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ウィンタースポーツ


スイスはダイバーの国?


Marianne Burkhardt


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スイスでは、凍った湖に穴をあけ、摂氏3度の冷たい水の中でダイビングをすることができる (J.Crespo)

スイスでは、凍った湖に穴をあけ、摂氏3度の冷たい水の中でダイビングをすることができる

(J.Crespo)

スイスで冬と言えば大半の人がスノースポーツを思い浮かべるだろう。その一方で、スイスの湖や河川でスキューバダイビングをするのは、冬が一番適したシーズンだと言う人もいる。山の国スイスでの、知られざるダイビング事情を取材した。

 ここはヴォー州にあるサン・プレ。寒さが身にしみる夜、辺りは暗くレマン湖は闇の中だ。ローザンヌ市と湖の反対側にある保養地エビアンの町の明かりが薄い夜霧でぼんやりとかすむ。暗がりの中で灰色に光る水の表面温度は摂氏13度。あまり水に入りたくなるような温度ではない。

 近くの公園では、地元のダイビングクラブ「イマージョン」のメンバー4人が、毎週1回行っている「水中遠足」の準備をしている。ダイビングマスクを着けタンクを背負うと彼らのシルエットは少しカエルに似たような姿になった。

 湖の浜辺を2人組みになって歩きながら「(夜中に)潜っても何も見えないのでは、と言われるが、そんなことは全くない」と言うのは47歳のクロードさん。

 1歳年下でダイビングのパートナー(ダイビング用語では「バディ(buddy)」と呼ぶ)のフロールさんもうなずく。「湖に潜ると、自分の周りに何があるのか体ではっきりと感じる。海ではどちらかというと目で見て周りを確かめる。だから潜った感じが全然違う」

 足にフィンを着けるとダイバーたちは次々に冷たい水の中に飛び込んでいった。手に持っていた懐中電灯の白い光が、水の中では緑色にゆらいでいる。水面下の光の斑点は一緒に湖畔からゆっくりと遠ざかり、やがて闇に吸い込まれていった。

透明度の高い水

 スイス水中スポーツ協会(SUSV)の推算によると、スイスでは約25万人がダイビングライセンスを持っているという。その中には1万人のテクニカルダイバーとケーブ(洞窟)ダイバー、警官300人と軍人36人が含まれる。

 マーケティングリサーチ会社のインプット・コンサルティングが2013年に行ったアンケートによると、スイスでは約5万人が年に10回はダイビングするという。驚くことに、そのうち約2万5千人は、例え冬であっても少なくとも週1回は潜るという。

 イマージョンのクリストフ・コッティング代表は、「スイスでは冬の方が水の透明度が高いため、多くのダイバーは好んで寒い季節にダイビングするようだ」と説明する。

 「冬は水面温度と湖の底の温度がほとんど変わらないため、視界が非常に良い。夏には水面温度が25度まで上がることがあり、水中温度は潜る深さによって大きく変わる」

 コッティングさんはスイスのダイビングスポットに関するガイドブックを3冊執筆した。また、彼が手がけたスマートフォンのアプリ「スイス・ダイブ(Swiss Dive)」を使えばダイビングスポット600カ所の詳細が見られる。

 その中の一つにヴォー州のアルプス山中、標高1850メートルに位置するリオソン湖がある。この湖には1月中旬から3月まで氷が張り、その厚さは時に1メートルにも及ぶ。ここでは毎年300人ものダイバーが氷に3カ所の穴を開け、摂氏3度の冷たい水の中へと潜っていく。

 「湖の中でさかさまになって氷の裏側を歩くのがここのダイビングの醍醐味だ」とポール・フランシス・メルモドさんは言う。湖の近くでレストランを経営し、冬にこの地を訪れるダイバーたちが彼の宿泊施設に泊まっていくという。

氷に魅了されるダイバーは多い (D.Mazza )

氷に魅了されるダイバーは多い

(D.Mazza )

 リオソン湖は冬の間、スノーシューズかツーリングスキーがないと行けない場所にある。そのためダイバーは水に潜る前にまず40分かけて山を登らなくてはならない。メルモドさんの経営する宿泊施設では20~50人程度のグループの申し込みが多く、スイス、ベルギー、フランスのダイバークラブのメンバーがほとんどだという。冬季の集団キャンプの予約も好調で、11月には既に全室満員だった。

