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フーリガン被害は誰が支払う?

2006年5月、ザンクトヤコブスタジアムのサッカー場に乱入。フーリガンの暴動に警察も出動する事態に Keystone

サッカースタジアムの中で、そして外で、フーリガンの暴動による被害額は膨大なものになる。施設の修理費などは、サッカークラブが負担すべきだと地方自治体が主張し始めている。一方スポーツ関係者はこれに対して、感情を高ぶらせて反論している。

このコンテンツは 2008/11/23 15:25

スイスでは、再びフーリガンによる被害が話題になっている。2006年5月、ゲーム終了直前で負けたバーゼルチームをサポートするフーリガン暴動の裁判が、今年11月上旬に行なわれ26人が有罪判決を受けたことがきっかけだ。

被害は膨大

2年前に起きた、バーゼルが負けたことに怒りを爆発させるフーリガンとこれを制止しようとする警察の乱闘劇は、世間を震撼させた。これをきっかけとして、効果的なフーリガン対策を求める声も高くなっていった。しかし、現在もフーリガン問題は解決されていない。毎週末、サッカーやアイスホッケーの試合があると、暴力事件がスイス各地で起こっている。その被害額の大きさもあり、話題には事欠かない。

今年夏、ヌーシャテル州は、地元のサッカークラブ「FCクサマックス ( FC Neuchâtel Xamax ) 」にフーリガンが原因となる経費の6割から8割を負担するよう申し渡した。金額にすると年間30万フランから40万フラン ( 約2400万円から3200万円 ) になる。この申し渡しに対しクラブのオーナー、シルビオ・ベルナスコーニ氏は「受け入れがたい」と反発。税金は十分払っているというのがその理由だ。建設会社社長でもあるベルナスコーニ氏とクサマックスの委員全員は、ヌーシャテル州が申し渡しを撤回しない限り、辞任すると脅している。実際に辞任という事態になれば、伝統あるサッカークラブのクサマックスは財政的な終焉 ( しゅうえん ) を迎えることになる。

フリブール州では、アイスホッケークラブ「フライブルク・ゴテロン ( Freiburg-Gottéron )」 に対し、対ベルン戦など激戦になるような試合の際には警備費用を負担させる予定だ。2007/08年のシーズンに行われた対ベルン戦のために警察が出動して掛かった経費は、43万フラン ( 約3440万円 ) にも膨れ上った。

責任はどこにある?

「更なる負担を強いられることなど想像外だ。そんなことになったら、Aリーグの『ゴテロン』が無くなってしまう」
とクラブのダニエル・ボダン会長は言う。一方フリブール州のエルヴィン・ユツェット州議員は、公共安全の責任者だが
「民主的な議論をしたいと思う。スポーツクラブが原因となる費用について、市民の税金を使うのかということは、市民が決定することになる。確かにゴテロンは、州に多くの栄誉をもたらしたが、多くの市民にとっては、それはどうでもいいことだ」
と反論している。

連邦スポーツ協会は、こうしたスポーツクラブの意見を支持する。
「スタジアム外の安全については、自治体の責任だ。すべての試合は同等に扱われなければならない」
と「スイスナショナルリーグ ( Swiss Football League )」 のエドモント・イソツ氏は言う。また、アイスホッケーリーグも同じような意見だ。

ベルンは自治体負担

ベルン州はAリーグのクラブが、サッカーの「ベルン・ヤングボーイズ ( Berner Young Boys ) 」、アイスホッケーの「SCベルン」、「ラングナウ・タイガーズ ( Langnau-Tigers ) 」、「EHCビール」と4つある。これまで州警察は、該当する自治体にその経費を請求してきた。
「莫大な金額で、われわれでは支払えない。われわれの場合、スイスでは例外的に自治体が援助してくれるので幸運だ」
とEHCビールの会長ダニエル・ヴィラー氏は言う。

ベルン市では一方、ヤングボーイズとSCベルンはそれぞれ市に警察の警備費として6万フラン ( 約480万円 ) 支払っている。ほかのベルンにあるスポーツクラブもこれに随従するかが注目されるところだ。

スイスナショナルリーグのイソツ氏は「自治体によって警備費の扱いがそれぞれ違うことは、スポーツに対する取り組み方の違い」でもあり
「こうした連邦的な現状は不健康だ。各州間での統一が必要だ」
とフリブール議会で強調した。

金銭的負担は、スポーツクラブにとっては切実な問題だ。例えば、バーゼルなどフーリガンが暴動をよく起こす地方では、入場券1枚2.20フラン ( 約177円 ) の値上げが強いられる。これで、暴動のリスクが高いゲームの警備費として10万フラン( 約785万円 ) を捻出することになる。ルツェルンでも同じような方針だが、多くのスポーツクラブは、入場料値上げにより、入場者数が減るのではないかと懸念する。ルツェルンの場合は昨年、新しいスタジアムが作られたため、入場料が値上げされたばかりだ。

双方の責任?

「フーリガン対策には高い経費が掛かるが、それはスポーツ界の枠を超えたものだ。よって、自治体ができる限り効果的に対処する責任を持つ事項である」とスポーツ界は主張する。
「本当に政治的な意思があれば、この問題はさっさと解決していたはず」
とイソツ氏は言う。スポーツクラブが、スタジアム付近での暴動について、これまで真剣に取り組まなかったというわけでもないだろう。
「条項を作り、クラブにペナルティーを課すことはできる。しかし社会問題を解決する責任は、自治体にある」
とイソツ氏。

これに対してユツェット氏は
「イソツ氏は間違っていない。ファンのごく一部が暴動化する。暴力とスポーツとは関係がないことだ。しかし、スポーツクラブの責任がまったくないとは言えないだろう」
と反論する。

swissinfo、サムエル・ヤベルク 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

フーリガン対策

2006年、連邦議会はスイスで行なわれる「EURO2008」、「2009年アイスホッケー世界選手権」を目前にし、スポーツ試合に絡む暴動を取り締まる法律を作った。この法律によりフーリガンのデーターバンクが作られ、試合中にフーリガンを警察に出頭させたり試合観戦に行くことを阻止したり、試合観戦のために外国へ旅行することを禁止できるようになった。
連邦議会は、各州の警察の権力について、各州の協力が必要だと判断しており、多くの州の間での協力体制ができあがっている。

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ヨーロッパ諸国の比較

ヨーロッパの多くの国が対フーリガン法で対策を講じている。イギリスは、1980年代にフーリガン問題が浮上し、他国に先駆けてこれに取り組んだ。スイスの隣国では一般的に、警備費は税金で賄われている。フランスとドイツはスタジアムの外での警備費は国が負担し、スタジアム内の安全管理については、スポーツクラブが責任を持つことになっている。特に、極右テログループ、ファン、警察が入り乱れるような暴動で、フーリガン、警察の両方から死者を出すような事件が起こったこともあるイタリアでも、責任分担の方向にある。

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