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2016年11月27日の国民投票


原発事故後、日本のエネルギーシフトはどう進んでいるのか?




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稚内メガソーラー発電所。最北での太陽光発電の研究のために06年に建設された。研究期間終了後の現在は稚内市が管理し、1700軒の家庭に供給できる約5000kWの発電を続けている。稚内市は風力発電も推進。環境都市の看板を掲げる (稚内市役所)

稚内メガソーラー発電所。最北での太陽光発電の研究のために06年に建設された。研究期間終了後の現在は稚内市が管理し、1700軒の家庭に供給できる約5000kWの発電を続けている。稚内市は風力発電も推進。環境都市の看板を掲げる

(稚内市役所)

「脱原発」が、今月27日の国民投票でスイス国民に問われる。だが、もともとこのイニチアチブが提案された直接の原因は、福島第一原発の事故だった。では、この事故の当事国であり、原発ゼロが約2年間も続いた日本で今、エネルギーシフトはどう進んでいるのだろうか?また、節電はどこまで行われ、人々のエネルギーに対する考えはどう変わったのだろうか?「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長に電話インタビューした。

 飯田さんは、風力発電が電力供給量の43%を占めるデンマークで、協同組合や自分の庭に風車を建てた農家の人たちが自ら「発電所長」になる、デモクラシーに基づく地域分散型発電を16年前に経験した。

 その後、再生可能エネルギー(以下再エネ)の固定価格買い取り制度を日本で実現させたのも飯田さんだ。「世界、特にドイツや北欧は、地域分散型発電に向かっています。日本でも、地域で電力を発電するほうも電気を売るほうもどんどんできています」と話す。

スイスインフォ: 3・11から今日までの節電の状況を教えてください。

飯田哲也: これまでの5年間、電力供給の30%を担っていた原発の最大の「代替エネルギー」は節電でした。

ただし、2011年と12年以降とでは節電対策がかなり違っていて、11年はまだノウハウがなかったので皆さんかなり「無理な節電」をし、相当にがんばった。とくに大変だったのは、電力量にして500キロワットくらいの比較的大きな事業所に対して政府が、「朝8時~夜8時までの間、前年度よりも15%減らさないと罰金」という、かなり強烈な節電命令を出したのです。

工場を丸ごと止めなくてはならないところもあり、結構大変だった。大きな産業以外のオフイスビルなどでも設備の電気量を知らせる「でんき予報」を電力会社が出し、また少々不便でも照明は消してエレベーターやエスカレーターを止めるということも行われ、とにかくみんな必死でした。

その結果、東電管内で夏のピークで最大電力(自動車にたとえると最大スピードに相当)が10年に6000万キロワットだったのに対し、11年の夏は一気に5000万キロワット、つまりピークを約20%カットしたというのが最初の年の成果です。

11年の冬ころからだんだんとノウハウ的なものが広がり、12年からは罰金を伴う節電命令は取り消され、「節電目指してがんばってくださいね」ということで、産業界も工場止めたら大変なことになるので自家発電を入れ、空調とかちょっとの工夫で「あまり無理しなくても十分に電気は減らせるし、節電はむしろ儲かること」が分かってきた。

東京都内では、商業用ビルの6~7割が昼間主に電気を使っており、そこで都がビルのオーナーの協会と話をし、二つのことで4~5割の電気消費を減らすことに成功したのです。

一つは空調で、約8割のビルが冷房を26~27度に設定していたのを十分に涼しい28度にした。もう一つは照明で、日本のビルは明るすぎて平均1500ルクスだったのを、労働安全法上で十分仕事ができる300ルクスに減らすことにした。それも2本ある蛍光灯を1本抜き3本を1本にするという、お金のかからないシンプルな方法を使い、「初期投資ゼロで電気代が節約できてお金が儲かる」ということが分かり、12年から広がっていったのです。

ただ、去年辺りからは、節電意識が少し薄れてきましたが、一方で太陽光発電が急激に伸び、この春で約3500万キロワット(原発35基分)の太陽光が全国に普及。夏の昼間だと約2000万キロワット程度が稼動している。全国で最大電力が2億キロワットなのでおよそ10%を減らすぐらいの力を夏のピークで発揮できている。

結論として、首都圏の夏のピークにおいては、11年から今年16年の夏までずっと継続して「10年比で20%節電できている」。現在、10%は節電の定着で、残りの10%は太陽光発電で補われているといえます。

スイスインフォ: 日本の 再エネの状況はどうですか?

飯田: 太陽光、風力、バイオマスなどの中では、太陽光が95%を占めていて、圧倒的に増えてきています。16年3月で、全体の電力供給量に占める再エネの割合は14.5%で2011年の約10%から5ポイント増。そのうち水力が8%、太陽光が6%、残りを風力やバイオマスが占めている状況です。

飯田さんが提供してくれた「日本全国の太陽光発電所一覧地図」。これは、東日本大震災後の日本の電力問題を考えるためのサイト「エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)」に掲載されたもの。日本列島が太陽光発電所でほぼ埋め尽くされている (Electrical Japan)

飯田さんが提供してくれた「日本全国の太陽光発電所一覧地図」。これは、東日本大震災後の日本の電力問題を考えるためのサイト「エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)」に掲載されたもの。日本列島が太陽光発電所でほぼ埋め尽くされている

(Electrical Japan)

太陽光発電の最大電力量は、16年3月で約3500万キロワット。来年の3月には4500万キロワットに到達します。ただ、原発1基の最大電力量が100万キロワットなので、今年35基の原発分を発電しているかというとそうではない。利用率からすると原子力利用率が70%ぐらいなのに対し、太陽光は10数%なので、3500万キロワットの太陽光発電は、年間の発電量では原発7基分ぐらいです。

スイスインフォ:  再エネがさらに伸びていく上で、障害は何ですか?

