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2011年総選挙 第1党の国民党は大敗北

12月5日から連邦議会冬の会期が始まる。それを楽しみにする新議員もいれば、会議場を恋しく思う元議員もいる Keystone

11月27日の選挙で、新しい全州議会(上院)議員がほぼ出そろった。第1党の右派国民党(SVP/UDC)は10月23日の総選挙ですでに支持率低下が明白になったが、今回さらに大物政治家の落選が目立った。

10月の総選挙で候補者が絶対多数を得られず、全州議会の議員枠が埋まらなかった州では次々に2回目の選挙が実施された。

 27日の総選挙で大きく注目されたのは、チューリヒ、ザンクトガレン、アールガウなどの大きな州。それぞれ国民党から名の知られた候補者が出ていた。

国民党の連敗

 チューリヒでは、2003年から2007年まで連邦大臣を務め、陰の権力者として今も党内での影響力を保持しているクリストフ・ブロッハー氏が出馬。しかし、予想通り自由緑の党(GLP/PVL)と急進民主党(FDP/PLR)の現全州議会議員の2人が再選を果たした。

 ザンクトガレン州では国民党首のトーニ・ブルンナー氏が立候補。2議席のうち1議席はすでに急進民主党が確保しており、残る1議席を社会民主党(SP/PS)の労働組合長パウル・レヒシュタイナー氏と争った。しかし、ブルンナー氏は僅差で敗退。ザンクトガレンはもともと中道派が強い州だ。レヒシュタイナー氏のチャンスは少ないと予想されていたが、「よい給料とよい年金を」をモットーに州民の心をつかんだ。

 アールガウ州で全州議会議員のポストを狙った国民党員は、運送会社経営のウルリヒ・ギーツェンダンナー氏。1議席は議員一の美女といわれる社会民主党のパスカル・ブルーデラー氏が10月に確保済みだ。しかし、残りの1議席は急進民主党のベテラン議員クリスティーネ・エッガーセギ氏の手に渡り、国民党はこれまで16年間全州議会へ代表を送っていたアールガウ州でも敗北を喫した。

 議員一の美男は国民党にいる。リチャード・ギヤ似の副党首アドリアン・アムシュトゥッツ氏だ。ベルン州の代表として再選を目指したが、20日に行われた選挙では国民党から離脱した市民民主党(BDP/PBD)と社会民主党が勝利を収めた。

 一方、国民党が砦を固めたのは保守的なシュヴィーツ州。20年間シュヴィーツの全州議員を務めてきたキリスト教民主党(CVP/PDC)のブルーノ・フリック氏が落選。国民党が代わって2議席を獲得した。

 全州議会議員がまだ出そろっていないのはソロトゥルン州のみ。12月4日に2回目の選挙が行われる予定だ。

勝者は社会民主党

 全46議席の全州議会は伝統的に中道派が強い。急進民主党もキリスト教民主党も今回の選挙で議席を失ったが、それでも合わせて24議席を得る見込みだ。自由緑の党や市民民主党も含めると、中道派は来期も半数以上を占める。

 今回の全州議会選挙で躍進したのは社会民主党で、前期比3議席の増加となった。キリスト教民主党の12議席、急進民主党の11議席に追いつく勢いだ。

 国民議会に続き、全州議会の制覇も狙った国民党は逆に2議席を失い、現在5議席に甘んじる。今回の大敗北をめぐり、党内では路線変更をめぐって議論が起こっている。

 12月14日には閣僚選挙が行われる予定だ。国民党は第1党として2人目の閣僚を立てたい意向だが、今回の敗北がこの選挙に大きな影響を与えることは間違いない。

キリスト教民主党(CVP/PDC)

12議席(-2)

急進民主党(FDP/PLR) 

11議席(-1)

社会民主党(SP/PS) 

11議席(+3)

国民党(SVP/UDC) 

5議席(-2)

緑の党(GPS/Les Verts) 

2議席(±0)

自由緑の党(GLP/PVL) 

2議席(±0)

市民民主党(BDP/PBD) 

1議席(±0)

無所属 

1議席(+1)

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