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日本・スイス経済連携協定発効から1年、大きく前進 !


里信邦子 ( さとのぶ くにこ)


FTEPA発効後の2009年10月7日に、東京大学の情報・ロボット工学研究所を訪ねたドリス・ロイタルト前経済相 (Keystone)

FTEPA発効後の2009年10月7日に、東京大学の情報・ロボット工学研究所を訪ねたドリス・ロイタルト前経済相

(Keystone)

「過去一年間でビジネス環境整備が花開くように一挙に、大きく前進 した」と日本貿易振興機構 ( ジェトロ) ジュネーブ事務所長、渡辺道明氏は語った。

昨年9月1 日スイス経済連携協定  ( FTEPA ) が発効して以来、日本からスイスへの輸出額増加などの成果もあったが、「何と言ってもこの協定がある種呼び水となって、社会保障協定などの交渉が進んで署名に至り、両国間のビジネス環境整備が進展したことも大きい」と、在スイス日本大使館の経済担当、鈴木崇文一等書記官も同じ意見を持つ。

両国が進出の足掛かりに

 科学技術やエネルギー政策、マクロ経済の考え方、さらに山間部が多く、農地が狭いなど類似点が多いスイスと日本。この両国が結んだ経済連携協定は、スイスにとっては2国間で初めてアジアの国と、日本にとっても初めて欧米諸国と結んだ協定だった。

 「これによってスイスは日本をアジア進出の足掛かりに、日本はスイスを欧州進出への足掛かりにすることもできる。またこの初めての経験はお互いにとって非常に重要な意味を持つものだ」

 と鈴木氏は説明する。FTEPAが成功裏に発効したことで、両国が属する地域内のほかの国と同様の交渉を進める機運が高まり、また、両国の地域差を超え協調できた経験から、今後状況は違うものの、例えば日本は欧州連合 (  EU ) と、スイスは中国やインドのようなアジアの国と協定を結ぶための交渉基盤が固められたからだ。

 

 協定の主な項目の一つである関税では、鉱工業品と農林水産品 ( 清酒、味噌、長いもなど) の関税即時撤廃や段階的な削減などのお陰か、協定発効前の年に比べこの一年で日本からスイスへの全輸出額は32% 増加。「これは一つの成果と言ってよいと思う」と鈴木氏は言う。

 また雇用の面でも、スイスがほかの国と結んでいる「ヤング・プロフェッショナル制度」を協定締結後に日本にも適用。これは学校卒業後の技能のある若者が18カ月間会社などで働きながら力を磨き語学も習得するというプログラムだ。鈴木氏によれば、建築分野などですでに10人前後の若者がこの制度を使いスイスで働いているという。

滞在許可証の問題

 さらに、人の移動の分野において、スイスは企業内転勤者及びほかの重要な職務を有する日本人の滞在許可証の人数制限を廃止した。

 従って要職に就く日本人に滞在許可証の人数制限はないはずだが、

 「ある日本の金融機関の重要なポストにある人が、昨年は『滞在許可証B』だったのが、今年は『短期滞在許可証L』に格下げされた」

 という例を挙げ、渡辺氏は結局この「重要な職務を有する」という表現の解釈に課題があると指摘する。

 そして、スイス政府の企業誘致を行いたいという意向と、移民を担当する司法警察省移民局 ( BFM/ODM ) などとの連携がより強化されればよいのだがと話す。

 実際、滞在許可証を発行する州の移民管理局がFTEPAの存在を知らないということもあったと言い、

  「企業内転勤でない場合、そもそもスイスの会社が日本人を雇うのは大変なことだ。日本のレストランでさえ板前さんを日本から連れてくるのに苦労するという状況がある」

 と付け加える。

 結局、今後のFTEPAの一つの課題は日本人がスイスで、またスイス人が日本で働く滞在許可証の柔軟な発効にあるようだ。

「ヤング・プロフェッショナル制度は若い人材交流に画期的な制度。一方、企業内転勤にも、若い人材の滞在許可証などに更なる配慮がほしい」

 と渡辺氏は望む。

 現在、FTEPA 締結後1年の活用状況調査をまとめている、チューリヒ大学のツィルトナー氏も「滞在許可証の発効が一つの課題だ」とコメントを寄せている。

日本企業の進出には目を見張るものがある

 しかし、こうした雇用面での問題にもかかわらず、ここ1、2年の日本企業の進出には目を見張るものがあると渡辺氏は言う。ヴォー州でサンスターが昨年本社ビルを竣工し、資生堂がパリの子会社を今年1月ジュネーブに設立。連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) のサイエンス・パークにロボットの精密機械製造の並木精密宝石がオープン。チューリヒ州では、M&A (合弁と買収)で三菱樹脂がスイスの Quadrant社を統合した。

  

 スイス側も既に日本に拠点を持つ大手のネスレ、ABBなどが需要のさらなる拡大を狙い、また経済連携協定締結後は若いスイス人から、ベンチャー企業の日本進出を探る問い合わせが多く来ているという。

 「スイス側からの日本への関心はとにかく高まった。中国の巨大市場はあるが、日本は品質の高いものを買ってくれる市場として魅力があり、また、日本の高い質の中小企業などとM&Aをやりたくてしょうがないのだ」

 と渡辺氏は付け加える。

経済連携協定が起爆剤

 過去一年間を総括し「ビジネス環境整備が一挙に進んだ」と渡辺氏は言う。協定締結が弾みとなって、その前からすでにあった交渉が一気に花開いたからだ。

 今年5月には日・スイス租税条約改正議定書が署名され、発効すれば投資所得 ( 配当、利子、使用料 ) に対する課税の限度税率が引き下げられ、両国の投資・経済交流が一層高まる。また10月に署名された日・スイス社会保障協定では、発効すれば、例えば日本人がスイスに派遣された際、それが5年以内であれば年金は日本だけに支払えばよく、2重払いの問題が解消される。こうしたビジネス環境の整備は、日本の企業進出において非常に大きい。

 「これだけでも凄いことだが、今後ほかの協定が整備されればもっと素晴らしいことになる」と渡辺氏。また鈴木氏も

 「FTEPAが起爆剤となって、例えばすでに発効済みの日・スイス科学技術協力協定のように、両国が関心を有し、かつ強みを持つ専門分野で今後協力できるような法的基盤の協議を一層進めることが望まれてきている」

 と、FTEPAの効果を高く評価する。

日本・スイス経済連携協定 ( FTEPA )

当時の安倍晋三総理大臣とミシュリン・カルミ・レ大統領との間で、2007年1月に交わされた交渉開始の合意に沿って、同年5月に第1回交渉を東京でスタートさせた。

2008年9月に第8回合意の結果を受け大筋合意。2009年2月に署名し、2009年9月に発効した。日本にとっては初めて欧州の国と結んだ協定。

物品貿易について、往復貿易額の99%以上を占める物品の関税を10年以内に撤廃し、
原産地証明制度については、日本では初の認定輸出業者による自己証明制度を導入した。

サービス貿易、投資、知的財産などの分野でも、高いレベルの成果を発揮し、さらに、人の移動ではビジネスを目的に改善が行われた。企業内転勤者及びほかの重要な職務を有する日本人の滞在許可証において、スイスは人数制限を廃止した。

( 出典 : JETROジュネーブ事務所の資料 )

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