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スイスワインに魅せられて

スイスワインの味わいの確かさは畑で育まれる。SWEA/R.COLOMBO www.photos.ws 提供 swissinfo.ch

大阪の大学で図書館司書として働く井上貴子さんには、もう1つの顔がある。スイスワイン研究家。

このコンテンツは 2004/09/22 17:06

20数年前、旅先のスイスで味わった地産ワインが忘れられず、帰国後、ワインリストに入れてもらおうと、日本のホテルを回った。だが、反応はつれない。「スイスワインなんて」。フランスのボルドーに比べると知名度が低いからだ。鼻であしらわれる日々が続いた。

弱気の虫が這い出てくると、決まって「あの時」のことが心に浮かんだ。スイス西部二ヨンのお城に住む生産者を訪ねた時のこと。「ワインは人間と同じ。私たちはワインを育てて、一人前になると、瓶に詰めて世の中に送り出すんです」と、そこの奥さんに言われた。スイス職人のモノづくりに対する魂に触れた経験が背中を押した。

コンクール・ジャンルイ

今月18日午前9時、スイス西部ローザンヌ。地元ヴォー州ワイン協会主催で地産ワインの生産年代を当てる『コンクール・ジャンルイ』が開かれた。ジャンルイは日本流に言えば、よくある名前の「太郎さん」。2日目の18日は白ワイン。同州のワイン造りのプロに混じって、井上さんも参加する。

各参加者の前には6つのグラスが横一列に並ぶ。淡い紫色の着物姿で臨んだ井上さんは、グラスをなかなか口につけない。色合いを比べ、香りへと進む。この日の参加者は150人ほど。グラスの触れ合う音だけが聞こえる。

30分ほど経った頃、参加者のイヴァン・シャイレさんがウェートレスに頼んでグラスを全部替えてもらう。「時間が経つとダメなんだ。白はフレッシュでないと」。

隣のクロード・ブルデさんはため息をつく。「簡単じゃないよ。色だってそんなに違わないし」。地元でワインを販売するブルデさんは自前の表を作り、味、匂い、色と細かく書き込む。「ほら、2番目のグラスを嗅いでごらん。チーズの匂いがするだろう」。真剣な眼差しで囁く。

ブルデさんは毎年『コンクール・ジャンルイ』に参加する。「このコンクールに勝つことにこだわる人もいるよ。でも僕の場合、人生のひそかな楽しみでね」と笑ってみせる。

スイスワインへの想い

国民1人当たりのワインの消費量は年間44リットルと、スイス人は世界で5本の指に入るほど大のワイン好きで知られる。自国で生産されるワインの大半は国内で消費され、輸出に回る数量が少ない。このため、海外での知名度は低い。

だが、ここ数年来、国内のワイン市場を取り巻く環境は変わりつつある。フランス産だけでなく、米国や南米などワインの新興国産がのしてきているためだ。

ヴォー州ワイン協会のロベール・キュイル会長は、「スイスワインは古臭いというイメージが強い。いいワインを造っているという自負はあるが、スイスワインをトレンディーなものにして若い人を引きつけるのは難しい」と話す。

一方、日本でヴォー州ワインの親善大使を務める井上さんは最近、追い風が吹き始めたと感じるようになった。「日本人観光客が本場スイスでスイスワインを知るようになったことが要因でしょうね」と話す。ホテルで催されるスイスフェアでのワインの講演依頼も舞い込んできた。

スイスワインに魅せられて20年余り。スイスワインを知ってほしいとの思いは変わらない。「ワインのことを知れば知るほど、人間が好きになってくるもの。生産者に会うと、その人間的な魅力に惹かれる。それが、私を虜にしたスイスワインの大きな魅力ですね」と話す。「あの時」の言葉は、今も心の支えになっている。


スイス国際放送 安達聡子(あだちさとこ)

補足情報

スイスの主なぶどう品種:

● シャスラー
白ワインの代表的なぶどう品種。南西部で多く栽培され、ヴォー州ではデザレー、ヴァレー州ではファンダンと名称が変わる。

● ピノ・ノワール
赤ワインの代表的なぶどう品種。

● ガメ
シャスラー、ピノ・ノワールに次いで生産量が多い赤ワイン用の品種。

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