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白馬の騎士は香港から

サイア・バージェスに白馬の騎士。本社ムルテンの存続、従業員の雇用は?結果が出るまでの道のりは長い swissinfo.ch

スイスのモーター、電子部品メーカーのザイア・バージェス(以下ザイア)に新しくジョンソンエレクトリックホールディング(以下ジョンソン 本社、香港)から救いの手が差し伸べられた。

ザイアとジョンソンは26日、ジョンソンがザイア株を1株に付き1060フラン(約9万2500円)で買い取ると発表。一方、日本のスミダコーポレーションは9月1日までの期限のTOBで、950フラン(約8万2900円)を提示している。

 近年、外国資本によるスイスの伝統的会社の買収が相次いで起こっている。ザイアやライカ・ゲオシステムなどにも結局、スイス国内からの救いの手は差し伸べられず、外国資本に身をゆだねなければならない運命にあるようだ。

「価格が妥当」とザイア

 ザイアは「1060フランというオファー額は妥当」とジョンソンのオファーを歓迎し、株主にこれを受け入れるよう勧めている。1株1060フランは6月30日の取引き価格の41%増し。オファーは9月12日から23日までの期限で、10月20日までにジョンソンはザイア株の51%以上の取得を目指す。買収総価格はおよそ5億4800万米ドル(約600億円)となる。 

 ザイアのダニエル・ヒルシュ社長は、スミダの敵対的買収に直面してから一貫して独立した経営が自社、株主、従業員のためになると主張してきた。しかし、今回の発表では「独立経営は難しくなった。ジョンソンとは長年のビジネスパートナーであり、買収合併で経営がうまくいった企業は少ない中、資金面でも生産力の面でも強いジョンソンというパートナーを持つことは、マーケッティング、流通、原料購入などの面で相乗効果が期待される」と歓迎した。

自称「保守的」なジョンソン

 買い手として新しく名乗りを上げたジョンソンは1959年に香港で会長兼経営最高責任者(CEO)のパトリック・ワン氏の父親が創業を開始したモーター専門メーカー。デジタルカメラのズームに使われるモーターなど消費者に身近な製品も作っている。香港株式市場に上場し株資本金は34億米ドル(約3700億円)。1日当り300万個のモーターを生産し、年間売上は11億4000万米ドル(約1250億円)。従業員3万3000人で15カ国に進出している。日本には1988年に進出し、日本ミニモーター(本社、長野県)を買収した。主な市場は欧州(売上の39%)、アジア(同33%)、アメリカ(同28%)となっている。

 買収後ザイアの本社が移動する可能性についてワン氏は「世の中はダイナミックである。経営次第だ」と明言することを避けた。さらに、買収後の両社の相乗効果についても「買収にはそれなりの経費もかかる。日本などアジア地域を強化することが可能だと思う」と述べるに留まった。

 新しい買収オファーの動きを受け、8月30日に予定されていたザイアの株主総会は、10月中旬まで延期。議題は当初の通り、株主が所有する株数に関係なく発言権を5%に制限している会社法の変更と、経営陣の選出となる。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ)

<ザイア・バージェス買収>
スミダの買収価格 950フラン。
ジョンソン買収価格 1060フラン。
ジョンソン 会長兼最高経営責任者 パトリック・ワン。
従業員3万3000人、売上11億4000万米ドル。
日本には1988年に進出し日本ミニモーターを買収。

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