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人気の日本食、放射能汚染の影響は……


小山千早(こやま ちはや)


「客足はあるが、品物が無い」「放射能検査で入荷までに時間がかかり、賞味期限が短くなるのが困る」。スイスの日本食品店経営者が抱える問題は一様だ (swissinfo.ch)

「客足はあるが、品物が無い」「放射能検査で入荷までに時間がかかり、賞味期限が短くなるのが困る」。スイスの日本食品店経営者が抱える問題は一様だ

(swissinfo.ch)

3月11日の震災時に発生した福島第1原発事故を受け、スイスでも欧州連合(EU)にならって敷かれた日本食品の輸入規制が続いている。その影響でスイスの日本食品店は品薄状態にあるものの、客離れはみられないようだ。

スイス連邦内務省保健局(BAG/OFSP)によると、輸入食品の中でこれまで規制以上の放射能が検出されたケースは報告されていない。

 福島原発事故以降、スイスでは日本からの輸入食品に対して原産地証明の添付を義務付けている。福島県など12都県からの輸入品にはさらに日本での放射能検査が課されている。スイスの日本食品店では、費用のかかる放射能検査を避けるため輸入商品を変更するなどしており、品ぞろえに影響が出ている。

ラーメン不足

 ジュネーブとローザンヌで日本食品店「うちとみ」を経営する内富龍也さんは「主に国内需要向けの商品を作っている大手メーカーは、いちいち原産地証明を取って輸出しなくてもやっていけるので、うちのような小口注文のためにわざわざそういう手間を取ることはしてくれない」と嘆く。そのため入荷できなくなった商品は数多い。

 4月は船が震災前に日本を出発していたため普通に入荷できたが、5月から影響が出だした。現在も陳列棚には通常の5~6割の品物が並ぶだけ。この先も、4割は入荷の見込みが無いという。無くて最も困るものは「輸入規制指定地域で作られている、低価格で賞味期限が短い商品」だ。例えばインスタントラーメンなど。

 「インスタントラーメンの製造地は多くが東北。工場が被災してずっと入荷できなかった」と西浜倩子(よしこ)さんも同じ悩みを打ち明ける。ほかの場所に移転した工場が稼働を始めたことなどから、12月半ばにようやく少量が手に入った。西浜さんはチューリヒ市内で30年前から日本食品店「西」を営業している。これまで入荷していた、よく知られているブランド商品を取り寄せられなくなり、九州や大阪などから別の商品を仕入れて急場をしのいでいるそうだ。

 昨今はスイスのスーパーにも日本の麺類が並んでいるが、これらはヨーロッパなどで現地生産されたもの。味付けも麺も日本で作られているものとは異なり、「似て非なるもの」だとジュネーブの内富さんは言う。「お客さんの9割は日本から輸入したオリジナル商品を求めている。現地生産品を日本食品店に置くのは抵抗がある」とこだわりを見せる。「西」の店頭に置かれている麺類もやはりすべて日本からの輸入品だ。

 一方、食品には原材料が外国産というものも多く、純国産以外は原産地証明が取りにくいことも輸入量の減少に拍車をかけている。「このような事件が起こり、日本ではいかに不透明な食品が出回っているかが浮き彫りになった」と内富さんは言う。

汚染基準を上回る食品はなし

 連邦保健局は3月28日から12月9日の間に抜き打ちで合計49回、輸入日本食品の放射能検査を行った。これまで基準を超える放射能が検出されたことはなく、最高値はヨウ素131が海苔の2.2ベクレル/キログラム、セシウム134は緑茶の5.04ベクレル/キログラム、セシウム137も緑茶の6.15ベクレル/キログラムが記録された。

 当局がこれまで検査をしたのは、主に海苔、緑茶、米菓子、麺類など。10月末からはラーメンの検査が目立つ。広報担当官のミヒャエル・ベーア氏によると、これらの検査は今後も当分の間続けられる。

