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内閣閣僚に脅迫状

シュミット国防相、ジュネーブのアメリカ領事館を警備するスイス軍を視察 Keystone

閣僚がボディーガードを付けずに、街でショッピングする姿も見られるのがスイスだが、最近になって大臣が頻繁に脅迫されるようになったことをサムエル・シュミット国防相が認めた。

最近の例を挙げると、新しく閣僚に選ばれたエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ大臣。「殺す」と脅迫されたという。

 「脅迫が多くなったことは遺憾だ。スイスの政治文化にそぐわない現象だ」とシュミット国防相はジュネーブのアメリカ領事館を警備するスイス軍を視察した際のテレビ中継で語った。

187は殺しの脅迫

 国防相によると、7人の閣僚は、議題の内容や政界の緊張の度合いに応じ、徹底した警護が必要になるという。
 「こうした状況は深刻に捉えられるべきだ。火に油を注ぐようなことはしてはならない。スイスの政治文化は、真にスイス的であるべきだ」
 とシュミット国防相は語った。

 12月中旬、2日にわたる内閣信任投票で、国民党 ( SVP/UDC ) 所属のクリストフ・ブロッハー司法相が落選し、ヴィトマー・シュルンプフ氏が選任された。その3日後、ヴィトマー・シュルンプフ氏は殺すという手書きのはがきによる脅迫状を受け取ったという。はがきは同氏の父親で元閣僚メンバーだったレオン・シュルンプフ氏の自宅に届けられた。「彼女は気骨がない。われわれが彼女を処理してやる」とあった。

 その他にも、祝福のメッセージの中に混じり脅迫や嫌がらせが電子メールや携帯メールで多く届いているとヴィトマー・シュルンプフ氏の夫クリストファー・ヴィトマー氏は日曜版の大衆紙ゾンターク・ブリックに明かしている。

 投票直後、ヴィトマー・シュルンプフ氏の家は落書きで一杯になった。塀には十回以上「187」と書かれたという。187はアメリカ警察が使うコード番号で、 カリフォルニア州警察では殺人事件のファイルに当てられる。これを知っている若者たちが、殺すという脅迫状に好んで使っているのだ。

背景にあるもの

 こうした脅迫を、ヴィトマー・シュルンプフ氏の地元であるグラウビュンデン州警察のマルクス・ラインハルト警察署長は、深刻に受け止めているという。ヴィトマー・シュルンプフ氏は24時間体制で、州と連邦警察により警護されるようになった。

 脅迫の背後には、常にフラストレーションがある。格好の例がヴィトマー・シュルンプフ氏への脅迫だ。ブロッハー司法相の落選したことを受け国民党は以後、他党と連立することを止め、野党になると宣言した。また、ヴィトマー・シュルンプフ氏とシュミット国防相を議員で構成される国民党会議に招待しないことにした。ブロッハー司法相の落選に右派の一部が不満を脅迫状にしてぶつけたのだとみられる。
 
 スイスの首都ベルンでは、連邦閣僚が他の客と混じってレストランで食事をしたり、バスに乗ったり、散歩をしている姿が見られる。政治家は警護を必要としないのがスイスの伝統だった。しかし、閣僚への脅迫状が多く届くようになり、閣僚の警護が必要になった。また、2001年ツーク州議会にライフルを持った男が押し入り、15人の議員が死亡した事件以来、これまで比較的自由に入れた連邦議事堂の警備が非常に厳しくなっている。

swissinfo、外電

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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