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スイスの新貫アルプス鉄道計画、建設コスト増で議論再燃

新貫アルプス鉄道計画、建設コスト増で議論再燃 Keystone

総工費1兆円を超えるスイスの新貫アルプス鉄道計画を巡り、膨らむ建設コストをどう抑えるかで議論が再燃している。

同計画は、観光資源でもあるアルプスの自然を保護するために公共交通機関の利用を促す目的でスタートしたが、アルプスを南北に貫通する鉄道トンネルの敷設に新たな負担が生じ、コスト高になるという。工費不足分は最終的に国民の税金で賄うことになるため、当事者間の交渉難航は必至だ。

連邦交通省の調べによると、建設中のトンネルにかかる費用は当初の予定より20億フラン(約1,620億円)以上も不足するという。総工費は158億フラン(約1兆2,800億円)に達することになる。

連邦内閣は「国家」を掲げた同計画の予算不足分について今月にも協議する予定だが、内閣をつくる4大政党からは「追加予算を確保したばかりではないか」と批判の声が上がっている。

世界最長の鉄道トンネル

 今回の鉄道計画が生まれた背景には、スイスの地理的事情が関係している。南北をドイツとイタリアに挟まれるスイスでは、欧州統合を契機に国内を通過する自動車やトラックが増え、排ガスによる環境問題や交通渋滞を緩和する必要があった。

 1999年からスタートした新貫アルプス鉄道計画は、スイス中部から南部にかけてのゴッタルド・トンネルとレッチュベルク・トンネルの建設が柱となっている。特に、ゴッタルドは全長約57キロと世界一長い鉄道のトンネルとなるだけに、同計画の目玉となっている。

 今回の計画が完成すれば、北スイスのバーゼルから伊ミラノまで通常だと乗車時間に5時間以上かかっていたのが3時間45分に、チューリヒからミラノまでは2時間半に短縮されることになる。

 ゴッタルドは2015年をメドに開業を目指しており、掘削工事は現在30%まで進んでいる。一方、レッチュベルクは現在93%まで進んでおり、坑道や換気坑工事も入れると年末には掘削作業が終了する予定。2007年に開通する見通しだ。

 新貫アルプス鉄道計画の総工費は当初、約136億フラン(約1兆1,020億円)と見込まれていたが、政府は昨秋、9億フラン(約730億円)を追加予算として要求していた。

 連邦交通省は、建設コストの見積もりが高くなった理由に、地質的な難しさや、新しい技術の投入などを挙げている。


 スイス国際放送           安達聡子(あだちさとこ)意訳

連邦交通省によると、新貫アルプス鉄道トンネルの工費は当初の予定より20億フラン(約1,620億円)以上不足する。

新貫アルプス鉄道計画の総工費は現在、158億フラン(約1兆2,800億円)に達する見通し。

同計画の総工費は当初、約136億フラン(約1兆1,020億円)と見込まれていた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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