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フェアーなデザイナー

スタイリストのニナ・レバー、ローザンヌのブティックで swissinfo.ch

カンボジアに恋をしたデザイナー、ニナ・レバーはプラスチックの繊維で作られた米袋をリサイクルしてアクセサリーを作っている。彼女の作ったブランドは「コル.パート(coll.part)」。

世界中を駆け回るデザイナーのニナは「フェアー・ファッション」つまり、流行の先端を追うファッションでありながら、愛他精神とマネージメントを組み合わせることに成功した。

 ローザンヌのメルセリー(Mercerie)通りにあるブティックはニナ・ラエバーの色彩豊かな作品にあふれる。ここ「特殊なコレクション(Collections particulière)」別名、「コル.パート(coll.part)」で売っているのは鞄、籠、買い物籠、ベレー帽、帽子、お財布、洗面用具袋などなど。全て、米袋をリサイクルして形を変えたものだ。

 黄色、緑、オレンジ、ピンクなど米袋をリサイクルしたファイバーの袋にはカンボジア語の文字がそのまま残っており、魚の絵など商品が描かれた絵もそのままなのが可愛い。

冒険の始まりはカンボジアから

 「この20キロの米袋に初めて出会ったのはアフリカでした。この素材は頑丈で軽いだけでなく、興味深い色や絵が描かれているので、すぐに組み立て直したい気持ちに駆られました」と語る。「私は宝石デザイナーでした。ですから、もともと素材や形の追求、アクセサリーや物に興味があったのです」

 2003年にパートナーがカンボジアで建築家のポストを見つけたため、一家揃ってカンボジアで1年過ごすことになる。「宝石デザイナーとして12年間働いた末、それだけで生計を立てていくことは難しかったのです。カンボジアでは宝石作りは発達していなくって、むしろ、絹などの繊維生産国ですので、分野を変えることにしました」
 
 そして、プノンペン製の米袋はさらに美しかったので、地元の職人にプロトタイプ(典型)を作ってもらうことにしたそうだ。

カンボジア人の抵抗

 「スイスだったら、自分のブランドを立ち上げる資金が見つからなかったでしょう。でも、カンボジアでは職人、工芸人があふれています。それでも、悲惨な環境で労働者を働かせている多くの企業と手を組むのは嫌だったのです。ビジネスを成功させたかったのですが、それには信用できるパートナーを見つけることが必要でした」と振り返る。

 手作りから量産ができる工業化へ移るのに選んだパートナーは二つの非営利団体(NGO)だった。一つは恵まれない女性を支援するNGO、もう一つはポリオや炭鉱の犠牲者の社会復帰を手伝うNGOだった。

 しかし、現地で意外な抵抗にあうことになる。「一番、難しかったのはカンボジア人の職人にこの貧しい素材を使ってもらうことでした。貧民街で家や車を保護するのに使われているこの素材は我々で言えば、ゴミ袋のように軽んじられているからです」と説明する。

フェアーでもファッションでなければダメ

 苦労が実って、「コル.パート」は現在では6カ国に20カ所の取り扱い店ができ、2004年秋から17モデル、7000点の商品が作られ、その4分の3は既に売れたという。

 昨年の秋にはパリで二つのファッションショーに参加した。その一つはフェアートレードやフェアーな方法で働いている40名のデザイナーたちとともに出た「倫理ファッションショー」だった。

 「フェアーであることは流行にもなっています。でも、倫理的な面ばかりに重点を置いているわけではありません。私はまず、素敵でカラフルで自分の趣味や気持ちにあうアクセサリーを作りたかったのです」と言う。「もちろん、フェアーに作られたということはプラスですが、それだけではダメです。まずはファッションでなければ」

 「だいたい、フェアーというラベルがあること自体、世の中が間違っているのだと思います。労働者の権利が守られることが当然のことで、全てがフェアーであるべきです。有機栽培のバイオラベルだって本当だったらそれが、普通のはずでしょ」


swissinfo、イザベル・アイシェンベルガー 屋山明乃(ややまあけの)意訳

– コル.パート(coll.part)は働く人の権利と環境がきちんと守られている労働者が作ったアクセサリーや雑貨を扱っている。

– コル.パートはニナ・レバー(Nina Raeber / 35歳)が2003年にローザンヌで創立した。彼女はジュネーブの装飾学校を出た、宝石デザイナーでもある。

– 17種のプロダクトはカンボジアの2つのNGOで作られている。

– 2004年の秋から7000個の商品が20カ所の取扱店(スイス、フランス、イタリア、スペイン、カンボジアにセネガルなど)に置かれている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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