一般市民の違法コピー商品と戦闘開始

スイスの時計メーカーにとって偽造や違法コピーとの戦いは高くつくビジネスだ

(Keystone)

アルバニア製のロレックスや、北京で二束三文で売買されているエルメスのバッグなど、そうした商品のスイスへの持ち込みが厳しくなった。

7月1日から、偽造品や違法コピー商品の密輸出入およびスイス国内の通過は、このほど強化された連邦特許保護法の対象となる。

一般観光客も対象に

 「7月1日から違法コピー商品が出回ることは無くなるはずです」
連邦知的所有権機関 ( IGE ) のジェネラル・ディレクター代理のフェリックス・アドール氏は語った。この問題でスイス経済は年間約20億フラン ( 約2083億円 ) の損失を被っているが、今回の規制強化によって、スイスは欧州連合の近隣諸国と同様の基盤に立つことになる。

 議会による今回の連邦特許保護法の改正に従い、違法コピー商品を身につけてスイスに入国する一般観光客、そしてスイス国内を通過する商品も国境警備員の検査の対象になる。

 この措置は、商品として持ち込まれた偽造品に限り、没収・破壊することを連邦税関局 ( EZV/AFD ) に許可する既存の法律を拡大したものだ。

 7月1日の朝、フリブール州 ( Fribourg ) の税関当局は、2万8427個の偽造時計と4130枚の海賊版DVDをデモンストレーションのために破壊した。

ニセモノの疑い

 「違法コピー商品を没収するにはニセモノの疑いがあるという容疑だけで十分です」
 連邦税関局のカリン・メルキ氏は述べた。

 違法に模倣品を作ることを取締まる改正条項の施行は、一般人に対する強力な意識向上キャンペーンに続いて行われるとアドール氏は語る。

 スイス消費者保護協会 ( The Consumer Protection Association ) は、違法コピー商品問題の存在を認めるが、改正条項について誰も知らないと言う。同協会は、改正条項の対象が拡大されたことについての宣伝がもっと行われることを期待していた。

 「この法律は一般人を犯罪者にしてしまいます。お土産を買ったら、ニセモノだったという人々をターゲットにしているのです。旅行代理店や税関で、もっと情報を提供するべきです。外国に行き、そのような品物を持ち帰った人々は、何が起こり得るかを知る必要があります。そのためには、もっとたくさんの情報が必要なのです」
 と同協会の広報担当者サラ・シュタルダー氏は語った。

 チューリヒに基盤を置く「grundrechte.ch」の弁護士、ヴィクトール・ギェルフィー氏は、この法律や税関局の係員の権限一般について行われた小規模な公開討論について記憶しており、
「なぜ税関局が身体検査という過度の権限を持つ必要があるのかわかりません。身体検査をするのならそれ相応の大きな理由がなければなりません。ロレックスのニセモノを探すためという理由だけでは正当化されないと思います」
 と語った。

「重要な第一歩」

 スイス時計協会会長のジャン・ダニエル・パシェ氏にとって、これは重要な第一歩だ。スイスの時計製造業者の約90%を代表する同協会によると、スイス製時計の偽造品が年間4000万個以上も作られている一方、本物は約2100万個しか輸出されていない。

 パシェ氏によると、スイスの時計製造業界は違法コピー商品の取締まりに毎年数百万フラン( 数億円 ) を使っており、各社もまた偽造対策に経費を割いている。
「スイスの有名な時計ブランドすべてのニセモノがつくられています」
 とパシェ氏は述べる。

 また、パシェ氏は、違法コピー商品のほとんどが中国製だが、本物と見分けがつきにくい精巧なニセモノはイタリアやトルコから入ってくると言う。それらの違法コピー商品の値段は20~30ドルから何千ドルと幅広い。

知的所有権

 税関局は、それらの違法コピー商品対策と強力な意識向上キャンペーンが違法コピー商品の需要に打撃を与えることを期待している一方、ドリス・ロイタルト経済相は、中国及びインドとの知的所有権保護の覚書にサインした。

 中国は、違法コピー商品の製造業者の摘発と取締りを行っていると主張している。しかしアドール氏は、中国は需要があるから法に反してもコピー商品が作られると考えており、違法コピー商品の売買や輸出が行われているにもかかわらず、何の措置も取られていないと述べた。

 「新しい法律の導入は、国家の威信のためでもあるのです。スイスから違法コピー商品を一掃したら、中国、インドとの交渉の継続時に良い影響を与えることができるでしょう」
 とアドール氏は述べた。

 また、違法コピーと偽造は、犯罪行為の連鎖の最後尾に位置するという。
「これは資金を稼ぐため、特に違法コピー商品の販売によってマネーロンダリングをする集団犯罪です。違法コピー商品の販売によって得たお金を、武器やドラッグの販売や女性の人身売買などのほかのビジネスで得たお金と交換するのです。違法コピー商品の製造者のほかに利益を得る人間はいません」
 とアドール氏は語った。

swissinfo、ジュスティン・ヘーネ  笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

検査のプロセス

偽造品または違法コピー商品輸入の疑いのある個人には2つの選択肢がある。
まず、所有者の所持している品物が違法コピー商品で、本人がそれを認めた場合、本人は権利放棄書にサインし、その品物を当局による破壊に委ねることで一件落着となる。
または、所有者は、10~20日間の検査プロセスの推進を税関局に要求することができる。
この場合、品物は検査のため著作権または商標権の所有者のもとに提出される。ニセモノと思われる場合には、請求金額が記録される。
この時点で所有者は、物品が違法コピー商品であることを認めることが出来るが、検査料金は負担することになる。
さもなければ、標準的な法的手続きを通して処理される。
製品が本物であれば、所有者へ無料で返却される。

違法コピー商品の製造

2004年の調査から世界経済フォーラムは、違法コピー商品の世界的な市場規模は約4000億ドル ( 約43兆円 ) に相当すると推計する。
2007年にスイスで摘発された20億フラン相当の違法コピー商品の89%が衣服とアクセサリー。コピー商品の77%がアジアから来ている。
「ストップ偽造行為」のキャンペーンによると、時計、衣服、アクセサリー、ソフトウェアのほか、偽造が多い品目は、薬、自動車のパーツ、食品、タバコ、おもちゃ、香水、化粧品、ボディケア製品。



リンク

×