう。しかし、それには代償を伴う」とネレン氏は言う。

 歴史を紐解くと、直接民主制は良い時も悪い時もスイスを支え、言語や宗教、社会的な面でマイノリティの統合を後押しした。

 ネレン氏は「直接民主制の発展には時間がかかった。この制度は今後も、新たな課題に対処ができるよう柔軟性を維持しなければならない」と話す。

 弁護士と翻訳業のかたわら、地方、国政レベルで政治家のキャリアを積み、欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視活動に参加している。OSCEは北米、欧州、中央アジアの57カ国が加盟する世界最大の地域安全保障機構。安全保障を非軍事的側面からも考察し、その一環として公正な選挙の普及啓発に取り組んでいる。

 ネレン氏は左派の社会民主党に所属。3年前にスイスの選挙監視団に参加し、旧ソ連とトルコなどの国々で7件のミッションに関わった。監視団のメンバー8人の中で最も積極的だ。

マルグレット・キーナー・ネレン氏は2013年からスイスの選挙監視団メンバーを務めている (Kienernellen.ch)

マルグレット・キーナー・ネレン氏は2013年からスイスの選挙監視団メンバーを務めている

(Kienernellen.ch)

 ただ、自身の仕事や議会活動に加え国外視察もあるため、OSCEのミッションとの両立は難しいと打ち明ける。

スイスの教訓?

 ネレン氏はスイス国籍だが、国籍の点では他国の国会議員に比べなんら特別な意味は持たない。「選挙監視ミッションは、スイスが市民の政治参加の盛んな国だと自慢して回る場ではない」と釘をさすが、それでもなお自国の評価は高いと振り返る。

 一方、「他国の選挙管理者からスイスの人権、表現の自由について批判的な質問を受けた。特にトルコでは、ドウ・ペリンチェク氏の事件に絡んで同様の質問を受けた」とネレン氏は指摘する。ペリンチェク氏はトルコの政治家で、オスマン帝国時代のトルコで1915年に起きたアルメニア人虐殺を「ジェノサイド(集団殺害)ではない」と否定し、スイスの裁判所が人種差別発言だとして有罪判決を下した。しかし昨年、欧州人権裁判所は訴追自体が誤りだったとしてスイスの決定を覆す判決を出した。

 選挙監視の現場では、派遣先の国の選挙関係者は投票所の運営に追われ、国際監視団の訪問はストレスになり得るという。

 ネレン氏は「私たちの仕事は、選挙に不正がないか目を光らせ、もしあれば本部に報告することだ。スイスの民主制の教訓を披露する場ではない」と話す。

人権

 ネレン氏は2013年以降、OSCEの選挙監視ミッションでタジキスタン、トルクメニスタン、モルドバ、ハンガリーを訪問。将来的にはミッションを監督するコーディーネーターのような役割を担いたいという。

 「人権の仕事に長い間従事してきた。ミッションは派遣先の国の政治システムを学び、選挙法が実際に投票所でどう運用されているのかを知るのに最適な機会だ」とネレン氏は話す。

スイス上院を訪問するディオーゴ・クルヴィネル氏 (swissinfo.ch)

スイス上院を訪問するディオーゴ・クルヴィネル氏

(swissinfo.ch)

スイスも選挙監視を受ける

 OSCE以外にも、欧州理事会、欧州連合(EU)、米州機構、アフリカ連合のほか、人権団体、専門家らなどが同様に選挙監視活動を行っている。

 昨年、ブラジル南東部ミナスジェライス州の選挙裁判所の高官ディオーゴ・クルヴィネル氏が私的な訪問を兼ねてスイスを訪れた。同年10月のスイス連邦議会総選挙に関する情報収集が目的だった。

 クルヴィネル氏は、スイスの選挙システムが自国の政治、社会情勢を色濃く反映していると感じたといい、スイスインフォの取材に「信頼の上に成り立っているシステムだ」と語った。一部の投票所で、いまだに手作業で集計が行われていたことに驚いたともいう。

 法学教授でもある同氏は、スイスの選挙資金に関する制度やその透明性のなさに対して国際的な批判が繰り返し起こっていることも付け加えた。

 さらに、スイスの直接民主制がブラジルのような大きな国で通用するかは疑問が残ると強調する。

 理由として、国民投票などの制度に対する理解が国内で十分浸透しているか定かでない上に、メディアが公平で十分な情報を供給できるかも未知数だからだという。

OSCEの選挙監視活動

欧州安保協力機構(OSCE)の民主制度・人権事務所(ODIHR)による国際選挙監視ミッションは1996年に始まった。

各ミッションは100人から数千人の短期監視団員で構成。監視団員は投票日の数日前に派遣先へおもむき、仕事内容などについて簡単な説明を受ける。その後担当地域別に少人数の班に分かれ、1日に最大20カ所の投票所を回る。

過去20年間で、欧州、旧ソ連、米国を含むOSCEの管轄地域内で行われたミッションは300件以上に上る。

2013〜15年にはOSCE加盟国、パートナー国出身の国会議員約780人が22件のミッションに参加した。

スイスの国会議員による監視団メンバーは8人。これまで10件のミッションに参加した。


(英語からの翻訳・宇田薫 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch



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