ティチーノ州の反撃
ティチーノ州政府は6月30日、イタリアの越境就労者に課される源泉徴収税を一部凍結すると発表した。
徴収額の半額、3000万フラン弱(約29億円)はイタリアに渡される税金だが、スイス政府とイタリア政府が租税条約の改正に向けた交渉に本格的に取り組み出すまで凍結されることになった。
影響を懸念
この措置により、ティチーノ州はスイスとイタリアの両政府に対する圧力を強めたい意向だ。ティチーノ州政府のマルコ・ボラドーリ参事官によると、今回の決定の前に、連邦議会で複数の政党がすでにこの提案を行っていた。
源泉徴収税の一部凍結に反対している社会民主党(SP/PS)のラウラ・サディス氏は、「国際法に違反していることを分かっているのだろうか」と、この措置により州や連邦に手痛いしっぺ返しがくることを懸念している。
「このような決定を行う権利は州にはない。これは連邦政府にのみ決定できることだ」
サディス氏はこれにより交渉の基盤がスイスに不利になると主張する。イタリアはおそらくスイスに対し、差別的な対策をさらに強化するだろうと情勢を読む。
対話開始の可能性
連邦財務省国際金融問題局(SFI )の広報官マリオ・トゥオル氏は、連邦財務省(EFD/DFF)はティチーノ州政府の今回の決定について連絡を受けていると説明。スイス政府は基本的にティチーノ州の不満を理解しているという。
「スイス政府もイタリアと本格的な交渉に入りたいと考えている。しかし、そのためには相手が必要。スイス政府も現状に満足しているわけではない」
トゥオル氏は一方で、数週間以内に対話が始まる可能性も示唆した。6月にスイスのミシュリン・カルミ・レ大統領がローマを訪れ、シルヴィオ・ベルルスコーニ伊首相と会談して以来、イタリア側にも交渉に応じる姿勢が現れ出したという。事務レベルの交渉の時期について意見がまとまる可能性はあるが、内容で一致をみるかどうかはまだ何とも言えない。スイス側はイタリアと税金問題全般について交渉したい意向だ。
例えばスイスはイタリアに対し、経済協力開発機構(OECD)の指針にのっとった租税条約を提案している。これに沿えば、税金の申告漏れの場合にも捜査協力が認められる。現在、イタリアはスイスをタックスヘイブン(租税回避地)のブラックリストに載せている。
ティチーノ州はこれまで越境就労者に課される源泉課税の38.8%をイタリアに還元してきた。しかし、スイスがシェンゲン・ダブリン協定に加盟した現在、還元するのは12.5%が妥当だと現状に対する不服を表明した。これはオーストリアとの間で合意に達した数字だ。
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