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人権を奪われ貧困になる

登校前に病気の父の代わりにミシンを踏むティヤ。「極度の貧困」のもう1つの映画「ティヤの夢」は、教育への権利を奪われさらに貧困になっていくエチオピアの少女の姿を描く。フィクションだがこうした状況で生きる子どもは後を絶たない

「貧困であること自体は人権侵害ではない。文化的、経済的、社会的なさまざまな人権が侵害された結果、貧困に陥るのだ」とアムネスティ・インターナショナルの国際法・政策局のウィドネイ・ブラウン氏は言う。

「極度の貧困」に関する映画上映とそれに続く討論が3月9日、ジュネーブの「人権に関する国際フォーラム・映画フェスティバル( FIFDH ) 」で行なわれた。今年で7年目を迎えるFIFDHでは、貧困問題以外にも「ガザとその後」、「アフガニスタンの女性」、「パスポートのない難民」などの映画上映でさまざまな人権問題が議論された。

住居権を奪われ貧民に

 国連人権理事会 ( UNHRC ) の開期中に行われるこのフェスティバルでは、人権問題の映画を観たあと、専門家のパネルディスカッションが行なわれる。観客も討論に参加するが、国連関係者や外交官などの参加も多く、さらに一般市民も加わるので、討論は活気を帯び、問題解決に大きなインスピレーションを与えると評判だ。

 映画「キベラ・マイケルの話」は、ケニアのキベラ ( Kibera ) というスラムの話だ。カメラは斜面に沿って密集するバラック、ごみだらけの広場、泥で埋まる小川、配給される飲み水などを映し出す。青年マイケルはこの地域を歩きながら、ここの日常的な貧困と暴力を語る。

 討論は、4人の内2人のパネリストが国連の食糧権の特使や貧困撲滅を実践するNGOの局長であったりするため、「いかにアフリカなど貧困にあえぐ地域の援助を改善するか」ないしは「本当の援助とは何か」といった議論に傾きやすい。

 しかしパネリストの1人、アムネスティ・インターナショナルのブラウン氏は、キベラに住む女性を例に出し、
「ケニアでは、女性は家を相続する権利がないため、夫がエイズなどで亡くなった後、彼女の行き場所はキベラのようなスラム街しか残っていなかった」
 と語り、自分の家に住む権利を剥奪 ( はくだつ ) された結果として、貧民になったと説明した。さらに例えば14、15歳での強制的結婚は、少女の教育への権利を侵害し、その結果教育がないため貧困に陥る。つまり、文化的、経済的、政治的なさまざまな人権侵害の結果が貧困を引き起こすのだという。 

 従って貧困の解決には、貧困を起こす基になるさまざまな人権侵害が何なのかを見つけることが重要だ。それは国や環境によって異なるが、その追求が大切なのであり、貧困そのものを人権侵害と理解し、お金や物資の供給を単純に行なうことはあまり意味がないとブラウン氏は続ける。

日本のホームレス

 「グローバル化は単なる国家間の貧富の差を広げただけでなく、一国内の貧富の差を広げた。ホームレスやワーキングプアはアメリカや日本など、豊かな国の内部に増えている。そして金融危機はそれに拍車をかける」
 と、貧困問題がアフリカなどの途上国だけの問題ではないことをブラウン氏は討論後のスイスインフォの質問に対して答えた。

 対策は、何がホームレスを引き起こす原因なのか、つまりどのような人権侵害によってホームレスになるのかを明確にすることから始まるという。職業教育なども含めた教育が不足しているのか、労働市場へのアクセスができないのか、医療などへのアクセスも不足しているのかなど、さまざまな人権侵害の原因を探る必要がある。

 そしてブラウン氏は、アメリカのホームレスは例えば自分たちの保護、対策を決める政策決定プロセスに参加する投票権さえ保持していないことが大きい問題だと語り、こうした投票権なども含む情報全般に対するアクセスの権利を与えることは、非常に大切だと強調した。

 「日本でも恐らくホームレスのあり方の構造は同じであろう」と言いながら、政府側のホームレスを引き起こす原因 究明の努力、政策の透明性、ホームレスの人々の情報入手や住居権などを保証する責任性を説き、またそれを要求できる市民権の大切さも付け加えた。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

人権に関する国際フォーラム・映画フェスティバル ( FIFDH )

FIFDHは3月6~15日まで、ジュネーブの「 メゾン・デ・ザアー・デュ・グリュトリ ( Maison des Arts du Grutli ) 」で開催されている。毎年3月の、国連人権理事会( UNHRC ) の開期中に行われる。昨年の入場者はおよそ2万人だった。

世界中のおよそ30近い人権映画フェスティバルとも協力し合って企画が立てられる。しかし映画の上映後に討論会が行われるのはジュネーブだけだという。

「こうした映画フェスティバルは重要だ。しばしば、どんな人権の本を読むよりずっとおもしろく、分かりやすく人権が語られている」と「人権と人道国際アカデミー ( ADH ) 」のアンドリュ・クラバム所長も高く評価している。

今回は「極度の貧困」、「ガザとその後」、「アフガニスタンの女性」、「環境問題と人権」、「パスポートのない難民」、「言論の自由」、「グルジア問題」、「女性の権利」などが上映された。

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