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スイスの農家で研修

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中小規模の農家が中心で、土地も人件費も高いため、スイスの農産物は外国産とは到底太刀打ちできない。そんなスイスに毎年日本から約10人前後の研修生が訪れ、1年間農業を学ぶ。

このコンテンツは 2008/05/15 15:30

その1人、三陸海岸沿いの岩手県宮古市出身の吉濱孝明さん ( 26歳 ) をフリブール州の農場にたずねた。

5月上旬。ベルン市から私鉄で西へ向かう。青々とした牧草地にはホルスタイン牛が寝そべり、プラムやナシの木には白い花がほころぶ。そんな田園風景の中を約20分走ると人口4500人のケルツェルス ( Kerzers )村に着く。

栽培と販売の複合農家

村はずれといっても駅から1キロメートルも離れていないクリストフ・ヨーナーさん ( 33歳 ) が経営する農場は、村では「小さいほう」。13.5ヘクタールの畑で、研修生3人と家族の合計5人で野菜や穀物を栽培する。

「父親の代から研修生を受け入れています。14年に渡ってヨーロッパ諸国から研修生が来ました。日本からは5、6人受け入れました。日本人はスイス人と似ているように思います。挨拶はしっかりするし、礼儀正しく仕事熱心ですね。ロシアやウクライナからの研修生は、飲酒問題などもあって頼りにならなかったりします」
と言う。

吉濱さんは日本の国際農業者交流協会のプラクティカル・コースに応募してスイスに来ることを望んだ。北海道で畜産を学び、宮城県でブタの飼育をしていたが野菜の方が自分には合っているかなと思ったという。ケルツェルスでの研修は4月からで始まったばかり。スイスでは複合農業のあり方を学びたいと言う。ヨーナー農場は14種類のサラダ菜、10種類のジャガイモ、赤、黄色、紫など8種類のニンジン、タマネギ、カボチャ、ナス、トマト、ハーブなどおよそ60種類の野菜や穀物を栽培しているので、吉濱さんの希望には打って付けのようだ。

農作物の栽培のほか、ベルン市内などに午前中だけ立つ「ヨーナーのマーケット」というスタンドで野菜を売ることも吉濱さんの仕事だ。
「日本にも直売はありますが、農家の人がスタンドに立って売るということは少ない。ここのやり方だと、直接お客さんが何を欲しがっているかが分かっていいですね。お客さんには、いつ、どこで採れたのかとよく聞かれます」

ヨーナー農場で作っている野菜だからと買ってくれる客が多いという。日本のように野菜がパックで売られるのではなく、そのまま店頭に置いたほうが消費者には新鮮だと思われ人気があるようだと吉濱さんは観察する。大手スーパーにも卸しているヨーナーさんだが
「ブロッコリーは白でなければいけないといったスーパーが決めた通りの野菜を売るより、紫のブロッコリーなど、多くの種類の野菜を売ることができる青空マーケットの方が、小規模農家の将来を約束してくれる」
と直売を始めた。

研修成果は2月に発表

1年間の研修を受けるためスイスへの旅費など吉濱さんの持ち出し分は約70万円だが、1カ月約6万円から7万円の給料のほか、週末の外食代として週6000円が出る。ウイークデーはヨーナーさんと家で食べるので吉濱さんの出費にはならない。税金や健康保険などのほか、研修後に受ける料理コース、スキー休暇、スイス国内旅行の積み立て金およそ60万円はヨーナーさんが吉濱さんのために貯めている。
「経済的には楽ですね。しかも、朝7時から夕方6時までと仕事時間がきちんとしていることもいいです」
と吉濱さんは満足そうだ。

昼食時間になった。
「今日は村のレストランに予約を入れておいたからそこで食べてくれ。その後はトマトの世話。3時には客が来るからそれまでに終わって置くように」
ヨーナーさんが細かい指示をすると吉濱さんはうなずく。ゆっくりと分かるようにドイツ語で話しかけるが、吉濱さんがすべてを分かっているとヨーナーさんは思っているわけではない。
「若い人たちと仕事をするのは喜びですね。スイス人の研修生たちが、わたしのところでたくさんのことを学んでいきます。孝明君もスイス人と同様に農業を学べて当然です。来年2月にある研修生の成果発表の時には、スイスに派遣された日本人全員がドイツ語で発表しますよ」

吉濱さんは、実家が農業を営んでいるわけではないが、帰国後は自分で農業をやっていきたいと思っている。
「グローバル化による農作物の自由化の波はチャンスだと思います。日本の食糧の自給率は低く、後継者不足です。もっと若い人が農業に参入すべきです」
と語る。

swissinfo、フリブール州ケルツェルスにて 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

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