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仏スーパーをコープが買収

カルフールはスイスから撤退。巨大資本にはスイスというマーケットが小さすぎた? Keystone

フランスからスイスに7年前に進出してきた売り上げ世界第2位のスーパー「カルフール ( Carrefour )」がスイスから撤退する。カルフールの12店舗は、「コープ ( Coop )」が買収することになった。

買収額は4億7000万フラン ( 約446億円 )。2200人の従業員の解雇はないと発表された。

 スイス国内における小売業界の再編成が進んでいる。スーパー大手コープはこれまで、ディスカウントチェーンの「ヴァロ ( Waro )」、百貨店「エパ ( EPA )」、家電の「フスト ( Fust )」を次々と買収し続けてきた。今回コープが買収したカルフール・スイスは、スイスの大手小売業の「マウス ( Maus ) 」グループとカルフールのフランス本社がそれぞれ50%出資していた。

カルフールの新戦略

 カルフールがスイス店を買収したのは新戦略に従ったもの。7年前、スイスのナンバー2になるという目標を掲げスイスに進出した。しかし、スイスでは同社の発展は難しいと判断された。スイスにおけるシェアーは1.1%に止とどまり、競争に勝つための商品の価格設定ができなかった。すでに、日本、メキシコ、韓国、チェコ、ポルトガルなどからも同社は撤退している。
 
 ザンクトガレン大学のトマス・ルドルフ教授は「カルフールのような外国資本のスーパーがスイス市場で成功するのは難しい。スイス市場は保護規制が多く、たとえばフランスから食料や雑貨品を輸入するのは他国と比べて難しい」と指摘する。さらに、カルフールの撤退理由について「消費者は安価な商品より、質を求める」といったスイス市場の特殊性がカルフールの戦略に合わなかったことを挙げた。

メガストアが今の流行

 今回、カルフール株をコープに譲渡するマウスグループの書記長ジャン・ベルンハルト・ロンドー氏は「カルフールの撤退は遺憾だ」と語った。「スイスでの売り上げは約10億フラン ( 約950億円 ) にのぼり、高い収益性があった」と言う。マウスグループは今後別の形で拡大を図る予定で、2008年11月までには新しいマノール百貨店 ( Manor ) を開業すると発表した。

 一方、コープは4万種類の商品を扱う4200平方メートル級の大型店舗の増設を計画していたが、この買収により一気にその目標を達成したことになるとプレスリリースで伝えた。公正取引委員会の監査後、メガストアへの移行計画を進める予定だという。

swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

コープ 本社バーゼル。生協の形態で200万人の会員がいる。
ミグロ 本社チューリヒ。全国を10の生協で区分。会員数はコープとほぼ同数。ミグロは創立者の意思によりアルコールを販売しないことになっているが、買収したデンナーなどを通じて販売している。

1995年、百貨店グローブス ( Globus ) がライバルの百貨店イエルモリ ( Jelmoli ) の支店を買収したが、その直後スーパー最大手のミグロ ( Migros ) がグローブスを買収。
2002年、コープがヴァロ ( Waro ) を買収。
2004年、コープがエパ ( EPA ) を買収。
2007年1月、ミグロがディスカウントショップのデンナー ( Denner ) を買収。
2007年5月、コープが家電のフスト ( Fust ) を買収。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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