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ジュネーブの老舗プライベートバンク合併

合併を発表したDarier HentschとLombard Odier swissinfo.ch

スイス最古参のプライベートバンク、Lombard OdierとDaridr Hentsch(共にジュネーブ)が3日合併を発表した。コマーシャルバンクの追撃を受け生存競争の渦中にあるプライベートバンクに、合併の波が襲う。

2行の件は合併と発表されているものの、事実上は規模の小ささから長期的な生き残りが困難となってきたDaridr HentschのLombard Odierによる買収とアナリスト等は見る。合併後の社名はLombard Odier Daridr Hentsch & Cie(LODH)で資産総額1400億スイスフラン、激化する競争を勝ち抜くのに十分な規模と関係者らは言う。スイスのプライベートバンクは過去50年で約100社から12社ほどに減少した。今のところ勝ち組はUBS、クレディスイスなどライバル大手行より優勢だが、将来的には不透明だ。リテールバンキングからの利益の涸渇に伴い、顧客が少なくとも100万スイスフランは投資可能な金を持っている「エリート中のエリート・セクター」プライベートバンキング部門に対する大手行の関心は高まるばかりだ。

小規模プライベートバンクが新事業の開拓に苦心する中、ライバルとの合併の圧力は日々強くなる。今年初めBank Sarasin(バーゼル)は株28%をオランダのRabobankに売却、アナリストらはドイツ銀行による買収への前兆と分析した。金融業者同士の競争激化に加え、ジュネーブのプライベートバンクは、弱いエクイティ・マーケット、オフショア・バンキング・センターの規制強化、ITコスト急騰などにも直面している。プライベートバンキングの問題のカギは、現金の調達にある。プライベートバンキングは顧客のプライベート・パートナーとして、全幅の信頼を背負って資産の保管・管理をする。この閉ざされた構造が、プライベートバンクの成長力やコスト削減を拘束し、市場に現金請求をできなくさせてきた。Lombard Odierや同じく大手プライベートバンクPictetなどは、年金、ミューチュアル・ファンド・マネージメントへの多様化で現金調達問題に対処、成長を支えてきた。これとは対照的に、小規模行はオフショア・バンキング事業での長期低落に直面している。Daridr Hentschのマネージング・パートナー、ジャック・ロシエール氏は「オフショア開発、特に欧州のオフショア開発を積極的に追求している。」と言う。世界的にプライベートバンクに対して活動の透明性を求める圧力が高まっており、欧州連合(EU)と米国は、スイスなどオフショア金融センター取り締まり政策を進めている。EUはオフショア金融センターに、税金回避阻止のためEU加盟国の国民の資産と利息を公開するよう度々要請しているが、スイスは頑強に抵抗している。また米国は、スイスのチェック&バランス・システムに満足していると表明しながらも、オフショア金融センターはテロ資金の送金役と非難する。

スイスのプライベートバンクが管理する資産は約4000億スイスフランで、スイスの総資産額の10%にあたる。うちLombard Odier、Daridr Hentsch他3行のジュネーブ・バンクが3000億スイスフランと、そのほとんどを管理している。
週刊経済紙「CASH」のシャッツ編集長は、「スイスのプライベートバンクはまだ十分な力を持っている。自国内で問題解決でき、外資の力は必要無い。スイスの金融センターにとって、特にジュネーブにとって、ジュネーブ行同士の合併は良かった。」と、2行の合併はプライベートバンキング業界におけるスイスの強さの証明と評価した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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