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ステンレス器具で巻きずしを

細巻き、普通、太巻き、と3種類の器具を作った AFP

1分間で完璧な巻きずしを外国人が作っているという。場所はジュネーブの「第35回ジュネーブ国際発明品展 ( 35th International Geneva inventions fair ) 」。

鮮やかな手つきで次々に巻きずしを作るのは長年ヴォー州に住んでいるフランス人、フランク・ロランさん。シンプルなステンレスの巻きずし器の名は「イージーすし ( Easy – Sushi ) 」。

 ジュネーブ国際発明品展は全世界からアマチュアの発明家が集まり、アイデアの商品化と販売を請け負ってくれる会社を探す展示会である。今年は世界40カ国から700人の展示者が、家庭用品から飛行用具まであらゆる種類の発明品1000点を持ち込んだ。展示会の広報担当によれば昨年は45%の展示者が商品化にこぎ着けたという。

「イージーすし」はこうしてできた

 「昨年の初め、ある文化教室のコースで巻きずしを作った時、米粒が巻きすにくっついて何回も洗わなければならず、うんざりしました。誰でもが簡単に作れる方法はないだろうかと思ったのです」とロランさん。

 さっそく、海苔の横幅と同じ幅のプラスチックのチューブを縦に2つに割り、横に並べてセロテープで留めモデル第1号を作った。2つの半円チューブに海苔を敷き、上からすし飯をつめ、きゅうりなど入れてパッとこの2つ部分を合わせればせれば出来上がり。このモデル第1号でかなり満足したという。

 モデル2号では、チューブの上に薄いプラスチッククシートを敷き、海苔をその上に載せ、すし飯と具を詰め、2つの半円チューブが合わさった後このシートを引き抜くとチューブの中ですしが回転して海苔の端がピタリと巻きつく仕掛け。 

 後はシックで、衛生的で、しっかりとした素材を求めて、ステンレス製作工房の扉をたたいた。運の良いことに、ネスレ社のコーヒー器械を作ったアトリエ「アンチュ・ボベイ ( Hentsch & Bovay ) 」がモデルの作製を引き受けてくれた。

商品市場

 「日本人は伝統を大切にする国民ですから、日本が市場になるとは思っていません」とロランさん。すしが家庭の食卓にまで浸透し始めたヨーロッパとアメリカをターゲットにしている。家庭で簡単にサンドイッチを作る気分で使って欲しいと願う。

 たしかに「手」で料理を作ることは日本料理の大切な部分。ましてやすしは手で握らないとすしではないだろう。けれど「日本人の友人が、すしは大人しか作れないがこの器具だと10歳の息子でもできると喜びました」と、ロランさんは日本でも子どもは遊びとして受け入れてくれるのではと言う。

 誰か商品化と販売を提案してきましたかとの問いに「いえ、まだです。後5日間展示会は続くので、希望は捨てていません」とロランさん。

 自作の権利を保護するためのパテントは取ってある。後はパトロンを待つだけ。黒い硬めのプラスティック製とデザイン性の高いステンレス製の2種類を考えている。前者は50フラン ( 約4800円 )、後者は100〜200フラン ( 約9600〜1万9000円 ) 位の予定。イージーすし、世界に広まるだろうか。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

現在は「ヴォー州道路標識課」の課長を務める。発明は趣味だというものの、ローザンヌ連邦工科大学 ( EPFL ) 出身のエンジニア。

子どもの頃から時計の分解などが好きだった。1回、道路の滑り止めにアスファルトの表面に凸凹をつける小型機械を発明したが、あまりに専門的過ぎて、商品化にまでには至らなかった。

今回の「イージーすし」はほんの遊び心で始めた。

同展はジュネーブのパレエクスポ ( Palexpo ) で4月18日から22日まで開催。

他の最も注目を集めた出展品の1つが「フュジオンマン (FUSIONMAN ) 」。これはスイス空軍のパイロットであったイブ・ロッシ氏の作品。

ダヴィンチが考えたように、人間の背中に巨大な羽根を取り付け自分が鳥もしくは飛行機になり空を飛ぶというもの。

各々の羽根の部分に4つのジェットエンジンが取り付けてある。時速120〜130キロメートル。飛行時間は現在のところ5〜6分。

まだ危険性があるので商品化には少し時間がかかるが、『007』の映画製作者から声がかかるのを待っているとか。

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