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旅行中、落とし物をしたら

あらゆる場所で、あらゆる物を人は忘れる。簡単に見つけられる方法はあるか? swissinfo.ch

旅行中に貴重品を落としてしまったら、それまでの楽しい思いでもあっという間に消えてしまいそうだ。特に、見知らぬ街での落とし物は大きなストレスになる。

まずは、チューリヒ交通局が運営する落とし物預かり所(Fundbüro)や、最寄の連邦鉄道の駅にある窓口に連絡してみよう。落とし物預かり所に届けられた物の4〜5割が持ち主に戻るという。

 「ここにないものはありません」とチューリヒ交通局のダニエラ・バルダウフさんは言う。市の中心街にある落とし物預かり所には、毎年3万個の届け物があるという。

至れり尽くせり

 集まってくるのは市内を走るトラムやバスの中での忘れ物と道での落とし物。次の日にはチューリヒ市の中心地にある落とし物預かり所に届けられる。その一つ一つの中身を調べ、落とし主が分かる物は本人に連絡する。連絡は電話やメールで行われるが、外国に落とし主がいる場合も例外ではない。その場合のやり取りは英語で。「言葉ができなくとも、何とかして助けます」と至れり尽くせりなのだ。

 鍵がかかっているスーツケースの忘れ物もここでは、たくさんある合鍵を使って簡単に開けられてしまう。「開けられなければ、てこで開けます」とバルダウフさん。開けてみて持ち主が分かるかもしれないからだ。身分証明書や旅券、携帯電話などは身元が分かりやすい。「貴重品には連絡先をつけて置くと戻る確率も高いわけです」

公共サービスだから

 電動の乾燥機も備えているのは、夏によくある水着の落とし物のため。ぬれているまま保管できないので、乾燥させてから保管する。ウサギやモルモット、熱帯魚の忘れ物もある。ペットの忘れ物は、餌を買ってでも世話をする。結局、落とし主が取りに来てくれず、従業員が引き取ったり、ペットショップに引き取ってもらったりしたこともあった。
 
 高価なものでバルダウフさんの記憶にあるのは、4万5000フラン(約400万円)のブローチだった。ドイツの宝石商に問い合わせて、やっと持ち主が分かった。落としたのはドイツ人。連絡が付いた2,3日前に亡くなっていたという。いつも同じランドセルがトラムに置き忘れられていたこともあった。母親に聞いたところ、子どもが宿題をやりたくなくて、わざと忘れるのだという。「そのランドセルは常連になりました」と笑いたくなるエピソードもある。

 落とし主は、最低5フラン(約460円)の手数料を支払うことになる。落とし物の価値が2000フラン(約1万9000円)までの場合10%、それ以上の価値があると判断されると、5%の手数料が取られる。そのほか、届けた人へのお礼が価値の1割。送料を払えば、海外でも送ってもらえる。しかし落とし物預かり所の財政は赤字。「従業員7人、公共サービスのひとつと思っています」と胸を張るバルダウフさん。探偵のような仕事を誇りに思っている様子だ。

連邦鉄道はキットで

 一方、連邦鉄道の落とし物預かり所は、本社のベルンで管理されている。各駅に届けられたものは、その日の夕方にすべてベルンへ送られる。ただし「パスポートと旅券が一緒になっていて、チューリヒ空港から飛び立つと分かれば、ベルンに送るのを遅らせます」と責任者のベノ・ニーダーベルガーさん。

 電車に忘れた場合は、手数料を15フラン(約1400円)支払って問い合わせる。電話(1分1.19フラン(約100円))でもメール(無料)でも可能だ。見つかった際にも手数料を払うことになる。「人によって落とし物に対する価値は違うと思います。それは書類だったりノートパソコンだったり、ペットだったり」とニーダーベルガーさん。連邦鉄道の場合は、チューリヒ市とは違って、連絡先が分かっても連絡はしない方針だ。

 「落とし主が外国人の場合、言葉は常に問題。日本語のパンフレットも作りましたが、窓口での対応が困ります。落とし物を詳しく説明してくれるほど、見つけやすいのですが」と言う。

 連邦鉄道では、落とし物がなるべく戻ってくるように、落し物防止キット「イージー・ファンド」を用意している。バーコードつきのキーホルダーやラベルなどのセットで、購入の際に、連絡先などのデータを登録することができる。落としたら、このデーターを元に探してもらえるという仕組みだ。
 
 「あらゆる場面で、あらゆる人が忘れ物をしますが、届けてくれる人も多いですよ」と言うニーダーベルガーさんの言葉にもあるように、落とし物をしたらまずは窓口に尋ねてみよう。

swissinfo、佐藤夕美(さとうゆうみ)

<チューリヒ交通局落とし物預かり所>
Werdmühlestrasse 10
8001 Zürich
Tel. +41 44 412 25 50
7時半から5時半まで。(土・日休業)
問い合わせ 電話、インターネットで可能

<連邦鉄道落とし物預かり所>
各駅の構内

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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