スイスの視点を10言語で

大吉の製薬、大凶の金融

光沢が落ち、巨額の損失。チューリヒ市パラデ広場のUBS Keystone

まずは吉報から。スイスのバーゼルに本部を置く製薬大手の「ロシュ ( Roche ) 」社は2007年、前年比25%増の純利益114億フラン ( 約1兆1100億円 ) を計上した。

一方、凶報に唇をかんだのはスイス最大銀のUBS。アメリカのサブプライム問題にからむ赤字が元凶となって、昨年の純損失は44億フラン ( 約4300億円 ) に膨らんだ。

7年連続2ケタ成長のロシュ

 ロシュは2006年にも過去最高の92億フラン ( 約8983億円 ) の利益を計上している。2007年の売上は10%増の461億フラン ( 約4兆5000億円 ) と、初めてライバル社の「ノバルティス ( Novartis ) 」を追い抜いた。7年連続して2ケタ成長を達成したロシュの会長兼CEOを務めるフランツ・フーマー氏は1月30日、
「すべての分野で新たに抜群の成績を上げた」
と語った。
 
 ロシュのコア部門である製薬部門の売上は、前年比11%増の368億フラン ( 約3兆5950億円 ) 。世界市場の倍のスピードで成長したという。2本目の柱となっている診断薬部門では6%増の93億フラン ( 約9080億円 ) を計上した。

 大黒柱となった薬は抗がん剤などで、インフルエンザ治療薬「タミフル ( Tamiflu ) 」は政府や企業への納入がほぼ終了し、2007年は19%の収益減となった。

史上初の赤字決算となったUBS

 スイス最大銀のUBSは、昨年後半からアメリカのサブプライム問題による減益報告が続いたが、2007年の純損失は最終的に44億フランに達すると発表した。

 おもな理由は、債権、外国為替、コモディティ ( FICC ) 事業のアメリカサブプライム関連で137億フラン ( 約1兆3380億円 ) 、その他のアメリカ住宅市場関連で約23億フラン ( 約2247億円 ) の損失が見込まれているためだ。詳細な数字は2月14日に発表される予定だ。

 UBSは昨年12月10日、この先さらに巨額の損失計上が見込まれるため、その対策として資本基盤の強化を行うと発表した。シンガポール政府投資公社 ( GIC ) の110億フラン ( 約1兆0750億円 ) と近東のある投資家による20億フラン ( 約1950億円 ) の資本注入を受けることになっているが、これらの資金がなければUBSの自己資本はかなり縮小していたということだ。

swissinfo、外電

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部