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スイス経済に暗雲?

クレディ・スイスは150年来最悪の決算を出した。 Keystone

スイスの総合金融大手クレディ・スイス・グループ、化学製品会社の大手クラリアントと航空会社「スイス」らが解雇プランを発表し、2月25日だけでも合わせて3700人の人員削減予定が明らかになり、スイス経済の見通しに暗雲を投げかけた。

これを受けて、チューリッヒ株式市場は大幅な下げを記録し、ここ6年ぶりの最悪のレベルに達した。

相次ぐ、人員削減

 スイスの総合金融大手クレディ・スイス・グループ(スイス第2の銀行)は25日、2002年の年間最終損益が33億900万スイスフラン(約2900億円)と大幅な赤字となったため、グループ全体で従業員1250人を削減すると発表した。また、スイスの大手クラリアント化学製品会社も2002年は約6億4800万スイスフラン(約560億円)の赤字となり、1250人の人員削減を発表。さらに旧スイス航空とクロスエアーを引き継いだ航空大手「スイス」も同日、保有航空機の15%を売却することと、700人の人員削減を公表した。

失業率と成長率

 スイスの失業率は欧州諸国に比べて低く、2003年1月は3,8%に留まったが昨年9月の2,8%からの急上昇はエコノミストを不安にさせている。ヨセフ・ダイス経済相は「これまでスイスが強かった銀行、保険、化学や情報などの産業部門が弱ってきているのを懸念している」と述べた(スイス紙「ルタン」27日付け)。同紙はスイスの銀行部門の人員の過剰供給は25%から30%に達していると伝えており、今後、銀行や電話部門(IT部門)の解雇も予想されるという。スイスの成長率は経済省(Seco)によると2002年は0.1%に留まり、2003年は0,8%となる見通しだ。

伸び悩みの原因は?

 ダイス経済相は「国内市場の自由化と障壁の除去が徹底して行われなかったのが問題で改革が甘すぎた」と説明する。このため同経済相は90年代に改正されたカルテル、国内市場や公共事業割り当てなどに関する法律を見直さなければならないという。仏紙ルモンド(26日付け)はスイス経済モデルの硬直化が原因であると伝えている。カルテル現象は依然として少しも解決されておらず、保護主義は農業を始め、経済のあらゆる部門に忍び込んでおり、消費者は近隣諸国より高い値段を払わされていると分析する。同紙によると最近の保険会社スイカ(Swica)の調査によると一番売れている61種の医薬品はフランスに比べて28%も高く売られていることが判明したという。

 イラク情勢で世界の不安が高まる中、スイスフランは強くなり今後一層、輸出の鈍化と観光業の伸び悩みが危惧される。1月の貿易収支の赤字は4億4600万スイスフラン(約380億円)で20ヶ月以来で、赤字幅が最高額に達したのは、スイスフランが強くなる一方で輸出が減少しているためだ。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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