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ショーラーさんと愛犬ジャニーの息はピタリと合っている (swissinfo.ch)

ショーラーさんと愛犬ジャニーの息はピタリと合っている

(swissinfo.ch)

鋭い犬の鳴き声がスイスの連邦議事堂前広場に響き渡る。スイス救助犬協会 ( Redog ) のデモンストレーションだ。

実は、この犬たちが東日本大震災後直ちに日本入りし、3月14日から宮城県南三陸町で救助活動を行った。チームの総指揮者リンダ・ホルニスベルガーさん ( 50 ) は海外の救助犬活動を「人は絶望しているとき、海外から駆けつけてくれると1人ではないと感じられる。それが大切だ」と語る。

スイス連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) は、その設立50周年に5月24日から27日にかけ、多岐にわたる活動を連邦議事堂前広場で展示した。同局に協力するスイス救助犬協会も救助の様子を公開。この機会にホルニスベルガー さん、隊員の1人で女性のガビ・ショーラーさん ( 40 ) 、救助隊の食糧や安全を確保するバックアップリーダーのウルス・ラッパーさん ( 39 ) に南三陸町での経験を振り返ってもらった。

私は残りたかった

 「犬は凍りついた土の上でも平気で動き回ったが、私の方が何度も滑りそうになり途中で犬についていけなくなった。寒さに凍え、大変な作業だった」

 と語るのは、日本が初の海外救助活動の地になったショーラーさん。愛犬のジャニーは8歳。つやつやとした長い黒毛と優しそうな目を持つラブラドール犬だ。

 作業を開始した2日目の朝、起きると雪が10センチメートル積もっていた。「広大な地域にわたり、家が跡形もなく崩れ、がれきと泥が一緒になりその上に雪が降っていた。その膨大な空虚さに唖然とした」

 夜明けとともに起き昼の休憩なしで夕方まで作業。暗くなると足元が危なくなるため日のあるうちに最大限に捜索する。疲れ果ててテントに戻るとそこも5度の寒さ。結局、こうした悪条件下で集中作業を続けたにもかかわらず、1人も救助できなかった。それでももっと捜索を続けたかったと言う。

 「総指揮者が救助隊にとっても危険になってきたので1週間で捜索を打ち切ることになると言った。それでも私は残りたかった。残って作業を続けたかった。ジャニーの調子も良かったし」

徹底的に訓練された犬たち

 スイス連邦議事堂前の広場では、がれきの山を巧みに乗り越え1匹の犬が穴の所で大きく吠え飼い主に人の存在を知らせている。2匹目も同じ穴の所で吠える。これで、この穴の中に人が居るとほぼ確認される。次いで、3匹目の小型の犬が手足が自由になる服を着せられ、紐で穴の中につり降ろされる。

 この3番目の犬が吠えたところで、今度は2人の男性が先端にカメラを取り付けた長い棒を穴に差し入れ、一方でモニターで内部の様子を確認。確かに人がモニターに映っている。

 以上はデモンストレーションだが、宮城県南三陸町でも全く同じ作業が行われた。3匹の犬と3人の飼い主に、指揮を取るチーフ。2人のカメラ担当者。以上6人と3匹が1チームで、計3チームが捜査にあたった ( ほかのスタッフを入れ計23人が日本入りした )。

 デモンストレーションの犬たちは、よく訓練されており、がれきの山を怖がらない上、特別な服を着せられてもおとなしい。人を発見しても興奮せず、飼い主の指示に従い直ちにスタート地点に戻り待機する。

 このように被災地で捜索できるようになるには6、7年の訓練が必要。最終の認可試験を通ると、飼い主はリュックサックにパスポート、食糧、作業服などを詰め、いつでも出発できるように用意していなくてはならない。

ボランティアは自然なこと

 花屋を経営するショーラーさんの場合、救助犬チームに入ったのは人道援助に燃えていたからではない。友人がジャニーと彼女がうまくいかない様子を見て「一緒に何か訓練をやれば」と薦めてくれたからだ。

