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スイス銀行にアパルトヘイト犠牲者集団訴訟

南アフリカの旧白人政権が実施したアパルトヘイト(法による人種隔離と差別の制度)の犠牲者らが、スイスの二大銀行UBSとクレディ・スイスに対し国連制裁下にあった旧南ア政府に資金援助をしたとして集団訴訟に踏み切った。

集団訴訟を行うのは、アパルトヘイト政策の犠牲者の親族、司法制度の犠牲者、白人政権下の刑務所で非人道的扱いを受けた服役囚、強制移住させられた人々、の4つのグループの約80人だが、今後数週間で千人単位に増える可能性がある。17日チューリッヒで記者会見を行った原告代表のエド・ファーガン弁護士(米)によると、原告側の訴えは、UBS、クレディ・スイス、Citicorp(米)の3行は1985年から93年にかけて、当時の白人政権によるアパルトヘイト政策に対する国連制裁を受け現金が枯渇した南アフリカに対し資金を提供した(スイスは国連の対南ア経済制裁に加わらなかった)。ファーガン弁護士は、90年代に行われたホロコースト犠牲者およびその遺族によるスイス銀行のナチ政権財政援助に対する訴訟でスイスでは有名。

これに対し、クレディ・スイスのクラウディア・クラーツ広報担当は、原告側の主張を「事実無根」と否定した。また、UBSのクリストフ・マイヤー広報担当も、全く不当で事実無根の訴えと断言した。が、ファーガン弁護士は、銀行は南アフリカ政府との取引の事実に直面しなければならないとし「ホロコースト訴訟の時も銀行は最初『ばかげた事』と反応し、後に12億5000万ドルの賠償金を支払った。」と述べた。そして、「スイスの銀行は、おそらく84年以降の歴史を理解していないのだろう。そして、スイスの銀行が財政的に支えなければ、アパルトヘイトを実施した南アの白人政権は崩壊していたということを理解していないのだろう。」とswissinfoに語った。ファーガン法律事務所の欧州代表、ダニエル・ヒーブ弁護士(チューリッヒ)は、スイス銀行は80年代南アの債務を支え貸付金を拠出したという。

銀行に対する集団訴訟の記者会見は17日、南アフリカ・ソエトでも行われた。原告の1人ルル・ペーターソンさんは、26年前のソエト蜂起で兄を警察に殺された。ペーターソンさんは「我々は父、母、兄弟や姉妹の血と惨劇から利益を受けた国際企業や銀行に賠償させたい。」と語った。ファーガン弁護士は、他に独、仏、英国の銀行・金融機関に対する集団訴訟も計画しており、次ぎは独のドレスナー銀行、ドイツ銀行、Commerzbankに対する訴訟を行うと見られる。

17日、ファーガン弁護士は当初、UBS、クレディ・スイスの本社のあるチューリッヒの金融街パラデプラッツで屋外記者会見を行う予定だったが、50人のデモ隊が押し寄せ中止となった。「ファーガン帰れ」「ファーガンはいらない」と叫ぶデモ隊はファーガン弁護士を広場から追い出したため、記者会見は近くのホテルで行われた。ファーガン弁護士が広場から出るまで野次り倒しながら押し続けたデモ参加者の1人は、「ファーガンは金になる仕事を追い掛ける汚い悪徳弁護士だ」と言った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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