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スイスの中のもうひとつのスイス – グラウビュンデン州

イタリア語圏のブレガリア(Bregaglia)谷にあるソーリオ(Soglio)の石の屋根

(swissinfo.ch)

あなたの隣の村で全く別の言語が話されていることを想像できるだろうか。そして、隣の村では今日が祝日なのに、あなたは仕事に行かなくてはならないことも。ここでは、ひとつ山を越えるだけで全く違うスタイルの家並みを目にし、言語も食生活も変わる。今日は、異文化が独立して共存するスイスという国の中でも、特に市町村ごとのバラエティを体験できる州、グラウビュンデンについて紹介しよう。

 スイスは九州程度の小さな国土なのに四つもの言語が使われていることはよく知られているが、私の住むグラウビュンデン(Graubünden / Grigioni / Grischun)州ではそのうちの三つが使われている。ドイツ語、イタリア語、そしてこの州でしか使われていないロマンシュ語である。といっても、全員がその三か国語を自由に話すわけではない。それぞれの母国語は一つだ。

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 西暦15年にローマ帝国の属州となって以来、この地域ではラテン語が公用語になった。後にアルプスの南ではラテン語が変化してイタリア語となった。アルプス以北はゲルマン化が進み、ドイツ語が話される範囲が広がったが、山間部に残されたラテン語は独自の形で残りロマンシュ語となった。

 このゲルマン化はいまだに終わっていない。現在でもロマンシュ語を話す人口は減り、村の公用語は次々とドイツ語に塗り替えられつつある。私の住んでいる村も、かつてはセリアス(Seglias)という名のロマンシュ語系の村だったが、現在はシルス(Sils)といい、住民のほとんどはドイツ語系だ。

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 トゥージス(Thusis)からベリンツォーナ(Bellinzona)へ向かうバスにはじめて乗った時には驚いた。それまでドイツ語で次の停車場の案内をしていた運転手が、サン・ベルナルディーノ(San Bernardino)に着いた途端、イタリア語を話しだしたからだ。その頃、私はスイスに来てまだ間もなかったので、どの州でもこのように突然言語が切り替わるものなのかと思い込んだ。実際には、たいていの州は一つの言語しか使っていない。

 グラウビュンデン州の特殊性は、言語だけではない。スイスの各州には公的なキリスト教宗派(Konfession)が定められている。もちろん、現代においては信教の自由が認められているが、たとえば祝日などはその公的な宗派に基づくのである。例えばチューリヒ州はプロテスタントで、ルツェルン州はカトリックである。この公的な宗派は、宗教改革時の1520年代に各州でそれぞれ定められたのだが、当時のグラウビュンデン州は三つの国家の集合体であったこともあり、カトリックに留まるかプロテスタントになるかを決めることができなかったのである。それで、市町村がそれぞれに決定していいことになった。

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 たとえば我が家の周辺はプロテスタントの村が多いのだが、カツィス(Cazis)はカトリックに留まった。というのは、この村にはドミニコ会の尼僧修道院があり、もし村がプロテスタントに改宗するとこの修道女たちが路頭に迷ってしまうからだった。

 だから、ある村では今日は祝日で全ての会社や店が休みでも、隣の村では働いているし学校も開いているということが実際にあるのだ。

(swissinfo.ch)

 高いアルプスの山々に遮られて、それぞれの谷では異なった光景も見られる。風土に合わせた建築様式だ。スクラフィットと呼ばれる装飾が美しいエンガディン地方の家、平らな石の屋根が特徴的なイタリア語圏の家、ドイツ語圏に多い窓辺を花で飾る木の山小屋など、全く違う建築様式が車で30分もかからない近さの場所に存在している。

 小さい国土の中に、様々な文化が共存しているスイスの更なる縮図のような州、それがグラウビュンデンだと思う。その独自性と文化をそれぞれの村が大切に守っているのを感心しながら、いつも何か新しい発見できるこの州に住むことが出来たことをとても嬉しく思っている。

ソリーヴァ江口葵

プロフィール:ソリーヴァ江口葵

東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。

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