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スイス外交政策協会設立50周年 スイスの中立「今や『守り』の姿勢は成り立たない」

各国の国旗を下から見上げた図

グローバル時代では誰もが誰かとつながっている。スイスは世界で最も国際的なつながりが強い国の一つ

(Keystone)

永世中立国、スイス。この国ほど国際的なつながりが強い国はあまりない。外交上のアイデンティティーとも言える中立政策においても、積極的な「攻め」の姿勢が極めて重要だと、設立から50周年を迎えたスイス外交政策協会の新会長、クリスタ・マルクヴァルダー下院議員は語る。

スイスインフォ: スイスの現在の外交課題は何ですか?

クリスタ・マルクヴァルダー: 世界全体が大きく変わろうとしている点だ。例えば旧東欧ブロック諸国では数十年にわたり民主化が進められてきたが、現在では新たに独裁主義の傾向がみられる。米国ではトランプ大統領が、滅茶苦茶とまではいかなくとも不安定な政権運営を行っている。現在の紛争や戦争では非国家主体の介入が増え、代理戦争が起きている。

「今日では国内政治と外交政策を厳密に切り離すことは出来ない。あえて切り離すのは不自然だ」

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スイスインフォ: つまり、スイスは極めて混沌とした世界で状況を見極め、立ち居地を見つけなくてはならないということでしょうか?

マルクヴァルダー: その通り。例えばスイスはジュネーブを国際交渉の場として活用し、紛争当事者を招致することで国際社会に参加できるだろう。だが、スイスは平和貢献だけでなく豊かさの向上にも寄与している。スイス企業は外国への直接投資を盛んに行っており、現地での雇用創出につながっている。また、我が国のデュアルシステムの教育制度はすでに国外で実を結んでおり、スイスの一種の輸出産物となっている。

スイスインフォ: 「最良の外交政策は外交政策を持たないことだ」との考えがスイスには数十年前から根付いています。

マルクヴァルダー: これが的を射たことはないし、過去や現在の事実を誤認している。スイスは世界的にグローバル化が最も進んでいる国の一つだ。そのためスイスにとって積極的な外交政策は極めて重要だ。

スイスインフォ: 「スイスには外交政策に専念する政治家が少ない」とも言われています。

マルクヴァルダー: これは政治制度と関係している。外交政策は多分野にまたがるため、他の政策分野に比べて具体性に欠けるところがある。有権者としては、議員が外交政策に取り組んでも、教育分野、環境問題、特定の交通インフラなどに比べて直接的なメリットが少ないようにみえる。

クリスタ・マルクヴァルダー他のサイトへ氏(42)は2003年から急進民主党所属の国民議会(下院)議員を務める。特に連邦議会の外交政策委員会での活動に力を入れ、2010、11年に同委員会の委員長を務める。米国、英国、ウクライナの議会などと連携を取るなど、二国間関係の強化に注力。15、16年に国民議会(下院)議長を務める。06~14年、スイスの欧州連合(EU)への加盟を目指す「スイス新欧州運動」の代表を務める。

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スイスインフォ: そもそもスイス人は外交問題に関心があるのでしょうか?

マルクヴァルダー: 大いに関心がある。また知っている情報も多い。直接民主制を敷くスイスでは、有権者が外交関連の法案について検討し、その是非を投票で決めることが度々ある。

スイスインフォ: つまりスイスで外交政策の最終決定権を握るのは国民ということですね。だからこそ、イグナツィオ・カシス外相は「外交政策は常に国内政策でもある」とのモットーを掲げています。

マルクヴァルダー: その通り。その理由の一つが、国内政治に関する法案が外交政策と深く関わるようになった点だ。2017年初めに国民投票で否決された法人税改革法案や、連邦内閣が新しく提案する税制改革法案がその例だ。これらの法案は単に国内政策の一案ではなく、世界や欧州で見られる租税政策の動向と直に関わっている。そして二つ目の理由は、外交政策の目標を達成するには国民からの支えが極めて重要な点だ。スイスを外交的に孤立させるような提案が国民発議(イニシアチブ)で出されたとしても、それを国民が否決する限り、私たちは実りある外交政策、経済政策、立地競争力強化策を行うことが出来る。

スイスインフォ: しかしそれでは外交政策が単に国内政治の「副産物」のように考えられませんか?

