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マグロの鮮度をごまかす添加物

マグロは赤ければ新鮮とごまかされるスイス人は多いという swissinfo.ch

1月24日、バーゼル州化学検査局が発表したところによると、チューリヒ航空で、フィリピンから輸入したマグロの中から蛍光色剤のロダミンBが検出された。

ロダミンBを使うことで、マグロの赤味を保ち、鮮度をごまかそうとしたもの。スイスにおけるすしブームに便乗した、きわめて悪質な事件である。

 肉やマグロは鮮度が落ちると茶色っぽくなる。人体に対して有害、無害を問わず、精肉や生魚に着色料を使うことで新鮮さをごまかすことは、スイスをはじめ欧州諸国では禁止されている。今回発見されたロダミンBは、人体への影響はいまだ不明ながら、化粧品への使用は禁止されている。

きわめて悪質

 これまでも酸素ガスを注入することなどで、赤味を保とうとする手段が発覚したことが何度かあった。「しかし、今回のは明らかに悪質だ」とウルス・ブックストルフ検査官は、今回の事件について厳しく批判した。

 バーゼル州化学検査局はスイスへ輸入される精肉、生魚の検査を一手に請け負っている。しかし、スイスに輸入されるすべての生鮮食品をチェックすることは不可能なため、抜き打ち検査で対応している。よって、ロダミンBが添加されたマグロが、すでに市場に出回った可能性はある。ブックストルフ検査官は、今後抜き打ち検査の回数を多くすることで対応するしかないと明かす。

すしブームに与える影響

 チューリヒ市内ですし専門店を経営するブンツェル・佐取千恵子さんは「誰でもすしを扱えるというわけではない」と語る。魚の新鮮さを判断するのも、食の歴史があってこそということだ。「高質で管理の厳しい日本からマグロを輸入することが極めて難しいのに、品質が不明なフィリピン産の魚がたやすく入ってくるのは疑問」とスイスの政策に対する不満も述べた。

 また、同じくチューリヒ市内で高級和食レストランを営むルーフ・福岡沙羅さんは、和食好きのスイス人に対して常に「(鮮度などを)判断する目を養って欲しい」といい続けてきたという。「すしブームにより、魚が不足している中、足りなければなんでも良い。安ければよい、といった風潮もある。これを機会に、魚を扱う業者や消費者も健康に深く関わる食材だからこそ、勉強してほしい」と語った。
 
 すしブームで、すでにドイツ語圏では20軒以上のすし専門店があるという。こうした事件を通し「本物」を分かるスイス人が増えることを望みたい。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ) 

スイスにおける魚の消費量は5万7000�d。
このうち缶詰が31�d。
一人あたりの消費量7.7�`�c
輸入5万6000�d
輸入依存率98%。(2003年統計局)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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