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ネスレ パッケージの失敗に学ぶ

ネスレのスイス社長が音頭を取って宣伝した新製品「ブロック」だったが、消費者にはパッケージに反感を持たれ逆効果だった Keystone

現在、食品大手ネスレの傘下にあるカイエ ( Cailler ) は、スイスでもっとも歴史の長いチョコレート会社。今年には多くの商品のパッケージをプラスチック製にして新装。新製品「ブロック」は、高級感を出すために赤く透き通った長方形のハードパッケージで売り出した。

ところがこの新計画、ごみの量を増やすと非難され、消費者の非買運動にまで発展した。ついには全体の売上に影響を与えるまでに至ったことから、親会社のネスレは新装パッケージ計画を見直すことにした。

 たかがパッケージ、されどパッケージ。プラスチックのパッケージのせいでチョコレートの売上に大きなダメージを受けたカイエは、パッケージを昔ながらの紙に戻す。

高い消費者の環境保護意識

 チョコレートの高級感を出そうと、人気建築家ジャン・ヌーベルにデザインさせ鳴り物入りで販売された「ブロック」に代表されるカイエの新パッケージ計画は、大失敗に終わった。それと同時に行った商品の値上げも、大手スーパーや消費者の反発を受けた理由とみられる。

 新製品ブロックの販売開始直後、フランス語圏の「スイス東部消費者団体 ( FRC ) 」がカイエのチョコレートはパッケージがプラスチックに変わって「リサイクリングが不可能な部分が多すぎる」と非難したところ、環境保護団体、大手スーパー、消費者が同調。同社の売上が大幅に減少し、8月中旬から9月中旬にかけては、前年同期の半分に落ち込んでしまった。一方、ライバルのリント&シュプルングリは、大手スーパーの安売り効果もあって25%も売上を伸ばした。

スイスに限っての問題

 ネスレは大幅なパッケージの見直しを強いられ、来年からは多くの商品が従来のパッケージに戻ることになる。最高経営責任者 ( CEO ) であるペーター・ブラベック氏は、10月22日付けのドイツ語圏の日曜新聞ゾンタークツァイトゥングで、こうした企画については今後CEOを必ず通すようにすると語った。責任者でネスレ・スイスのネリー・ヴェングナー社長は病気のため休職中。現在のところ彼女の責任については触れられていないが、健康が回復しても同社に復帰する見込みはないとみられている。

 スイス国内では「スイスの最優良企業であるネスレが、商品のパッケージごときで失敗した」と会社のイメージに傷が付いたことは言うまでもない。しかし「国外では影響はない。しかも、スイス国内の売上はコンツェルン全体の1%にも満たないし、スイスの売上の15%がチョコレートだ」と企業アナリストのルネ・ヴェーバー氏 ( フォントーベル銀行 ) はみる。10月19日に発表されたネスレの今年9カ月の売上は、722億フラン ( 約6兆8000億円 ) と前年同期を9.1%上回り、今年も好業績が期待されそうである。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

<ネスレ>
創立年 1866年
本社 ヴヴェイ       
純利益 79億95000万フラン 
売上 910億7000万フラン
営業利益 117億2000万フラン
従業員 24万7000人 ( いずれも2005年 )

「ブロック」の商品開発には5000万〜6000万フラン ( 約47〜56億円 ) かかったとみられている。
スイス東部消費者団体FRCは、100グラムのチョコレート1枚に50グラムのパッケージが使ってある商品もあると指摘。さらに、ブロックのパッケージは、リサイクリングが可能なPET製でもできるはずなのにポリエステルを使っていると非難した。
製造元のカイエは1819年に創業したスイスチョコレートの老舗。1929年からネスレの傘下にある。

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