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スムーズに6人の現閣僚再選、またアラン・ベルセ氏が新閣僚に

新しい閣僚の面々。左端はミシュリン・カルミ・レ大統領兼外相。右端が新閣僚のアラン・ベルセ氏 Keystone

第1党の右派国民党が二つ目のポストを要求して、現閣僚の再選をはばむ戦いを繰り広げると予想された12月14日の閣僚選挙。しかし実際には同党の戦いは選挙前にすでに終わっていた。

その結果、多少の動きはあったものの6人の現閣僚がスムーズに再選され、退任するミシュリン・カルミ・レ現外相の後任に、同じ社会民主党のアラン・ベルセ氏が選出され幕を閉じた。

一致の原則

 選挙は一番長く閣僚を務めるキリスト教民主党(CVP/PDC)のドリス・ロイタルト環境相の再選を問う投票から始まった。

 今回の選挙では、連邦議会の上位3党の、国民党(SVP/UDC)、社会民主党(SP/PS)、急進民主党(FDR/PLR)がそれぞれ二つ、キリスト教民主党が一つのポストを占めるのが妥当とされた。なぜなら「内閣での主張力は、連邦議会内の党の議席数に比例して尊重されるべきだ」という「一致の原則」を上位政党が主張してきたからだ。

 この観点から、第4党のキリスト教民主党は、始めから一つのポスト維持で満足しており、また脱原発を政府として決めたときなどのロイタルト氏の手腕は高く評価され、216票という高い支持で再選された。

ヴィトマー・シュルンプフ財務相の再選

 問題は次のエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ財務相の再選だった。小党の市民民主党(BDP/PBD)に属するヴィトマー・シュルンプフ氏の続投は、この「一致の原則」からすれば難しく、そのポストを国民党は狙い2人の候補を対抗馬に立てた。

 しかし、結果としては過半数を少し上回る131票でヴィトマー・シュルンプフ氏が当選した。社会民主党とキリスト教民主党がヴィトマー・シュルンプフ氏を支持。2党ですでにおよそ100票に近い。そこに決定的な最後の数十票を加えたのが、今回の総選挙で議会の議席数を伸ばした自由緑の党(GLP/OVL)や緑の党(Grüne/Les Verts)などだった。

 自由緑の党は当初、国民党が2席獲得するのは「一致の原則」からして当然だと支持を表明していた。しかし「選挙直前に発覚した同党の有力候補者の不正事件に衝撃を受け、方針を変えた。一晩で次の候補者を出すのも納得できない。また、あらゆる手段で現閣僚を追い出すようなやり方はスイスの政治の伝統に合致しない」と自由緑の党のティアナ・アンジェリナ・モザー議員は批判した。

 いわば、国民党の敗北はこうした小党の方向転換などで選挙前にすでに決まっていたといえる。

 なお、ヴィトマー・シュルンプフ氏は最後に2012年の大統領にも選出された。これにも国民党は、同党のウエリ・マウラー国防相を対抗馬とした。 

ソマルガ司法相選出の一幕

 第3番目の国民党のウエリ・マウラー国防相は、国民党の唯一の現職の大臣として、また第4番目の急進民主党のディディエ・ブルカルテール内相も、第3党の急進民主党が2席を獲得するのは当然だという観点から、問題なく再選された。

 第5番目の社会民主党のシモネッタ・ソマルガ司法相の投票では、突然国民党が2人の候補者ハンス・ユルグ・ヴァルター議員とジャン・フランソワ・リム議員をリム氏一人にしぼると発表。さらに「経済的移民の膨大な流入に対処できるのは国民党だ」という理由もつけ対抗馬とした。これに対し社会民主党は、「国民党はいつも社会民主党の候補を阻止する」と抗議する一幕があったが、結果としてソマルガ氏は179票の高い票数で再選された。

 最後のシュナイダー・アマン経済相は、経済発展を主な政策とする右派中道の急進民主党員。同党は今回の選挙で国民党を支持していたにもかかわらず、国民党がやはりリム氏を対抗馬としたため、抗議の演説を行った。しかし、アマン氏も無事再選された。

新閣僚にアラン・ベルセ氏

 以上6人の現職の閣僚が再選された後、最後に社会民主党のカルミ・レ外相の後に着任する、新閣僚の投票が行われた。社会民主党はピエール・イヴ・マイヤール氏とアラン・ベルセ氏の2人を党推薦の候補者とした。

 ここでも国民党のリム氏が候補に立ったが、第1回目の投票結果はベルセ氏114票、マイヤール氏59票、リム氏59票。ベルセ氏の114票が過半数に満たないため、第2回目が行われ、結局ベルセ氏が127票を獲得して、新閣僚に選ばれた。

 ベルセ氏はフリブール州出身で、全州議会(上院)議員としてすでに8年の経験を持つ。経済学の博士号を持ち、社会民主党の経済政策を決定する主要人物とされる。また、5カ国語を話す語学力も高く評価され、今後経済相にも、外相にも適した人物といわれる。

 今日選出された閣僚7人がどの省を担当するかは、今週の金曜日か来週早々に決定される。

ドリス・ロイタルト現環境相、現キリスト教民主党(CVP/PDC)、再選

エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ現財務相、市民民主党(BDP)、再選

ウエリ・マウラー現国防相、国民党(SVP/UDC)、再選

ディディエ・ブルカルテール内相、急進民主党(FDP/PLR)、再選

シモネッタ・ソマルガ現司法相、社会民主党(SP/PS)、再選

ヨハン・シュナイダー・アマン現経済相、急進民主党、再選

アラン・ベルセ氏、社会民主党

フリブール州のブルフォー村(Belfaux)出身、39歳。

ヌーシャテル州の大学で経済学の博士号を取得。

31歳で社会民主党(SP/PS)からフリブール州の全州議会(上院)議員に選ばれる。

2009年から2010年にかけ、全州議会の議長を務めた。

債務危機で困難を極める欧州連合(EU)とスイスのバイラテラル関係やスイスフラン高に対するスイスの対策に関し、社会民主党の経済方針を導く中心的人物。

語学にも優れ、仏・独語のバイリンガルの上、英語、ポルトガル語など5カ国語を操る。

来週決定されるポストでも経済大臣にも外務大臣にも向いているといわれている。

趣味はジョギング。

3人の子どもの父。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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