水中の観光スポット

 河川や湖の底にも観光スポットやアトラクションがある。「スイスの湖には1.2メートルにもなる大物のカワカマスがいる。もっと大きい2メートルもの巨大ナマズに出くわすこともある」とコッティングさん。「他にもスズキ、ザリガニ、カワメンタイ、コクチマス、カワマスなども豊富だ」

 水中生物の他にも、スイスの水底に数多く沈んでいるボートや飛行機を探しに行くのもダイバーの楽しみの一つだ。コッティングさんのお気に入りのスポットは、蒸気船が沈んでいるヴォー州のラ・トゥール・ド・ペイ近郊だ。

 1862年に沈没したこの蒸気船「ツバメ号」は、嵐のため引き揚げが難航し、60年代になってダイバーが偶然発見するまで行方が分からなくなっていた船だ。

 他にも、1864年のある霧の濃い夜、トゥールガウ州クロイツリンゲン近郊のボーデン湖で蒸気船「ユラ号」が「チューリヒ号」と衝突し、わずか4分間に沈没している。この沈没船もダイバーの間で人気だ。

 ダイバーたちが水中ルートやマネキン人形、銅像が並ぶ「遊び場」を作った場所もある。コッティングさんは、こういったスポットは特に初心者に人気だと言う。「ルートを正確にたどるにはコンパスが必要なので、初心者にはよい練習になる」

 ヴォー州のサン・トリフォンにある人造湖ドゥツィレ湖にある水中ルートでは、ドイツのF1ドライバー、ミハエル・シューマッハーさんのステンレス製レーシングカーが見られる。もちろんドライバーとチームのメンバーも一緒だ。F1好きのダイバー、マリオ・ヴォールゲハーベンさんが仲間と趣味で思いついたアイディアだったが、2007年、レーシングカーを湖に沈めた1週間後に、ヴォールゲハーベンさんはヌーシャテル湖でダイビング中に事故で亡くなっている。

 ヴァレー(ヴァリス)州にあるダイビングクラブ「ラ・クレー・ドゥス」のフロリアン・ラバンティ代表はヴォールゲハーベンさんのバディだった。「私にとってドゥツィレ湖の底であのレーシングカーに乗っているのはマリオだ。ドライバーが着ているレーシングスーツはマリオの所有物だった。ドゥツィレ湖に潜るときは必ずマリオに会いに行って、肩をポンとたたいてからまたダイビングを続ける」

 1995年から2013年の間に、年間3~6件のダイビングによる死亡事故が発生している。03年は12人もの死者を出す例外的な年となった。ダイビング事故防止窓口(FTU)の副委員長で技術関係の専門家であるデニス・パラッテさんは、03年の夏が特に暑かったために、経験の少ないダイバーが水中の寒さと暗さを予期できなかったことが、事故が多発した原因の一つではないかと推察する。

 だが冬季の事故件数は安定しているという。「冬にダイビングする人は経験も豊富で、夏にダイビングする人に比べると寒さに対する準備が万全だ」

 水に潜ってから30分後、サン・プレではまた緑色の光がかすかに浮かび上がってきた。光は次第に水面に近づいてくる。ダイバーたちがゆっくりと岸に向かっている。水中から1人の手がぬっと現れた。続いて残り3人の手が上がった。岸から上がると、せきを切ったように今夜のダイビングについての意見交換が始まった。

 深さ19メートルに沈む木製モーターボートを見に行く途中、カワメンタイ、スズキ、カニ、コイを見たとダイバーたちは嬉しそうだ。彼らは来週もまた一緒にダイビングする予定だ。

ダイビングの事故

ダイビング事故防止窓口(FTU)によると、2013年にはダイビングによる死亡事故が5件、重軽傷を負う事故が40件発生した。FTUはダイビングの安全性向上を図る国際ネットワーク「ダイバーズ・アラート・ネットワーク(DAN)」と協力しており、今から約25年前にダイビング事故用の緊急ホットラインが設置された。

レガ航空救助隊(Rega)の緊急ホットライン(電話番号1414)に電話し「ダイビング事故」と伝えると、即座に適切な医療援助が受けられる。ダイバーが応急処置を行っている間に、医師は救急搬送と減圧症などの治療に使われる高気圧酸素治療室(チャンバー)を手配する。その必要がない場合、病院で総合的な診断を受けられるよう配慮する。

FTUはスイス事故防止事務局(BFU)と共同で、スイスでダイビングする際のアドバイスをまとめた小冊子を発行している。


(独語からの翻訳・シュミット一恵), swissinfo.ch



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