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医薬品価格をめぐる論争

スイスの薬の値段は高いのか、安いのか。医療コストの問題と関係し、議論が絶えない。                                                                                                                     Keystone

製薬業界はスイスの医薬品の価格は、他の欧州諸国比較しても高くはないと主張している。今回発表された薬の価格調査結果では、小売価格は平均的、生産者価格は欧州諸国内でも最高、消費者の購買力で見た場合は安いという結果が出た。                                          

製薬業界の元締めとなる「インターファルマ」が要請して行われた調査に対し、スイス患者協会や価格監視委員会は実態を反映していないとその結果に疑問を投げかけている。

製薬業界の代表であるインターファルマの要請を受け調査は、英国のIMSコンサルティングが行った。売上の高い順に100種の薬の価格を比較。このうち2割は特許の期限が終わったものだが、ジェネリックは含まない。スイスの小売価格はデンマーク、オランダと肩を並べて欧州諸国での平均的であるという。さらに購買力で見ると、デンマークやスウェーデンと同じく一番安いという。

調査結果に疑問が沸騰

 スイス患者協会の会長であるマルグリット・ケスラーさんは、
「結果などは、意識的に調整できる。日ごろの経験から、他の欧州諸国と比べてスイスの薬の値段は非常に高い」
と語り、調査を依頼した機関には政治的意図があると断言した。連邦の機関である価格監視委員会のヴエルナー・マルティ委員長は、
「国境を越えて購入できるような商品に対して、購買力で比較するのは間違っている。外国で同じ薬を買えばすぐ分かること」と調査を非難している。今回発表された調査で唯一正しいのは、「製造者価格で、スイスが一番高いということだ」
と皮肉を含めて語り、製造者価格は欧州レベルにあわせるよう指導されているのに、従っていないと指摘した。

                                                                                                                          

価格にはそれなりの意味がある

  一方、インターファルマのトマス・クエニ理事長は、
「製造者価格、小売価格、購買力など多方面からの結果を明示している」
と調査は公正で、批判は悪意のあるものだと断言した。インターファルマは医薬品業界を代表する。

 調査によると、オーストリアの製造者価格は最低だった。スイスを100とすると、オーストリアは75。価格の高いのはデンマークとドイツがそれぞれ86、英国87、オランダ82など。オーストリアに次いで低いのはフランスとイタリアでそれぞれ76という。米国は135と比較された10カ国で最高だった。
 この結果に対しクエニ氏は、
「医薬品産業が重要な位置にない国は製造者価格が低い」
と、スイスの産業が医薬品メーカーの恩恵を受けていると説明した。

 なお日本は、製薬業界の構造がヨーロッパなどと異なり、比較する医薬品が50品と少なく調査からはずされた。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)                                                                                                                        

2003年上半期の医薬品売上高 19億6千万フラン(およそ1千411億円)

前年同期比 37%増

このうち健康保険対象薬は15億フラン(およそ1千275億円)

ジェネリックは660万フラン(およそ5億6千1百万円)                                                     

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