 訓練を続けるうち、ジャニーとショーラーさんの関係は見違えるように良くなったと微笑む。しかし、なぜ週末ごとの激しい訓練を7年も続け、今回仕事を休んでまでボランティアで救助に行ったのかとの問いには

 「人道援助の大切さは、訓練の中で徐々に学んでいった。命を失う危険性もあるが、その覚悟も訓練を通じて獲得していった。覚悟はできている。日本の経験は大変だったが、これからも続けていきたい」

 ときっぱりとした答えが戻ってくる。それに日本で家族を探す人たちから何度もお礼を言われたことが心に残る。

 そして、今回救助犬チームをバックアップしたスイス人道援助協会 ( Swiss Humanitarian Aid ) のメンバー、ラッパーさん。食料を用意し、基地のテントで通信技師、医師、放射能専門家を指揮した。職業は水力発電技師。上司に無給休暇を申請して日本に出発した。過去トルコ、パキスタンなどに行った経験も持つ。

 「なぜ、人道援助を身の危険を冒してまで、ボランティアでやるのかと自分に尋ねたことはない。スイスは国際赤十字委員会発祥の地。人道援助はスイスの伝統であり、文化だ。自然にこの活動に入った」

 と話す。

 ほかの地域と日本で、特に違ったのは、

 「私たちは援助に行っているのに、通訳や日本政府のコーディネーターが気を使ってくれ、かえってこっちが助けられているような気がしたことだ。日本人の丁寧さと親切さには感動した」

そして日本での総指揮者、ホルニスベルガーさん

 いかにも総指揮者らしくテキパキとした女性の獣医ホルニスベルガーさんは、「現地では疲れを感じないものだ。疲れはいつもスイスに戻ったときに出る」と言う。

 ただ、現地を去るときふと頭をよぎる思い出のようなものがいつもある。日本の場合は二つあった。一つは

 「津波で全壊した地域で3人の男性を見た。それぞれがビニール袋を下げて肩を落として歩いていた。残ったのは袋の中身だけで、それ以外は全てを失ったのだろう。家族や友人もさえも。私には、全てが安全にスイスに残っている。その絶対なる違いが心を打った」

 もう一つは、東京テレビが救助活動を撮影したときのことだ。

 「なぜこんなにも遠くから助けに来てくれたのかと尋ねられた。家族や友人を失う悲しみや安否を気遣う気持ちは世界中同じだからだと答えたら、記者の目から涙が溢れた。そのとき日本人が抱えている苦しみが伝わってきた。日本人と繋がった気がした。みんなつらいときは同じなのだと」

 こう語るホルニスベルガーさんの瞳にも涙が滲む。

 総指揮者としては、 

「日本では1人も救助できなかったが、できる限りのことはやった。捜索活動としてはみんな最大限にやってくれて高く評価したい」

 そして、海外救助活動の意味をこう語る。

 「もしスイスで何か起きた場合でも、世界から救助に駆けつけてくれたらうれしい。人は被災して絶望的な状況にあると、なぜか誰も助けに来てくれないと思いがちだ。そんなとき、外国から駆けつけてくれると、この地球上で1人ではなかったのだと感じられる。それがとても大切だから」 

スイス連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC )

今年設立50周年を迎えた外務省の機関。長期的な海外での開発援助のほか、短期的なもの、さらに緊急援助も行う。

緊急援助では、同局がコーディネーターとなって、航空会社のスイス インターナショナルエアラインズ ( Swiss International Airlines ) 、スイス人道援助 ( Swiss Humanitarian Aid  ) 、スイス軍、さらにスイス救助犬協会 ( Redog ) など八つの機関が共同で被災地への救助活動を展開する。

スイス救助犬協会 ( Redog )

1971年に創設された。

現在メンバーは650人。

活動を行っている人とメンバーとして協会をサポートする人からなる。

すぐ救助に出発できる犬と人のチーム45組。

地震などの災害に限らず、山の遭難にも捜索に協力する。

以上二つは捜索が異なるため、初めから二つに犬の訓練を分ける。

地震に関しては、最近ではトルコ、ギリシャ、インドネシア、日本などに出動した。

swissinfo.ch



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