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スイス公共放送サービスの今後 連邦議会で議論

ドリス・ロイトハルト環境・運輸・エネルギー・通信相は「異なる言語や文化が共存するスイスゆえ、現在のやり方が今日まで保持されてきた」と話した Keystone

スイス公共放送協会(SRG SSR)に圧力がかかっている。とりわけ右派政党の政治家が同協会の「独占的」な立場を批判。6月に連邦政府が今後の公共放送サービスに関する報告書を公表した際には、国会議員からも批判が起こった。しかし全州議会(上院)は9月26日、この報告書を支持した。

 今後の公共放送サービスのあり方をめぐる問題で、政府は質の高い報道を保証するためにも現状を維持していきたい姿勢を示している。しかし、連邦政府が6月に発表した報告書は、上院での批判を逃れることはできなかった。ハネス・ゲルマン議員とヴェルナー・ヒョーズリ議員(共に右派の国民党)は、スイス公共放送協会はテクノロジーの変化に対応しておらず、革新性や将来性があまり感じられないと、報告書の内容を批判。ヒョーズリ議員は、「デジタル化が進む時代に資金難から免れて受信料のみに頼るメディアは、デジタル化の変化に対応できず、競争を乗り越えられない」と主張した。

 同議員らによると、この報告書は(スイスインフォもその一部である)スイス公共放送協会が果たすべき仕事と、民間放送局に任せる仕事が何かを明確に提示できていないという。ゲルマン議員は「これは議論されるべき点であり、公共放送局に受信料を払う市民にはそれを求める権利がある」と言う。国民党は、民間放送局が放送しない内容の番組だけを、受信料で賄うべきだとの見解だ。同議員らは報告書のこれらの懸念をもう一度検討するようスイス政府に求めた。

機関への信頼

 しかし、上院の多数はドリス・ロイトハルト環境・運輸・エネルギー・通信相の見解に同調。「異なる言語や文化が共存するスイスゆえ、現在のやり方が今日まで保持されてきた」とし、多少の差こそあれ、政治がメディアに介入する他国を例にしながら、「欧州のあらゆる国のモデルを見てきたが、それらの国の公用語は一つだ。スイスは四つの言語を公用語とする国で、数多くの国民投票が行われる直接民主制を採用している。また、メディアの独立性は我々にとって非常に重要だ」と話した。これにより同氏は民間放送局と異なり、公共放送局はその独立性を維持すべきだとの立場を示した。

 また、スイス公共放送局は、四つ全ての公用語で、質の高い内容を提供していることから、「公共放送サービスの情報がしっかりしていれば、さらに市民は機関への信頼を増すと、科学的調査でも示されている」とも指摘した。

若者の関心を引き付ける

 政府はスイス公共放送協会を「神聖」な機関と位置付けているわけではない。公共サービスは常に状況の変化に対応し、とりわけ、若者の関心をどう引き付けるかを考慮していかなければならない。ロイトハルト氏は、スイス公共放送協会に対する制限は設けられるべきだとし、年間12億フラン(約1254億円)は、与えられている任務を遂行するには十分な額だと話した。


(独語からの翻訳・説田英香 編集・スイスインフォ)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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