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ダボス会議2016


世界経済フォーラム、第4次産業革命が議題に




ウエイターさんを呼んだら、現れたのはロボット。第4次産業革命が議題のダボス会議らしい (Reuters)

ウエイターさんを呼んだら、現れたのはロボット。第4次産業革命が議題のダボス会議らしい

(Reuters)

人工知能ロボットや小型無人機、3Dプリンター、生産ラインのスマート化。いまや時代は、第4次産業革命(インダストリー4.0)の真っただ中にある。今日20日に開幕する世界経済フォーラム(WEF)主催のダボス会議でも、この第4次産業革命の可能性やそれが社会にもたらす影響が討論の中心となる。スイスは、この産業革命にどう対処していくのだろうか?

 第4次産業革命によって職場は劇的に変化する。その結果、雇用増となるのか、または失業者を生み出すのか?先進工業国と途上国の経済格差、貧富の差が縮まるのか?スイス企業にとっては、この技術革命はスイスフラン高の緩和につながるのか?

 ダボス会議に向け、同フォーラム創設者のクラウス・シュワブ氏は世界の指導者に、来る変革に備えて政策を修正するよう呼びかけ、次のように述べた。「革命は津波のように我々を襲い、全てのシステムを一変させる。しかし、我々はまだ、十分に準備ができていない」

 シュワブ氏は、さらにこう続けた。「このままでは(オートメーション化などによって)中間層が締め出された社会を作り出してしまうことになる。それは絶対に避けなければならない」

 スイスもまた、インダストリー4.0の可能性と問題点を模索している。インダストリー4.0はインターネットの誕生以降で最大の混乱を、経済と社会にもたらすとみなされているからだ。

 スイスでは、巨大な産業界や金融業界とニッチ産業分野の中小企業とのミックスで、この産業革命を推進している。この中小企業とは、連邦工科大学などの専門機関が開発した研究と要求されている新しい技術とを連携させている企業だ。

スイスにとってのチャンス

 インダストリー4.0は、スイスフラン高に悩まされてきた国内の製造輸出業者や、コストのかさむ規制改革に直面している銀行にとっては最適なカンフル剤といえる。インダストリー4.0による生産ラインのスマート化、資産管理システムのデジタル化は、工場をコストの安い東ヨーロッパに移転させたり、全てを閉鎖したりするよりもベターな方法だろう。

 問題は、それをどう実現するかだ。特に中小企業にとっては深刻だ。「中小企業(SMEs)が持つ資源は限られている」。製造、電機などの中小企業協会スイスメカニック(swissmechanic)のディレクター、オリビエ・ミュラー氏は最近、チューリッヒで開かれたインダストリー4.0に関する会議でこう述べた。「中小企業は、自社の現在の製造方法に関しては多くのノウハウがある。だが、慣れた方法を捨てて、新しい事柄にチャレンジしようとするのは簡単ではない」

 同会議ではまた、インダストリー4.0が圧倒的な技術革新であるがゆえに、戦略を誤ったり、膨大なデータに単に圧倒されてしまったりなどの理由で、企業にマイナスの結果をもたらすこともあると指摘された。

 一方で、ドイツの経営戦略コンサルタント会社大手のローランド・ベルガーは、スイスが欧州でインダストリー4.0を推進する国の一つになるとみている。スイスのイノベーション技術が、世界で常にトップ(少なくとも世界第3位以内)で、価値の高い革新的な製品作りにけているためだ。

 さらに、スイスは2000年以降、「ものづくり」を維持してきた欧州でも数少ない国(経済総生産高の19%が製造業による)であることも要因の一つだという。

 ローランド・ベルガー・スイスのマネージングパートナー、スヴェン・シーペン氏は、スイスインフォに対し「スイスの企業がインダストリー4.0を最大限活用できれば、25年までに150億フラン(約1兆7500億円)の経済効果が生まれる」と推測している。

雇用への脅威

 一方で、インダストリー4.0には、かなりの問題が潜んでいる。ダボス会議では、スイスの銀行には悩みの種であるデータセキュリティーや、「もしロボットが戦争を始めたら」といった、機械の人工知能化がもたらす影響も議論の焦点となる。

 ただ、おそらく一般市民が日常生活の中で抱く疑問は、「スマートロボットや自動カスタマーサービスの時代が来たら、職場はどう変わってしまうのか?」だろう。

 これに対しては、多くの調査研究が、低い技能で十分行われていた職種が廃れていくと予測している。市場調査会社デロイト(Deloitte)は昨年、スイス国内における雇用の半分がオートメーション(自動)化によって失われると予測。管理業務や秘書、農業などを、その例に挙げた。経理やパイロットを対象に入れる調査結果もある。

 スイスの労働組合ウニア(Unia)は小売業、工場勤務、医療分野も例外ではないとみる。Uniaのヴァニア・アレヴァ代表は昨年12月の記者会見で、3Dプリンターが人間と同等の仕事をする時代になれば、人間は必要とされなくなるのではないか、と述べた。同氏は「人の手で行われている仕事は、機械とロボットの連動作業に取って代わられるだろう」と警鐘を鳴らす。

 Uniaはまた、フリーランスや職場に出勤しないで働く人たちが増えることで、従来の労使交渉が弱体化するのではないかと危惧(きぐ)する。

 逆に、インダストリー4.0が過去の産業革命と同様に、雇用を増やすと指摘する声もある。ロボットのデザインやプログラム、ビッグデータを様々な目的に合わせて専門的に分析する人間は必要だからだ。

 前出のローランド・ベルガーのシーペン氏は、「手作業による製造の現場は今後もオートメーション化されていく。手作業は維持できないからだ」と話したうえで、「だが、ヴィンタートゥールのようなスイスの産業都市では、幾つかの製造拠点が閉鎖してずいぶんたつが、雇用水準は高いままだ(15年の失業率は3.3%)」と述べ、雇用への影響はそれほど大きくないとみてはいる。

ダボス会議

46回目となるWEFの年次総会は20~23日、スイス東部ダボスで開かれる。テーマは「第4次産業革命をマスターする」。経済、政治、市民社会、文化、宗教、科学分野から約2500人が参加。英国のキャメロン首相、米国のバイデン副大統領、カナダのトルドー首相、ギリシャのチプラス首相など約40カ国の政府首脳も参加する。

同会議では、テロリズムなど世界の安全保障問題や、昨年末にパリで開かれた国連気候変動会議(COP21)を受けた環境政策などについても討論する。

WEFは1971年、クラウス・シュワブ氏がヨーロッパ経営者フォーラムとして創設。当初は欧州企業が米国の経営手法に追いつくため、問題の解決策を模索したり、人的ネットワークを構築したりすることが目的だった。87年に世界経済フォーラムに改称。主要な国際問題を議論する場に発展した。


(英語からの翻訳・宇田薫 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch

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