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連邦「マジック・フォーミュラ」政権、2003年には変化?

スイス政治は1959年以来、4大政権政党がパワーを分け合う「マジック・フーミュラ」態勢を保っている。歴史学者のウルス・アルターマット氏は、この態勢が急変することはないが、コンセンサス政治には変化の兆しがあるという。

スイス政治は1959年以来、4大政権政党がパワーを分け合う「マジック・フーミュラ」態勢を保っている。歴史学者のウルス・アルターマット氏(写真)は、この態勢が急変することはないが、コンセンサス政治には変化の兆しがあるという。

アルターマット氏は、2003年の総選挙前にスイス政治に大きな変化はないと分析する。辛らつな言葉の応酬はあるものの、スイスの政治家らは変化を嫌っているという。59年以来、スイス内閣の7人の閣僚は、社会民主党2人、急進党2人、キリスト教民主党2人、人民党1人で定着している。4党のうち、社会民主党は左、キリスト教民主党は中道右派、急進党と人民党は右だ。この構成は、50年代の勢力バランスに沿ったものだったが、近年選挙では人民党の支持率が伸びており、昨年の総選挙の結果、議会最大政党の地位に躍り出た。以来、党内では、クリストファー・ブロッヒャー(チューリッヒ)ら右派党員らを中心に、人民党からの入閣者を増やせという要求が高まっている。また、人民党内の右派勢力は、対EU関係強化、スイス部隊の平和維持活動への参加など、いくつかの政府の政策に強い不満を唱えており、人民党の閣僚、アドルフ・オギ大統領・国防相は、右派議員からの攻撃の的となってきた。

オギ大統領は先月、今年12月31日の任期満了で政界から引退する方針を発表した。以来、党内での後継者争いが激化、特に左右どちらの派閥から後継者を出すかの争いが激しくなっている。一方、他の政権政党は、人民党が共通の政策を支持しないなら政権から去るべきだと批判している。人民党が政権政党を離れるような事態になれば、マジック・フォーミュラは実質的に終焉することになる。

アルターマット氏は、今後3年間は、主要政策をめぐってスイスの政治勢力間で大きな衝突が起こると見ている。EU加盟問題、年金制度改革などをめぐる現在の分裂は、さらに顕著なものになる。アルターマット氏は、人民党は選挙での強さを保持し、内閣から放逐されることもないと見る。一方、社会民主党は弱体化し、急進党3人、キリスト教民主党2人、人民党2人の新中道右派政権が誕生すると予測する。が、右派と左派の分裂がより大きくなるような大変革の可能性が全く無いとはいえないという。

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