飯田: 大きな電力会社が送電網に関し、非常に独占的で再エネに排他的な運営をするので、そこが最大の問題です。

送電線は高速道路と思っていいわけですが、高速道路会社がこの人は通すがこの人は通さないというような、自分たちの商売だけを優先するということをやっていたら、社会は回りませんよね。それと同じで、送電線を独占する電力会社が自分たちの発電を優遇して、自然エネルギーをできるだけ入れないようにするような使い方をしているのです。

または、「繋いでもいいけど、自然エネルギーを入れるには送電線を補強しなくてはいけないので、その補強費をあなたが払ってくださいね」と言う。それではまるで、高速道路で交通量が増えてきて、一車線を2車線や3車線にしなくてはいけないのは、「新しいドライバーのあなたが走り始めたからだ」と言っているようなものです。そして、発電者に「あなたが費用を持ちなさい。払えないのだったら入って来ないでください」と言うのですね。それが日本の最大の問題です。

スイスインフォ:  すると発電したくなくなりますね。やる気がなくなるというか。

飯田:  やる気というか、経済的にまったく不可能になりますよね。たとえ、やる気があったとしても。そこが問題です。

スイスインフォ: どうすればいいのでしょうか?一つの可能性として日本の電力会社が再エネを作るという転換はあり得ないですか?

飯田: あり得ないです。それはもう歴史の常ですから。古い既得権益の大きな電力会社は、新しい小規模分散型のエネルギーを生理的に毛嫌いしていて、嫌いなどころかじゃまをする。ばかでかい原発とか、石炭火力を作っていていいんだと居座っている人たちは、上から下を見下し「何を風力だ、太陽光だとばかなことを言っているんだ」と思っているわけですよ。

かつてアメリカの通信会社AT&Tがインターネットを毛嫌いしていて、結果として時代の変化に乗り遅れて敗れてしまった例が示すように、自分たちの存在感がなくなりそうなときに、態度を変えて新しい方法をやるということを期待すること自体が、まったく歴史を踏まえない、ナンセンスですよ。

スイスインフォ: では自分で再エネを生産する人は、具体的にどうしているのですか?

飯田: 先ほどの送電線ですが、ゼロに封じ込められていると言いましたが、全てがゼロではないので、厳しいせめぎ合いの中で進んでいく部分もあれば、一方でそもそも送電線を使わないというモデルも普及し始めています。オフグリッドです。これは、日本だけでなく世界的な動きです。電力会社と繋ぐぐらいだったら、ちょっと高くても太陽光でいいやと言う人たちもいるわけですね。

太陽光は今、急激に安くなりバッテリーも急激に安くなっていますから、これはそう先の話ではなくて、多分数年以内にほとんどのところで、太陽光とバッテリーをつけたら、電力会社に繋がないほうが安くなるということが起こるでしょう。

日本みたいに太陽光が高いところでも、もう始まっています。太陽光を工場の屋根に乗っけて、発電したものをめんどうくさい電力会社に逆送流するより全部自家消費したほうが、電気代を安くできるというので導入する。いわゆる自己消費型の企業が今、日本で急激に広がっているんですよね。固定価格買い取り制度がありながら、です。

スイスインフォ: 飯田さんとスタッフの方は、そういう動きをサポートしているのですか?

飯田: オフグリッドであろうとそうでない形であろうと、エネルギーを自然エネルギーに変えるだけではなく、大規模集中型から地域分散型に変わっていく、いわばコミュニティーパワーといいますが、そういう地域の人たちが主体となったエネルギーの作り方を進めることを、非営利の立場でサポートしています。

例えば、新潟で最近新しい知事が生まれましたが、知事の当選を支えた感度のいい市民グループと我々は太陽光発電を作ることや政治的なことを一緒にやってきました。さらに言うと、再エネで太陽光は簡単だし定石だから、そのことよりも幅広い市民の共同のネットワークができることのほうが大事だと思っています。

エネルギーの大転換がすぐそこにまで来ている中、新しい社会の姿をどう作るのかということを具体的に現実的に実践し、それを担える人たちも増やしておかないといけないのです。

我々は、「環境エネルギー政策研究所」と名乗ってはいますが、現実やっている仕事は、社会のチェンジメーカーだし、新しいイノベーションプラットホームというか、新しい未来の中で通用するビジネスモデルとか、社会モデルとか、法律とか、そういうものをちゃんと作ろうというのが、少なくとも私自身が心がけていることです。

飯田哲也所長略歴

1959年、山口県生まれ。

京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。

東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。

原子力産業や原子力安全規制などに従事後、「原子力ムラ」を脱出して北欧での研究活動や非営利活動を経て「ISEP環境エネルギー政策研究所」を設立し現職。

自然エネルギー政策では国内外で第一人者として知られ、先進的かつ現実的な政策提言と積極的な活動や発言により、日本政府や東京都など地方自治体のエネルギー政策に大きな影響力を与えている。  

社会イノベータとしても知られ、自然エネルギーの市民出資やグリーン電力のスキームなど、研究と実践と創造を手がけた。政権交代後に、中期目標達成タスクフォース委員、および行政刷新会議の事業仕分け人、環境省中長期ロードマップ委員、規制改革会議グリーンイノベーション分科会委員、環境未来都市委員などを歴任。

著書に「エネルギー進化論」、「エネルギー政策のイノベーション」、「北欧のエネルギーデモクラシー」など多数。

(環境エネルギー政策研究所の経歴から抜粋)

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