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赤十字、最大の危機に直面

赤いダビデの星の記章を付けたイスラエルの救急車 Magden David Adom

赤十字・赤新月社国際連盟(IFRC)は、米国の圧力に屈してイスラエルの加盟を認めるか、それとも信念を通し米国の拠出金なしでやっていくか、という創設以来の危機に直面している。世界最大規模の人道援助機関が、政治に翻弄されている。

イスラエルの人道援助機関「赤いダビデの星」は、ジュネーブ条約に定められた赤十字または赤い新月の記章を拒み、独自のシンボルの赤いダビデの星に執着しているため、建国以来約50年IFRCに正式加盟していない。米赤十字は、IFRCへのイスラエル加盟容認を主張し、イスラエル加盟が容認されるまで米国は連盟への資金拠出を停止した。IFRCでは米国がイスラエル加盟の圧力をかけはb゚た昨年から、宗教色のない第3の記章採択案を出しており、新記章が条約調印国の外交会議で承認されるまでイスラエル加盟は待たなければならないとの立場を取ってきた。

「我々の立場としては、イスラエルの加盟と各国の拠出金は、全く別問題だ。が、ボールはアメリカ・サイドにある。成りゆきは米国次第だ。」とマリー=フランソワ・ボレルIFRC報道官は言う。ボレルさんの説明によると、連盟の全運営予算約4億スイスフランには、米赤十字の拠出金がなくても影響はない。が、米赤十字の年間拠出金730万ドルは、赤十字活動のコーディネートを担当するジュネーブ事務局予算の4分の1にあたる。ボレルさんは「我々は米国との対話を続け、米国の割り当て拠出金を支払うよう説得を続けている。」と言うが、IFRCは、スイスなど他国の赤十字に不足分を補うことを要請している。

欧州各国の赤十字委員会は、米国の「脅迫」に怒りを覚えながらも米国の説得を続けているが、不足分の支払いを要請されたことに不満を表明する国もある。今週末までに米国の穴埋め拠出をするかどうかの決断を下す予定のスイス赤十字のエドガー・ブロッフ・スポークスマンは、「この事が赤十字の団結にどのような意味を持つのかを考翌オている。赤十字活動は強力でなければならない。それには、米赤十字のような大国の機関の参加が必要だ。」と言う。ブロッフさんは、スイス赤十字委員会は解決のためのあらゆる努力を支援し、IFRCでは米国の説得に集中した討論をするべきだと語った。中東での紛争が激化する昨今、外交会議が近い将来開催される可能性は少なく、アラブ諸国は新記章採択とイスラエル加盟を封m桙゚る勢力を形成しているため、米国の説得が一番可能性の高い解決策だと思われる。

赤十字・赤新月社連盟は、イスラエルの記章使用容認は各国に独自の記章使用の口実を与えることになり、結果的に引き起こされる記章の多様化は、世界の紛争地域で職員の命を保障する唯一の手段である記章の防御力を弱めると、赤いダビデの星の使用には断固反対してきた。そして、宗教色のない第3の記章のデザインを検討し赤い山形の中に各国が独自のシンボルを入れるというデザイン案を出したが、合意に達してはいない。新記章の採択には、ジュネーブ条約調印国外交会議での承認が必要だ。昨年スイスは外交会議開催を準備していたが、中東紛争が激化したため中止となった。

ボレルさんは「第3記章採択は、考えられ得る中では最良の解決策だろう。米赤十字が介入を始めるずっと前の4年前から、第3記章採択案は出ている。新記章採択を是非とも達成したい。」と語った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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