スイス市民の小型武器所有率は世界で4番目
ジュネーブ高等国際問題研究所 ( HEI ) が発表した2007年版「小型武器実態調査」によると、世界では8億7500万丁の小型武器が出回っており、うち75％を軍や警察を除く、民間人が所有している。
小型武器の所有率が最も高いのはアメリカで100人当たり、90人。次にイエメン ( 61人 ) 、フィンランド ( 56人) と続き、スイスは4位の46人となった。スイスは武器の総数では世界22位となった。
小型武器とはライフル銃、突撃銃、カービン銃などを含める武器で、所有数が断然多いのが、アメリカの2億7000万丁。続いてインドが4600万丁、中国が4000万丁となった。調査メンバーの1人、ケネス・クラウス氏は「調査は予想以上の民間人が武器を所持しているという結果になった」と語っている。また、世界中にある武器の12％しか、当局に登録されていないことも指摘している。
不透明なスイス
2007年の調査では、スイスに関しては世論の不安と武器所有に関する不確実な推定が取り上げられている。スイスの武器数に関しては、数値が警察や武器所有者からか、武器規制擁護者からかによって120万から1200万といった数値の差があると指摘。
「包括的な記録、慎重な世論調査が行われなければならない」という。同調査ではスイスの武器所有を230万～450万丁と推定しており、スイスに住む100人のうち31～60人に1人が武器を所有していることになる。
また「もっとも大きな不一致は元予備兵の所有している、または元予備兵が売ってしまった軍のライフル銃の数や民間の販売数に関して」とクラウス氏。2006年の調査ではスイス人の26%に当たる195万人が少なくとも1丁の武器を持っているといった調査もある。
武器輸出国
同調査では特に、スイスの武器輸出に関する不透明性が非難されている。スイスは人権侵害が行われている中国、ロシア、インドネシア、トルコ、ギニア、パキスタン、セルビアといった国への武器輸出国でもあるからだ。
世界の透明度ランキングではスイスは14位と1位のアメリカや他のヨーロッパ諸国に比べてかなり低い。世界でもっとも武器輸出に関して不透明な国に南アフリカと北朝鮮、ブルガリアを挙げている。日本も27位と中国 ( 23位 ) や韓国 ( 24位 ) に続く不透明度となった。
軍の武器で増える自殺
報告では小型武器の所有数と犯罪の頻度が比例するという一般の見方に否定的だ。その例にラテンアメリカ諸国での武器の所有率の低さと犯罪率の高さを挙げている。
しかし、民間兵の多くが家庭で銃を保管しているスイスで銃による殺人が他のヨーロッパ諸国より多いことも指摘している。特に、軍の銃による自殺が、ここ20年来で25％も増えたという。
スイスで起こる武器による殺人や犯罪の60％が個人的に購入した武器によるものだが、銃自殺は68%が軍の銃によるという。
スイスでは近年、民間兵が家庭で銃器を保管していることが事故につながっているとして、保管反対を求める声が出ている。これを受けて、政府は今年の6月に予備兵が武器の銃弾を持ち帰ることを禁止した。そして、来年から銃のインターネット上での売買に関して、規制が厳しくなる。
なお、9月から社会民主党 ( SP/PS ) などの左派グループを中心に「家庭での銃保管に反対」するイニシアチブを発議するために必要な署名運動が本格的に始まった。
swissinfo、外電 屋山 明乃 ( ややま あけの )
- 「ジュネーブ高等国際問題研究所 ( Graduate Institute of International Studies、HEI ) 」 が毎年、世界の小型武器の実態調査を行い「小型武器実態調査 ( small arms survey 2007 ) 」として出版している。
- 同調査によると、世界に出回っている小型武器の75％を民間人が所有している。アメリカは ( 世界人口の5%以下にもかかわらず ) 世界の小型武器の35～50%を所有している。
- もっとも武器所有数が多いのは中国やインドなどの大国、またはドイツ、フランス、スイスなどの裕福な先進諸国か、アンゴラやコロンビアなど近年、紛争があった国に集中している。
アメリカ：90人
イエメン：61人
フィンランド：56人
スイス：46人
イラク：39人
セルビア：38人
フランス：32人
カナダ：31人
オーストリア：31人
ドイツ：30人
小型武器の総数
アメリカ：2億7000万丁
インド：4600万丁
中国：4000万丁
ドイツ：2500万丁
フランス：1900万丁
パキスタン：1800万丁
メキシコ：1550万丁
ブラジル：1530万丁
ロシア：1270万丁
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