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中国人向けマナー教室

中国人マネージャが熱心に耳を傾けるマナーセミナー swissinfo.ch

欧米人が中華や和食のレストランで箸の持ち方で汗をかいて格闘している一方、中国ではフォークとナイフでするテーブルマナーに興味が高まっているという。こうした需要に目をつけたのはスイス人のアンディ・マンハルト氏(52歳)。

アンディ・マンハルト氏は2年前から上海で中国人のビジネスマン向けに、欧米風のテーブルマナーを学ぶセミナーを開いている。

 スイスの国外に住み、自営業を営む多くのスイス人は、ユニークな商いを発案することに長けている人が多い。アンディ・マンハルト氏もその一人。22歳でオーストラリアへ移住したが、まもなくアジアに対する情熱に燃えた。シンガポールにレストランやホテルのメンテナンス会社の代理店を設立したが、85年に独立。アジア諸国とスイスを何度も往復する毎日が続く中、多くの中国人ビジネスマンから、欧米のマナーについて聞かれることが多くなったという。こうした経験から、マンハルト氏はテーブルマナーを教える学校を開設した。マンハルト氏に中国人とマナーについて伺った。

swissinfo:  中国ではテーブルマナーがなっていないといって、わたしたち欧米人はからかったりしますが、マナーにこだわらないというのも気楽なものです。子どものときからスープは音を出して飲んではいけないし、スパゲティはナイフで切り刻んではいけないとわたしたちは教育されて育ちますが、中国人はマナーが悪くとも平気ですね。

アンディ・マンハルト: 中国でのマナーはわれわれとは違う視点で捉えられているということもあるでしょう。文化大革命によりマナーが失われてしまいましたし、中国が何十年も外国から隔離されていたということもあります。

今の中国の多くの人は、食べることだけに考えが集中してしまって、マナーを心がけなくなってしまいました。しかしながら、徐々に中国人自身も、マナーを学ぶことは重要だと感じ始めています。それは、わたしの教室に対する問い合わせが多いことからも分かります。

わたしたち欧米人は、アジア人は慎み深く、しつけも良いと思っているのですが、テーブルマナーは悪いのですね。

中国人は二つの面を持っていると思います。欧米諸国と比べものにならないほど厳しい礼儀が要求される場合もありますが、その反発とでも言いますか、要求されない場所では、とてつもなくだらしがなくなったりします。もちろん、わたしたち欧米人の目から見るとということですが。

たとえば交通マナーや食事のマナーは、特にひどいですね。死亡事故でも起こしそうな運転をしてレストランに入り、食事をしながら唾を床に吐くかと思うと、目上の人がレストランに入ってくれば、恭しくお辞儀をしたりします。これは中国人にとって不自然なことではないのです。

わたしたち欧米人から見て、中国人のマナーの要の問題はなんでしょうか。

わたしの経験から言うと、唾を吐くことを止めてもらうのは非常に難しいですね。わたしのセミナーに参加する中国人を見ていると、マナーを変えるために大変な努力がいるようです。20年以上もマナーを学ばずにいたのですから、当然です。

男性と女性と比べたとき、どちらがマナーを楽に習得しますか。

明らかに女性ですね。女性のほうがマナーを学びたいと思うようで、女性の参加者のほうが多くいます。女性は欧米の映画などを通して、欧米のマナーに触れていますから、マナーは学べるものだと思っているようです。ただ、マナーのすべてを知っているというわけではないようで、セミナーに参加したいと思うのでしょう。

ところで、中国人の男性はですが、女性に対してのマナーは悪いですね。女性に対して紳士的なのは、恋愛中の数カ月間ではないでしょうか。

マンハルトさんのセミナーでは、どのようなことが学べるのですか。

まず、スイス人の男女が間違ったテーブルマナーで食事をしているビデオをみせます。ビデオを観終わってから、参加者と一緒に討論をします。その後、欧米マナーについてのアドバイスをします。

たとえば、洋食のメニューを理解するためには、単に英語がぺらぺら話せるだけでは不十分です。ウイーン風ステーキがカツレツであり、ストロガノフが肉の煮込みであるということは、教えられてはじめて分かります。

その時は、どうすれば良いのでしょう。

分からないことがあれば、ウェーターに聞くようにと勧めています。何がなんだか分からないものを注文して、予想外の食事が出てきてがっかりしないように。

欧米人にとっては基本的なことですが、中国人がどのグラスが赤ワイン用で、どのフォークがデザート用であるか知りません。ですから、わたしのセミナーでは、いろいろなグラスやナイフやフォークを用意しています。そもそも、パンの食べ方も知らない人も多いのです。

セミナーでは前菜から始まりデザートで終わるフルコースも食べてもらいます。

テーブルマナーのセミナーほかに、別の計画があると聞いています。

妻が上海に西洋料理の基本的な料理教室を開く予定です。中国人は、特に男性ですが、西洋料理を自分で作ってみたいと思っている人が多いのです。最終的には、スイスにあるような家政学校のようなものを作りたいと思っています。(了)

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中国人はいま欧米のマナーを学んでいるというが、20年前には日本人もマナーで悩まされたことを思い出す。

swissinfo、アレクサンダー・ケンツレ  佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳

アンディ・マンハルト氏(52歳)
オーストラリアを経てアジアへ。
ホテルメンテナンスの代理店を設立。
85年に独立。
現在上海にアンディ・マンハルト・ビジネス・コンサルタンシーを創立。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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