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ジュネーブで世界復興会議、災害の経験を共有

東日本大震災で津波の大被害を被った気仙沼市 Keystone

災害の予防、復興の知識を共有するための「世界復興会議」がジュネーブで5月10日から14日まで開催される。

世界銀行が国連 ( UN ) と共同で主催する同会議には、日本からも東内閣府副大臣をはじめ、災害専門家などが出席し、特に東日本大震災での経験を世界に伝える。

ハイスピードの車中に

 

 「例えば、小高い丘の岩に残る何百年も前の津波の爪痕から、ここまで津波が達したことが分かる。従ってこれより下の地域には家を建てないようにするなどの知恵で救われた村落もあった。こうした経験を紹介したい」

 と菅沼健一在ジュネーブ日本代表部大使は5月9日、記者団を前に話した。

 日本からは、パネル形式の会議などで日本の経験を伝えるため、関係者およそ30人が参加する。

 同会議が世界銀行主催である理由の一つは災害損失額の劇的な増加にある。2011年の災害リスク評価レポートによれば、洪水などでの死亡リスクは20年前に比べ減少したが、災害損失額は増えている。

 例えば、2009年に680億ドル( 約5兆5000億円 )だった損失額が2010年には1800億ドル( 約14兆5000億円 )に上昇している。2011年はさらにひどく、日本政府は東日本大震災での損失額を地震と津波だけで約300億ドル(約2兆4000億円 )とみている。このため、災害リスクの軽減は緊急課題となる。

 損失額が増加している理由として、気候変動などで災害の規模が拡大し、頻度も増えていることが挙げられるという。

 「われわれは現在、ハイスピードで走っている車の中に座っており事故が起こるのを待っているようなものだ」と国連国際防災戦略 ( UNISDR ) の代表、マルガレータ・ワルストローム氏は警告する。 

災害予防の重要性

 今回初めて開催される世界復興会議  ( World Reconstruction Conference ) は、そもそも2007年以来2年ごとに開催される、防災グローバル・プラットフォーム ( Global Platform for Disaster Risk Reduction ) の第3回会合の一環として特別に設定された。これら二つの会議への参加は、180カ国からおよそ3000人の政府関係者、災害専門家を数える。

 ところで、ホスト国として会議を開催したスイスの代表で、スイス連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) の局長ルネ・ホレンシュタイン氏は、災害の予防に特に力を入れるべきだと強調する。また、それを伝えるためにメディアが果たす役割は大きいと言う。

 「災害が起こった瞬間をメディアはこぞって報道する。だが、その時が過ぎれば取り上げなくなる。実はその後の復興にこそ膨大な時間がかかり、またそれを通して災害予防の重要性が分かってくる。こうしたことをメディアは伝えるべきだ」

 と話す。

 スイスは実際、多くの国にとって災害予防のモデル国になっている。警報システムへの投資、洪水などに対処するための土地利用計画、法制度の整備、国民の災害予防教育において優れているからだ。

 「確かにスイスは恵まれた環境にある。経済的にも人材的にも多くの投資が行われている。また発達した地方自治体の予防体制、各防災機関の優れた協力関係が存在する。こうした点をほかの参加国に伝えたい」

 とホレンシュタイン氏は言う。

ジュネーブで5月10日~14日に開催される。

世界復興会議は、第3回防災グローバル・プラットフォームの一環。

これら二つの会議には、各国政府関係者、科学者、NGO、国際機関などから、180カ国の約3000人が参加し、さまざまな経験や対策を共有する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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