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ビンラディン資金捜査包囲網

米同時多発テロ前後、テロの背後にいるとされるオサマ・ビンラディン氏が先物取り引きなどで巨額の利益を上げていた疑いが濃厚で、各国の金融当局は捜査を進めている。

世界12ヶ国の金融当局は、9月11日にいたるまでの取引パターンを分析し、取引がテロを事前に知っていて行われたものかどうかの証拠を探っている。スイス連邦銀行委員会のウルス・ズロイフ氏は「一般的な投機以外のものが行われたという証拠は全く無い。が、事態は調査着手に十分なほど深刻だ。」という。

伝えられるところによると、オサマ・ビンラディン氏と関連のある個人またはグループが、テロ前後、航空と保険株の空売りなどで巨額の利益を上げた。空売りとは、投資家が有価証券を借り、高値で売ってから急落したところで買い戻し、借りた有価証券の払い戻しを行い、差額で儲けるというもの。シカゴ・オプション取引所は11日以前のオプション取引を調査しており、アムステルダムではテロ直前、尋常でないKLMオランダ航空の先物オプション取引があったことを証言している。
世界最大のオプション取引所であるシガコ・オプション取引所のスポークスマンは、「我々は報道される以前から調査に着手している」としたが、調査の対象になっている具体的な銘柄は上げなかった。

捜査網はアジアにも広がっている。香港金融当局は各銀行に、マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いのある口座、オサマ・ビンラディン氏に関連があると見られる口座がないか調べるよう要請した。また東京でも、ビンラディン氏に関連のある取引が行われた可能性について調査中だ。

チューリッヒのスイス証券取引所のエトワール・カンドルフィ役員は、これまでの調査でテロ攻撃の4日前、再保険会社スイス・レ株が16、000株と大量に取り引きされたことが判明したと発表した。が、これは、スイス・レが今年上半期の業績不振を発表したせいかもしれないという。スイス・レは、米同時多発テロから発生する莫大な損害保険支払い請求に直面する。

スイスの刑法の権威マーク・ピート教授は、オサマ・ビンラディン氏は通常の手段で証券取引所など世界の金融機関に資金を投資していると、かねてから発言している。ピート教授は、ビンラディン氏は仲介者や隠れみのとなる会社のネットワークを駆使して、身元が割れないようにしているという。が、スイスは1984年に犯罪組織からの入金を凍結するという法を導入したため、ヤミ資金の金融センターとしては魅力的なところではないと語った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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