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2016年9月25日の国民投票


スイス国民、老齢・遺族年金の増加案を否決




 (Keystone)
(Keystone)

スイスで25日、三つの案件の是非をめぐり国民投票が行われた。老齢・遺族年金の1割増しを求める「AHVプラス」イニシアチブは反対59.4%で否決。環境に配慮しながら持続可能な経済発展を目指す「グリーン経済」イニシアチブも反対63.6%で否決。一方、諜報活動を強化する新法案は賛成65.5%で可決された。

老齢・遺族年金の1割増しにスイス国民は「ノー」

 年金制度を実社会の需要に適応させるべく左派の政党が立ち上げたのが、老齢・遺族年金(AHV/AVS)の1割増しを求める「AHVプラス」イニシアチブだった。

 支持派は、定年退職者は老齢・遺族年金と企業年金によって退職前と同様の生活水準の保障がスイスの憲法で定められているとし、加えて企業年金の受給額が緩やかに下がってきていることから、老齢・遺族年金を1割増やすことの必要性を主張していた。

 また1割増やすことによる財政負担は、給料にかかる老齢・遺族年金保険料率を0.8ポイント引き上げれば済み、それは雇用者と被雇用者が半分ずつ負担することでカバーできると試算。加えて子どもの教育や家族の世話のために仕事を離れることの多い女性にとって老齢・遺族年金は唯一の命綱であり、老齢・遺族年金を確固たるものにすべきだと訴えた。

 一方、国は2020年頃から始まるベビーブーム世代の退職による年金受給者の爆発的な増加を控え、「AHVプラス」は将来的に年金の財政赤字を悪化させると判断。現在、議会で審議中の老齢・遺族年金制度改革案「老齢年金2020」を解決策として提示した。改革案ではスイスの社会保障制度を支える3本の柱のうち第1、第2の柱である老齢・遺族年金と企業年金の制度が見直されるとし、これによって今回のイニシアチブの必要性は無いと判断していた。
 
 投票前に行われた第1回目の世論調査では賛成派が約5割だったものの、投票日が近づくにつれ反対派が賛成派を上回り、結果として59.4%の反対で否決となった。

 同案を推進していた社会民主党のコルラド・パルディーニ下院議員は同イニシアチブが否決されたことを受け、「スイスのイタリア語、フランス語圏では賛成が半数を超えていた。反対派が多かったのはドイツ語圏だ。つまり地域ごとで意見が大きく異なっているが、年金問題がイタリア語・フランス語圏に今後もとどまるとは思っていない」と話した。

グリーン経済イニシアチブは反対6割で否決

 今回の国民投票では、環境に配慮しながら持続可能な経済発展を目指す「グリーン経済」を推進するイニシアチブも投票にかけられた。同イニシアチブを立ち上げた緑の党は「エコロジカル・フットプリント(人間活動が環境に与える負荷を示す値)」においてスイスが非常に高いことを批判し、その値を2050年までに持続可能な水準に下げるよう求めていた。

 具体的には、世界人口に換算した場合に必要となる地球の数を現在の2.8個分から1個分以下に抑えることを目標とした。そのために、製造プロセス、商品、ゴミ、国や地方自治体の購入品目への規制導入、エネルギーや天然資源の消費量削減を目的とした税制改革と予算決め、また国による中期および長期目標の策定や報告書の提出など、スイスの経済モデル改革を軸とした内容を提案していた。
 
 この案に対し政府は、社会生活の維持において天然資源の重要性を認めるものの、イニシアチブが提案する「2050年」という期限内でのグリーン経済の実現は不可能と判断。間接的対案として、1983年に制定された環境法の改正案を連邦議会に提出した。しかし、連邦議会で大多数を占める右派と中道右派はイニシアチブにも対案にも反対の姿勢を示していた。

 国民投票前に世論調査機関gfs.bernが行った世論調査(第2回目)では、賛成が51%を占め、投票日まで結果が不透明だったが、結果的に反対63.6%で否決された。

 同案を推進していたレグラ・リツ下院議員(緑の党)はSRFラジオ放送の取材に対し「スイスはエコロジカルな経済発展をする国として、世界のトップに立つチャンスを逃した」と話した。

諜報活動強化に関する新法は賛成多数で可決

 今回の国民投票では二つのイニシアチブ以外に、連邦議会が可決した諜報活動強化新法の是非が問われた。

 テロ防止、スパイ行為の防止、さらに兵器の拡散防止を目的として作成された諜報活動強化に関する新法は2015年秋に連邦議会を通過。新法が可決されれば、連邦情報機関はテロを起こす可能性のある人物を特定するため、電話の盗聴や個人メールへのアクセス、パソコンへの侵入が可能になる。

 これを支持する右派・中道右派はスイスを取り巻くすべての隣国がテロのリスクに備えて新しく法律を制定していることから、そのような新法を持たないスイスはテロの温床になってしまうと主張した。

 一方、レファレンダムを起こした左派を中心とした反対派は、「新法で認められるような監視の仕方は、効果が無い上に人権侵害にあたる」と反論。監視をさらに強化しても、安全性が高まるわけではないと主張した。加えて冷戦時代にスイスの情報機関が大量の市民の監視を行った事実を挙げ、自己規制が難しい諜報活動に歯止めがかからなくなると危惧していた。

 投票日前に2回にわたって行われた世論調査では、賛成派が反対派を上回っていたものの、1回目と2回目の調査から反対派のポイントが大きく伸びを見せたことから結果は不透明となっていたが、最終的に賛成65.5%で可決となった。

 「同新法は2017年9月から施行する予定だ。それまでに諜報活動を強化するための体制を整える」とギー・パルムラン防衛相は述べた。コリーナ・アイヒェンベルガー下院議員(急進民主党)はスイス通信の取材に対し「この新法の制定は若干遅れ気味であったが、(今回施行されれば)スイスの安全性を高めることになる」と述べた。

スイス初 ヌーシャテル州の外国人に被選挙権を

 また今回、国民投票と同時に行われた州レベルの住民投票で、可決されればスイス初のケースとなる案件もあった。

 ヌーシャテル州では、外国人が州議会の議席を得たり、州政府の閣僚に選出されたりできる被選挙権を与えるべきかどうかが問われた。投票結果は54%の反対で否決となった。

 今回の国民投票では、投票率は平均43%だった。

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