 福島原発事故の直後には保険局によく問い合わせが入ったが、今ではそれも収まった。別の広報担当官エヴァ・ヴァン・ベーク氏によると、「日本から輸入された食品を食べても問題はないか」という質問が最も多かったという。特に関心が高かったのはお茶だった。また、放射能で汚染された食品がスイスの市場に出回らないようにするためにどんな対策を取っているかという質問も多く寄せられた。放射線量がどの程度かという疑問を持った人も多かったようだ。

賞味期限まで残り10日

 このような輸入規制措置で義務付けられている書類の準備や、船便が着くヨーロッパの港で行われる放射能検査に、これまで必要なかった時間が余分にかかることになった。そのため商品の到着が遅れ、賞味期限が1カ月ほど短くなってしまう。「入荷した時点でもうわずか10日しか賞味期限が残っていないこともある」とチューリヒの西浜さんは窮状を訴える。ジュネーブでも状況は同じだ。

 入荷は以前よりいくらかスムーズになったものの、「西」の陳列棚には、並べる商品がない空のスペースも見られる。品数が減り、売り上げも落ちた。しかし、客足に大きな変化はみられない。「ありがたいことに、店が町の中心にあるわけでもないのに、お客さんは来てくださる」と西浜さんの顔に笑みが浮かぶ。内富さんも「客足は変わらない」と言う。

海は全部つながっている

 内富さんは食品店のほかにレストランも経営しているが、「常連客は離れていない」と判断する。「だが、日本食をまだ知らない人は食べようとしないかもしれない。全体ではその1~2割分が減少している」

 一方、ベルンで「歌舞伎」や「田中」など手広く日本食レストランを経営する田中伸二さんは「原発事故の影響は大きかった」とため息を漏らす。各店舗の売り上げは2割から3割落ち込んだ。

 「毎日のように来てくれていたスイス人の得意客で、事故後ぱったりと来なくなった人もいる。海は全部つながっているから、どこで捕れた魚も同じだ、と」

 だが、売り上げ減少の原因はほかにもある。今年の春は好天気続きだったため、屋外で食事を取る人が多かった。さらに、ユーロ安から経済的な不安感が増大し、それとともに外食を控える人が増えた。「3重ショックです」と田中さんは肩を落とす。

 夏は、放射能の危険性について尋ねる人もいた。また、これまで緑茶を注文していたのにジャスミンティに切り替えるという人も目立った。特に高齢者に根強い不安感が残っているようだと田中さんは言う。

 それでも売り上げは10月ごろから次第に持ち直し、現在は去年並みまで戻っている。しかし、「来年はまた一からやり直さなければならない、という思いが強い」と、田中さんの口から決意が漏れた。

食品におけるスイスの放射能基準 Bg/ベクレル

乳幼児:ストロンチウム90:75Bq/kg、ヨウ素131:100Bq/kg、プルトニウム239:1Bq/kg、セシウム134、137:200Bq/kg

牛乳および乳製品:ストロンチウム90:125Bq/kg、ヨウ素131:300Bq/kg、プルトニウム239:1Bq/kg、セシウム134、137:200Bq/kg

その他、液状食品以外の食品:ストロンチウム90:750Bq/kg、ヨウ素131:2000Bq/kg、プルトニウム239:10Bq/kg、セシウム134、137:500Bq/kg

液状食品:ストロンチウム90:125Bq/kg、ヨウ素131:300Bq/kg、プルトニウム239:1Bq/kg、セシウム134、137:200Bq/kg

日本からの食品関連輸入状況

2010年1月~12月:合計約1140t、約1740万フラン(約14億6000万円)。

うち加工食品および飼料・食品原材料などが約1118t、約1660万フラン(約13億9000万円)。

生魚、植物などが約22t、約80万フラン(約6700万円)。

2011年1月~10月:合計約947t、約2141万フラン(約18億円)。

うち加工食品および飼料・食品原材料などが約909t、約2100フラン(約17億6000万円)。

生魚、植物などが約38t、約41万フラン(約3400万円)。

現在、食品・飼料に輸入規制がかかっている県

福島、群馬、茨城、栃木、宮城、長野、山梨、埼玉、東京、千葉、神奈川、静岡

swissinfo.ch



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