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原発、2050年までの廃止に向けた同盟誕生

1978年に建設されたゲスゲン ( Gösgen ) 原発。原発推進派の当時のエネルギー相ヴィリー・シュピューラー氏は、予定されていた火力発電所計画を白紙に戻し建設を進めた Keystone

国民議会 ( 下院 ) 議員オット―・イナイヘン氏は4月16日、原発を2050年までに廃止する計画推進のため、連邦議会内で多政党からなる同盟を立ち上げたと発表した。

この同盟は13課題を計画に含めるが、中でも再生可能エネルギーの推進が最重要課題となっている。

基金の創設

 急進民主党 ( FDP/PRD ) のイナイヘン氏は、建物のエネルギー効率向上を目指す、同様の同盟を2008年にも打ち出している。

 

 同盟には、緑の党 ( Grüne / Verts ) 、自由緑の党 ( GrüneLiberal / Vert ‘Libéraux ) 、社会民主党( SP/ PS ) 、キリスト教民主党 ( CVP/PDC )、急進民主党 ( FDP/ PRD )  国民党 ( SVP/ UDC )のエネルギー関係の専門議員が参加する。 

 目的は、できるだけ多くの議員の賛同を集めるとともに、2050年までの原発廃止計画のために基金を創設することだ。およそ10億フラン ( 約927億円  ) を目標とする基金は政府と電気会社で半額ずつ負担される計画だ。

 また基金は、エネルギー効率を高める多様な対策と再生可能エネルギーの推進に使用される。

 イナイヘン氏は「基金に対する電力会社側からの最初の反応はポジティブだった」と述べている。しかし、政府側の負担に関してはまだ多くの課題が残る。イナイヘン氏が所属する中道右派の急進民主党にしても、従来原発推進側であったため、大きな政策転換を迫られている。いずれにせよ、原発の将来は6月の連邦議会の最重要課題になる。

クリーンテクノロジーで1万人の雇用

 「今後スイスに新しい原発が建つことはあり得ない。これは確実だ」と話すのは、社会民主党の連邦議会議員ジャック・アンドレ・メール氏と緑の党のクリスティアン・ファン・シンガ―氏だ。

 

 同盟の計画案作成などに加わる両議員は、「この計画が実行されれば、少なくとも1万人の雇用がクリーンテクノロジー分野で生まれる」と話す。

 スイスではチェルノブイリ事故後、国民投票により現存の5カ所の原発は維持するが新しい原発は建設しないという一時停止 ( モラトリアム ) を承認した。しかし、今年に入りモラトリアム期限が切れ新しい原発建設計画が始動。その直後に福島の事故が起きた。現在は計画を一時停止している。

 一方、経済産業界は現在まで原発に賛成してきた。しかし、経済界のスイス連合「経済連合エコノミースイス ( Economiesuisse ) 」は、フクシマ以降、スイスの電気消費に応えるため、3カ所でのガス発電所建設を支持しているという。

ベツナウ ( Beznau ) 第一原発、運転開始: 1969年 

べツナウ ( Beznau ) 第二原発、運転開始: 1972年  

ミューレベルク ( Mühleberg ) 原発、運転開始: 1972年

ゲスゲン ( Gösgen ) 原発、運転開始: 1978年

 ライプシュタット ( Leibstadt ) 原発、運転開始: 1984年

電源別発電電力量:

水力: 55,8%

原子力: 39,3%

その他: 2,9%

新再生可能エネルギー ( 廃棄物、バイオマスおよびバイオガス、太陽光、風力 ) : 2%

出典:連邦エネルギー省エネルギー局 (BFE/OFEN )

外電

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