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スイス人の心配事

職を失うことが最大の心配事。最も身近な問題に関心が高い。 Keystone

大手銀行のクレディ・スイスの調査によると、スイス人が抱える第1の不安は失業で、第2は医療機関に対する不安だという。個人の生活に直接関わる事柄に対する不安が集中し、難民問題や環境に対する不安などは少ない。                                        

裏切られたと感じる事柄は、経済や政治が最も多かった。直接民主主義の国のスイスでさえ政治に対する信頼も低いことが分かった。以下、スイス人が抱く不安事項を探る。                                       

失業に対する不安、医療コストや医療機関に対する不安、年金が不足するのではないかという不安。スイス人の不安をクレディ・スイスの調査「不安バロメータ」が明るみにした。同調査は1976年から毎年発表されている。今回の調査は、9月29日から10月17日までに1003人の有権者を対象に行った。

失業率が比較的低いスイスで不安を訴える

 11月のスイスの失業率は4.0%。昨年の平均は2.5%だった。本年に入って、確実に上昇しているものの、EU平均で8.0%(9月)、また、5.2%(同)の日本と比較しても、スイスは比較的条件が良い。しかし、スイスは長年にわたって完全雇用を続けてきたことから、失業に対しては敏感らしい。

 クレディ・スイスとGfS調査機関がこのほど発表した「不安バロメータ」調査では、67%の人が失業に対する不安を訴え、18%の人が即急に解決すべき問題と挙げている。昨年、失業に不安も持った人は52%で不安項目の第2位を占めたが、今年になって不安が大きく上昇したことになる。過去3年のトップは医療コストや医療機関に対する不安だったが、今年は第2位に転落した。健康保険は強制加入だが、保険の運営は民間企業にゆだねられており、労働者が100%負担するのが一般的。基本保険料は居住する場所で違うが、月の負担額は250フランから400フラン(2万2千円から3万4千円)と高い上、年々上昇しているため、これを不安とする人は多い。
 一方、移民や難民の受け入れ問題に対する不安は昨年の43%から36%に大幅と縮小した。

環境に対する不安は大幅に減少

 2、3年前までは大きなテーマであったグローバル化、環境汚染問題、ヨーロッパに対する不安などは、大きく減少。EUに対する不安は2000年に45%のピークだったが、本年は15%まで縮小。グローバル化も15%とほとんど問題にされていない。猛暑により氷河が溶け出し、地球の温暖化が大きく取り上げられた今年だったが、環境汚染問題については14%の人が不安を持つのみに留まっている。2001年に27%あったテロへの不安は今回の20の調査項目の中でも最低の6%だった。

裏切られたと感じるもの

 「不安バロメータ」では、スイス人が裏切られたと思う事項についても調査した。経済界に裏切られたと思う人は57%(前年53%)、政界に裏切られたと思う人も53%(同49%)あった。将来についての質問では、向こう12ヶ月もいまと同じ状態であろうと答えた人は、77%あったが、より良くなると答えた人は14%と前年の18%より少なくなり、より悪くなると答えた人は13%(前年8%)と増加した。

 先に国立銀行が発表した来年の予測では、本年第4四半期に景気は転機を迎え、国内総生産の伸率は1.5%強まで見込まれるという。

 しかし、国民はいまだ「悲観時代」の真っ只中にあるという同調査。スイス人が再び将来に対する希望を持てるようになることこそ、重要なポイントのようである。

スイス国際放送 クレディ・スイス ビュルタンNr.6から 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

職を失うこと 67%
健康 63%
年金問題 59%
難民問題 36%
貧乏なることの不安 27%
国家財政の緊迫 22%
社会安全 21%

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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