マルクヴァルダー: 今日では国内政治と外交政策を厳密に切り離すことは出来ない。あえて切り離すのは不自然だ。

クリスタ・マルクヴァルダー下院議員(急進民主党)

クリスタ・マルクヴァルダー下院議員(急進民主党)は、積極的な外交政策はスイスにとって極めて重要と考え、この分野に注力している

(Keystone)

スイスインフォ: 引き続きグローバル化についてお聞きします。スイスが外交に生かせる強みは「国際的なつながり」と言われています。

マルクヴァルダー: スイスが国際的に強くつながっていることは、数字を見れば分かる。例えば約10億フラン(約1120億円)に相当する物やサービスが毎日スイスの国境を通過している。また、スイスは人口比で見た多国籍企業の数が世界最多だ。さらに、スイスは多国間の集まりで積極的な活動を展開している。私は先日、議員視察団と共にニューヨークの国連本部を訪問し、現地のスイス代表と会ったが、その際、彼らが国連総会で主張する予定のスイスの優先事項について一緒に話し合うことが出来た。

スイスインフォ: スイスには他にも外交に生かせる強みがありますか?

マルクヴァルダー: 当然挙げられるのが、現在の解釈における「中立」だ。今日では中立は「守り」の姿勢では成り立たない。むしろ、仲介プロセスや和平交渉を積極的に取り持ち、人権を促進し、擁護するなど「攻め」の姿勢こそが中立だと言える。スイスは利益代表国としても高く評価されていることから、国際社会からの信望が厚く、尊敬もされていることが分かる。さらに、スイスが植民地大国ではなかったこと、大戦の惨禍を免れたこと、攻撃的な外交政策は取っていないこと、いわゆる「隠れた意図」がないこともその理由に挙げられる。

「スイスは堂々とした態度を取るべきだ。交渉は妥協から始めるべきではない。せいぜい妥協が交渉の結果となるべきだ」

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スイスインフォ: スイス・EU関係を部外者の目で見ると、スイスには首尾一貫した外交戦略がないように思えます。

マルクヴァルダー: 対EU戦略は常に最新の動向に適応している。戦略の焦点は実現可能なことに向けられ、理想はあまり重視されない。一方で、スイスの外交政策に関する憲法規定他のサイトへには、スイスの価値観や貧困国に暮らす人々への連帯感が明記されている。また、カシス外相の前職を務めたディディエ・ブルカルテール氏は、2016年から19年までの外交戦略他のサイトへを策定した。

スイスインフォ: スイス外交政策協会は今年で設立50周年を迎え、あなたが代表を引き継ぐことになりました。外交政策には議員としても取り組まれていますが、今後の展望についてどう考えますか?

マルクヴァルダー: 私の考えでは、スイスは国内だけで国の価値観を守るのではなく、パートナー国の前でもそれを擁護すべきだ。そして世界に貢献し、国際社会に参加し、スイスの権利、可能性、チャンスを認識すべきだ。さらに、世界で堂々とした態度を取り、国の魅力をアピールする必要がある。私たちには強みや長所がたくさんあるが、それを隠してはならない。交渉は妥協から始めるべきではない。せいぜい妥協が交渉の結果となるべきだ」

スイス外交政策協会他のサイトへは今年で設立50周年。協会のホームページによると、1968年の設立当初から「開かれたスイス」を目指し活動を展開。

協会はどの政党にも属さず、非営利で運営。スイスの外交政策に対する国民の関心を高め、より多くの人々に理解を深めてもらうことを目標に掲げる。

協会では近年の外交政策に関するテーマについて定期的に催しが開かれている。

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(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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