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スイス中銀 銀行ボーナスに意見

スイス国立銀行ロート総裁、銀行のリスクマネジメントに苦言 Keystone

スイス国立銀行のジャンピエール・ロート総裁は、短期的な利益を上げたというだけで銀行員にボーナスを支払う制度をいさめる発言をした。

銀行のボーナス制度をロート総裁は「過度の支払い」と表現し、これを是正しなければならないと発言。長期にわたって問題視された銀行のボーナス制度への中銀としての答えを出した。

 サブプライムローン関連商品により巨額の損失を計上した銀行に対し、経営に慎重に携わることを認識し、実際に機能するリスクマネジメントを行うためのコーポレートガバナンスに対する厳しいチェックや管理を行う必要性が指摘された。

これまでの経験だけでは計り知れない

 スイスの大手のUBS銀行とクレディ・スイス ( Credit Suisse ) がサブプライムローン関連商品で巨額の損失を計上したことから、国内の金融機関における厳しい経営管理の必要性がいわれてきたが、スイス中銀はこれまでこれに関しての発言を避けてきた。ロート氏は定例株主総会の場で初めてこの件に触れ
「たった1国の抵当市場の1商品に限った問題がこのような大きな影響を与えたことに脅威を感じる」
 と語った。

 問題は金融市場がグローバル化したことだけが理由ではないと指摘し
「国際市場で業務を展開する銀行は、近年攻撃されやすくなってきている。攻撃されやすいのは、利益追求に走り、それに伴うリスクを過小評価しているからだ」
 と語った。

 さらに、銀行のリスクを測定するシステムは、「最も多くの情報を持つ専門家」の監視があったにもかかわらず、今回の危機に対処できなかったと指摘し、損失は統計によるモデル計算を大きく上回ったと述べた。
「これまでのモデルでは、複雑な金融商品の動きや最近の銀行が業務する経済環境を完全に把握できなかった」
 と語り、より高度なリスクマネジメントや監視、銀行自身の規制の必要性を訴えた。

向上する余地はある

 「向上する余地はあるし、向上させるべきだ」とロート氏は、銀行の資本強化と流動性と負債の改善の必要性を指摘した。
「国際市場で活躍し、プライベートバンキング業務を行い、手堅い収益を上げ汚点のない信頼を得ているスイスの銀行は、特にその質を向上させるべきである。向上させることが銀行の存在意義だ」
 とも述べた。

 一方スイス経済についてロート氏は「現在も最良」であり、2008年は予想内の不安材料がある程度だと評価した。世界経済が不況にある中、スイスも「無傷」ではいられない。特に原油価格の高騰はインフレ要因であり、生活物価を押し上げると警告した上で、国立銀行の役割はインフレ抑制にあることを再確認した。
「金融業界を襲っている嵐のせいで、われわれの役目である中期的な物価の安定を忘れることのないようにする」
 と語った。

swissinfo、外電

<スイス経済>
3月に発表されたスイス国立銀行のスイス経済見通しによると、今年の国内総生産 ( GDP ) 伸率は1.5~2%と見込まれる。2007年は3.1%だった。
今年のインフレ率は2%とみられ、2009年には1.4%まで低下する見込み。3月のインフレ率はこの10年間で最高の2.6%だった。

スイス国立銀行に登録されている株主は2259人。
このうち63.2%が公共機関で、残りは民間株主。大株主はベルン州 ( 6.63% ) 、ヴォー州 ( 5.4% ) 、チューリヒ州 ( 5.2% )、ザンクトガレン州 ( 3% ) 。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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